イー・アクセスは14日、同社のモバイル事業に関する説明会を開催した。説明会では現在実施中のTD-SCDMA(MC)実証実験の進捗状況が公開されたほか、新たな割り当てが予定されている1.7GHz帯にもにFDD方式での新規参入を検討していることが明らかにされた。
● 1.7GHzはW-CDMAまたはCDMA2000を採用予定
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イー・アクセスの千本倖生代表取締役社長兼CEO
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1.7GHz帯へは正式に参入を表明
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FDD方式を採用した1.7GHz帯への新規参入は、9月30日に総務省が発表した「携帯電話用周波数の確保に向けた取組」を受けたもの。この取り組みでは1.7GHz帯において、2005年度から全国で15MHz×2程度の周波数幅を追加分配する方針としており、イー・アクセスではこの発表当日に参入の意志を総務省に対して表明。さらに10月14日には再確認の意味も含めて、書面による正式な意思表明も行なったという。
1.7GHz帯でのFDD方式は、具体的にはIMT-2000で標準化されているW-CDMAまたはCDMA2000のどちらかを採用する見込み。音声サービスも「IMT-2000の条件」として提供はするが、主たるサービスはモバイルデータ通信になるという。
イー・アクセスの千本倖生代表取締役社長兼CEOは1.7GHz帯の参入について「総務省方針は新規事業者に対して開放すると明記されているが、この事業者選定に関しては競争の促進を重視し、透明なプロセスで公明に行なわれるべき」とコメント。「NTTグループなど既存事業者の関係会社は明らかにルール外であり、断固反対していく」との姿勢を示した。
また、免許取得の条件に関しても「通信事業は一度開始してしまえば簡単にやめられるものではなく、通信事業者として健全な財務基盤が必要」と指摘。「イー・アクセスは唯一ブロードバンドで利益を出して成長している企業であり、こういった企業こそが新規事業者として資格を有しているのではないか」と述べた。また、「社会的な責務を考えれば、情報のリークがあって信頼性に欠けるといった事業者よりは、そういった事実のない事業者のほうが適しているのではないか」という考えも示された。
すでに実証実験を行なっているTDD方式についても引き続き積極的に取り組んでいく方針。千本氏は「TDD方式のTD-SCDMA(MC)は他システムとの比較や進捗状況の報告など、もっとも詳細にデータを公開している」とした上で、「TDDに加えて、思いもかけず用意されたFDDという新規参入のチャンスを利用して、モバイルブロードバンドをぜひとも日本の社会で実現したい」とした。
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1.7GHz帯は新規事業者に限るべき
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免許取得は健全な財務基盤のほかに信頼性やセキュリティ体制が必要
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● ソフトバンクの800MHz割り当て要求は「正しいやり方とは思わない」
なお、先日ソフトバンクBBが総務省に対して800MHz帯割り当て方針案の差し止めなどを求める仮処分申請を行なった件については「通信業界でも巨大なマーケットである携帯電話市場を、既存3社がある意味で占有している点については、孫さんの新規参入の考えは基本的にサポートできる」と考えているという。
ただし、ソフトバンクBBの行政訴訟という方法については「以前には当社CTOも訴えられたが、結局はうやむやになって取り下げられた経緯がある。訴訟は1つのやり方ではあると思うが、企業としての活動について個人を訴えるようなことを行ない、今回のように割り当てられていない周波数を訴訟でこじ開けるようなやり方は、私個人としては正しいやり方とは思わない」と否定。「総務省の肩を持つわけではないが」と前置いた上で、「訴訟ですべてを解決するというのは、(同社CTOが提訴された)去年のやり方を見ても、問題解決の方法としてはまったく非合理だ」と語った。
ソフトバンクが日本テレコム株式を売却した件は「JRの日本テレコムに投資をして頂いたのが、回り回って競争相手のソフトバンクになったことは歓迎すべきことではなかった」とコメント。「日本テレコムがイー・アクセスの株式を手放したことは大歓迎すべきことで、これで誤解を受けることなくフェアに戦える」との考えを示した。株式の売却先については「正直いってわからないが、事業者などではなく個人投資家などに渡ったと聞いている」と語った。
● TD-SCDMA(MC)向けの音声端末も開発中
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新規事業企画本部長兼技術部長の諸橋知雄氏
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イー・アクセス 新規事業企画本部長兼技術部長の諸橋知雄氏は、TD-SCDMA(MC)の実証実験に関する進捗状況を説明した。諸橋氏は「一部でTDD方式に誤解があるようだが」と前置いた上で、「TDD方式は上下非対称なのでデータに適してはいるが決して特化している訳ではない。現にPHSはTDD方式で音声サービスを提供しており、高音質で知られている」とコメント。TD-SCDMA(MC)は音声向けの優先制御や上りの帯域確保が可能であり、すでにTD-SCDMA(MC)向けの音声端末もプロトタイプの開発が完了しているという。
諸橋氏は続けて、9月9日に開催された携帯電話等周波数有効利用方策委員会で提出されたIMT-2000技術調査作業班の最終報告を抜粋して紹介した。諸橋氏は「注目すべきは利用効率」と指摘、TDD-CDMAとTD-SCDMAが上下とも0.5Mbps程度であるのに対して、TD-SCDMA(MC)は上下とも2Mbps程度を実現している点を踏まえて「既存の第3世代携帯電話の方式と比べて効率が高い」と自信を見せた。TD-SCDMA(MC)は19カ国39事業者で商用サービスが開始されているなど、国際的な導入の動きも強いという。
今後は事業免許付与に向けたIMT-2000 TDD方式技術的条件作業班が開始される予定。諸橋氏は「当初は9月中旬に開始予定だったが、10月後半にずれ込んでいる」と前置いた上で、「2005年の2月から3月には作業班が終了すると聞いている。技術基準ができれば事業免許の付与も近いのではないかと予測している」と語った。
