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SECの鶴保征城所長
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SECでは産官学の連携や、ソフトベンダーとユーザーの連携を強化する
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独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は29日、「ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)」を10月1日に設立すると発表した。産学官の連携を強化し、国内ソフトウェア産業の競争力を強化する。スタッフ構成は、常勤の内部スタッフが30名、非常勤の外部スタッフが120名。2004年度予算は14億8,000万円が割り当てられている。
SECは、経済産業省の支援を受け、「エンタープライズ系ソフトウェアの開発力強化」「組み込みソフトウェアの開発力強化」「先進ソフトウェア開発プロジェクト」を柱に掲げて産学官共同でノウハウの共有化などを行なう。トヨタ自動車やリクルートなどのユーザー企業や、NECや富士通、東芝、日立製作所、ソニーなどのベンダー企業が賛同。東京大学や奈良先端技術大学、電気通信大学などの教育機関や、米カーネギーメロン大学のソフトウェア・エンジニアリング研究所、独フラウンホーファ・実験的ソフトウェア・エンジニアリング研究所などとも連携している。
エンタープライズ系ソフトウェアの開発力強化では、ソフト発注側と開発側の双方に共通な、ソフト開発における統一的な“ものさし”となるガイドラインを策定する。そのために、複数の開発事例などをデータベース化。それらをSECで分析し、定量的な開発手法の構築やガイドラインの策定に取り組むとしている。現在、賛同した企業のうち11社から定量的なデータとして約1,000事例が寄せられているという。なおSECでは、事例を提供する企業とは個別に守秘義務契約などを締結する。
組み込みソフトウェアの開発力強化では、開発効率と品質の向上を目指す「組み込みエンジニアリング領域」と、人材の育成を支援する「組み込みスキル標準領域」の2分野に注力。携帯電話やカーナビ、情報家電などで需要が高まる組み込みソフトウェアの大規模化や複雑化、開発期間の短縮化という課題を解決するための研究を行なうという。
これら開発力強化で蓄積したノウハウを投入するのが「先進ソフトウェア開発プロジェクト」。SECの鶴保征城所長によれば、「具体的には未定だが、交通システムの共通ソフトウェアプラットフォームを開発する」という。
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ソフトウェアの大規模化や複雑化、開発期間の短縮化は今後も進む
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各プロジェクトの予定。「初年度から目に見える成果を残したい」(藤原IPA理事長)とのこと
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経済産業省商務情報政策局情報処理振興課の小林利典課長
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IPAの藤原武平太理事長
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経済産業省商務情報政策局情報処理振興課の小林利典課長は、ソフトウェア産業を「PCやメインフレームだけに利用されていた80年代、90年代とは異なり、今や金融業や自動車産業、家電産業など幅広く利用され社会基盤になっている」と位置付ける。その一方で、「銀行ATMや航空管制塔のシステムダウンなどの不具合も少なくない。PCがフリーズしたのとは影響力が違う」と社会基盤となるソフトウェアの脆弱性を危惧。より高度なソフトウェアを開発するために、「定量的なデータを収集し、工学的な手法によるソフト開発手法の確立が急務だ」との見解を示した。
「日本の2000年におけるソフトウェアの輸入は9,000億。輸出は90億に止まった」と指摘したのはIPAの藤原武平太理事長。「大変な入超だ。残念ながら国際マーケットでは国内ソフトウェア産業の競争力はない」という。「日本は製造業が強いと言われているが、製造業の基盤になるものがソフトウェア。自動車のエンジンを制御したり、液晶テレビの制御にも利用されている。特にハードウェアと連携する組み込みソフトウェアを強化しなければならない」と分析。「(SECでは)初年度から目に見える成果を残したい」と決意を述べた。
鶴保所長は、SECについて「単に集まって事務局の案を議論するわけではなく、参加するスタッフが自らの手でプランを作成する組織。政府の押し付けではなく、ソフトウェアに関わる企業の要望に応じたもので、マーケティングには自信がある」とこれまでの政府主導型組織とは異なる点を強調した。
関連情報
■URL
ソフトウェア・エンジニアリング・センター
http://www.ipa.go.jp/software/sec/
情報処理推進機構
http://www.ipa.go.jp/
経済産業省
http://www.meti.go.jp/
( 鷹木 創 )
2004/09/29 17:38
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