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ドコモとNTT東日本、新潟県中越地震への対応状況を説明


 NTTドコモとNTT東日本は1日、都内で記者会見を開催し、10月23日に発生した新潟県中越地震の被害状況やそれらに対するこれまでの対策を説明した。

 会場には、NTTドコモ ネットワークテクニカルオペレーションセンター所長の一場 政美氏、同センター 災害対策室長の石川 数義氏、NTT東日本 ネットワーク事業推進本部 災害対策室 担当部長の東方 幸雄氏、同本部ネットワークマネジメント部門担当課長の斎藤 孝氏が出席した。


ドコモの基地局、今後は発電機も導入へ

NTTドコモ ネットワークテクニカルオペレーションセンター所長の一場 政美氏
 現在、ドコモのサービスエリア内で新潟県中越地震の影響によってダウンしている基地局は、山古志村を中心とした6カ所。このうち5カ所はFOMAの基地局も含まれる。いずれの基地局も進入禁止地区であるため、再び進入できるようになるまで、復旧できない見込みだ。

 説明を行なったドコモの一場氏によれば、新潟県内には400カ所以上、中越地区には160カ所以上の基地局が設けられているが、地震発生直後の10月23日18時の時点では、PDC(ムーバ端末)用基地局が12局、FOMA用基地局が8局ダウン。原因は基地局間を結ぶ伝送路のケーブルが陥没などによって切断されたためだが、基地局の設備そのものに被害はなかったという。

 地震発生翌日の24日17時にダウンしていた基地局は、PDC用が34局、FOMA用が13局に拡大。これは「地震直後から停電していたが、その後はあらかじめ備え付けられていたバッテリーで駆動していた。(24日にダウンした基地局が増えたのは)停電の状況が改善せず、バッテリーが尽きたため」(一場氏)だという。


左が地震の影響を受けた基地局、右が現在ダウンしている基地局 地震発生から現在までの基地局状況

 同氏によれば、「基地局の発動発電機は、NTT東日本から借り受けたもの、あるいは譲り受けたもののみで、基本的にバッテリー装備」としており、発動発電機が備わっている基地局は数少ないという。ドコモでは、各地に移動電源車を配備。これにより、1日12時の時点でダウンしている基地局は山古志村の周辺のみとなっている。一場氏は「当社の移動電源車は小型のものでも2トンクラスであり、スムーズに立ち入れない場所などでは発動発電機が活躍した」と語り、今後の対策として発動発電機の導入を拡大していくとした。


通常より45倍に達した着信

地震発生直後は、全国から新潟県内への着信が通常の45倍に

新潟県内の発着信も増加した
 通信状況としては、地震発生直後の23日18時頃に全国から新潟県内への着信が通常の45倍に達した。このため、同社では75%の通話規制を実施。同日22時頃には通常に近いレベルまで落ち着いている。また県内間の通話についても発信が約5.3倍、着信が約2.0倍となった。どちらもその後、大きな余震などが発生したり、地震報道があるたびに通話件数が増大し、通信規制が実施されてきた。

 大規模災害時には、安否を確認するために、携帯電話および固定電話によって通話件数が増大し、輻輳に陥るケースがある。交換局の処理能力を超える事態であり、いったん輻輳状態になれば復旧作業はある程度の時間が必要とされる。このため、災害時などにおける通信規制は必須とも言えるものだが、こういった状況でも110番や119番、行政間の通話などは可能になるよう、総務省は昨年7月に非常時における通信手段確保についての報告書をとりまとめている。

 これを受けて、携帯電話および固定電話を提供する事業者各社は対応策を導入しており、NTTドコモでは「iモード災害用伝言板サービス」や通話・通信を分離して個別に規制できる仕組みを導入。