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プロトタイプのTD-SCDMA(MC)音声端末
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TD-SCDMA(MC)は既存の第3世代携帯電話方式よりも周波数効率が高いという
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● Mobile IPを採用したハンドオーバー技術
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現在の実証実験は3セル9セクタ構成
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TD-SCDMA(MC)の実証実験は、従来まで虎ノ門に基地局を設置、1セル1セクタで行なっていたが、現在はセル数を四谷と渋谷の3つに拡大、さらにそれぞれのセルを3セクタに分割、合計3セル9セクタで運用している。諸橋氏は「3セル9セクタ化したことで、1セル1セクタではできなかった試験が可能になった」とコメント、その例としてハンドオーバーの実証実験結果を公開した。
ハンドオーバーは、同じ基地局内で他のセクタへ移動するセクタ間ハンドオーバーと、基地局を移動するセル間ハンドオーバーの2種類に分かれるが、今回の実証実験では両方のハンドオーバーを実証。実証実験のエリアを動画を再生しながら車で移動、ハンドオーバーを行なった際も動画を途切れることなく再生することができたという。
ハンドオーバーには、移動しても同一のIPアドレスで通信が可能なMobile IP技術を採用。移動局のIPアドレスを管理するHA(Home Agent)と、端末の実際の居場所を示すFA(Foreign Agent)をマッチングさせることで、ノードを移動してもアプリケーションで確立するセッションを保持することができるとしている。
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ハンドオーバーの概念
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Mobile IPでハンドオーバーを実現
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ハンドオーバーの実証実験概要
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セルやセクタを示すIDが変わっても動画は途切れることなく再生
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● 今後はスループットの向上も検討
別のTD-SCDMA(MC)基地局からの干渉に関する実証実験結果も公開された。虎ノ門局から1.4km、四谷局から1.7kmの地点で虎ノ門局に接続してスループットを計測したところ、四谷局を稼働せずに干渉を受けない環境で測定した4.40Mbpsと比較して、干渉時でも4.06Mbpsを実測、8%程度の影響しか受けなかったという。
なお、スループットはFTPで計測されているため、インターネットを利用した際の値ではないほか、セクタスループットは基地局全体の値のため、1ユーザーごとの数値ではない。ただし、現在は上りと下りを1対1に設定して実験を行なっているため、上りのスループットを抑えることで下りを高速化することも可能だという。
干渉に関する実証実験は、CDMA方式が干渉の信号が大きいとスループットが下がると一般に知られていることから、商用のサービス展開を目的として、干渉下でもどのくらいのパフォーマンスが実現できるかを示すためのものだという。TD-SCDMA(MC)では干渉の影響が少ないため、1つの地点に対して複数の基地局を設置することも可能であり、ネットワークの構築次第では、複数の基地局を合わせてスループットを高めることも可能だという。諸橋氏は「複数基地局を束ねる方法は今回の実証実験の対象にしていない」とした上で、サービス展開時にはこのような方式や周波数の拡張などによってスループットを更に高める考えがあることを明らかにした。
サービスの詳細は現在のところ未定だが、千本氏は「IMT-2000の条件のため音声サービスも提供するが、会社の規模や役割としてもKDDIやNTTドコモと真正面から戦う力はない。イー・アクセスとしてはモバイルのデータ通信でもっとも素晴らしいサービスを提供したい」とコメント。「ソフトバンクが参入してきても負けない、ADSLと同じ程度の価格で提供したい」との考えを明らかにした。
また、ソフトバンクがTD-CDMAでの音声サービスについて「まだ未完の技術という段階」と発言した点について、諸橋氏は「FDDもTDDも無線でのVoIPに向かう流れがあり、そのためのQoSや上り帯域確保といった技術はTDDでもすでに盛り込まれている」と指摘。「必要なのはフィールドでの実証実験であり、これは想像にすぎないが方式ではなく機器の開発が遅れているのではないか」との意見を披露した。
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干渉に関する実証実験の概要
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TD-SCDMA(MC)は隣接局からの干渉にも強いという
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関連情報
■URL
ニュースリリース
http://www.eaccess.net/company/press/2004/041014.html
関連記事:総務省、携帯電話新規事業者の参入向けた研究会開設[ケータイWatch]
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/20764.html
関連記事:ソフトバンクBB、800MHz帯の利用方針を巡って総務省を提訴[ケータイWatch]
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/20966.html
■関連記事
・ イー・アクセス、「TD-SCDMA(MC)」技術のデモを公開(2004/06/14)
( 甲斐祐樹 )
2004/10/14 21:52
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