 一場氏は、「通話はある程度制限することになったが、通信部分は別個にコントロールできるため、パケット通信は一切制限しなかった」と説明し、今回の地震を通じてiモードでのメール送受信およびインターネットアクセスには影響がなかったとした。また、「iモード災害用伝言板サービス」については、11月1日午前5時の時点で登録件数が87,875件、確認件数が11万5,677件に達したという。今年1月にスタートした同サービスだが、新潟県中越地震以前に最も多く利用されたのは、登録件数15,635件、確認件数13,853件を記録した9月の台風18号の際であり、従来を大きく上回る結果となっている。

 同社では、避難所30カ所に無料で利用可能な携帯電話を56台設置しているほか、自治体向けに携帯電話および衛星携帯電話を貸し出している。また新潟県内のドコモショップや49カ所の避難所において携帯電話の無料充電サービスを実施している。


NTT東日本、災害用伝言ダイヤルの利用件数は合計31万以上に

NTT東日本 ネットワーク事業推進本部 災害対策室 担当部長の東方 幸雄氏
 NTT東日本の受けた被害は、道路陥没や土砂崩れなどによって6カ所で中継伝送路のケーブルが切断したほか、57カ所のビルで停電が発生した。停電については、51カ所で予備用のバッテリー、6カ所で発電機を利用して復旧したが、現時点では山古志村にある施設1カ所が復旧できていない状況だ。

 長岡市で親子3人が土砂崩れによって車の中に閉じこめられ、男児1人が救出された場所もケーブル網が設置されていた箇所であり、現在も切断されたままの状況とのこと。しかしながら、伝送ルートの迂回などによってほとんどの地区で通話は可能となっている。

 NTT東日本の東方氏は、「(状況確認できない山古志村を除いて)交換局など施設そのものに被害は出ていない。しかし今後は、避難所から帰宅できる人が増えるにつれて、電柱から宅内へ引き込む部分の故障報告件数が増えるのではないか」との見通しを示した。


NTT東日本の施設では、停電などが発生したものの、交換局などに被害はなかった 全国から新潟県内への着信は通常の50倍に

災害用伝言ダイヤルの利用件数は、合計34万件に
 1995年に発生した阪神大震災では、ビル内の交換局などにバッテリーを備え付けていたものの、大きな揺れによって脱落してしまったり、発電機があっても燃料供給のパイプが外れたりしたほか、中継路を収納した配管が外れてしまうといった事象があったという。これを受けて同社では、バッテリーが外れないような枠を備えたり、余裕を持たせてある程度の揺れを吸収できるフレキシブル配管を導入するといった対策を講じてきた。東方氏はこれらの対策が、今回の地震における大規模な被害を防いだとの見解を示し、教訓が活かされた結果になったとした。

 音声で安否確認のメッセージを登録できる「災害用伝言ダイヤル(171)」は、11月1日午前9時の時点で録音件数が11万300件、再生件数が23万5,700件に達したとのこと。東方氏は、「運営開始してから過去6年半は認知度が低く、全利用件数は61万件だったが、今回は1週間で約34万件に達した」と語った。

 なお、11月1日16時におけるNTT東日本の発表によれば、利用できないエリアは山古志村および小千谷市の一部。フレッツ・サービスには影響はないほか、通話規制も行なわれていない。また、新潟県内60カ所に計296台の公衆電話(無料)が設置されている。


関連情報

URL
  NTTドコモ
  http://www.nttdocomo.co.jp/
  NTT東日本
  http://www.ntt-east.co.jp/
  関連記事:新潟県中越地震リンク集
  http://internet.watch.impress.co.jp/static/link/2004/10/25/niigata.htm
  関連記事:新潟県中越地震:携帯電話障害情報(ケータイWatch)
  http://k-tai.impress.co.jp/static/special/2004/shinsai/
  関連記事:第201回:災害用伝言サービス とは(ケータイWatch)
  http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/keyword/21157.html
  関連記事:総務省、災害など非常時における通信手段確保についての報告書(ケータイWatch)
  http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/14662.html


( 関口 聖 )
2004/11/01 21:13

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