NTTドコモは、第4世代(4G)の携帯電話システムの実現に向けて行なっている研究において、無線局が低速で移動していると想定された環境下で下り1Gbpsの信号伝送実験に成功したと発表した。
4Gの携帯電話システムは、無線LANと携帯電話のネットワークをシームレスに切り替えたり、どのような環境下でも高速な通信速度を実現したりするという概念だけが定められている状況。実際に利用する周波数帯や具体的な標準仕様については、2010年頃の実用化を目指して、国際電気通信連合の無線通信部門(ITU-R)で検討されている。
ドコモでは、4Gの実現を目指して各種研究開発を進めているが、今回は、ユーザーが低速で移動している状況を想定し、電界強度の安定していない環境下で、下り1Gbpsという通信速度の信号伝送実験が成功したという。同社では、「2時間ほどの映像を伝送する場合、ADSLなら11分ほどかかるが、1Gbpsという通信速度であれば30秒ほどで受信できる」と説明している。
通信技術として、さまざまな通信環境へ柔軟に適応できる「VSF-Spread OFDM(可変拡散率-拡散直交周波数・符号分割多重)」方式と、同じ周波数で複数のアンテナから異なる信号を送信する「MIMO(Multiple-Input-Multiple-Output)多重技術」が用いられたとのこと。使用した周波数幅は100MHz幅で、電界強度が低い場所にも関わらず、従来よりも短時間の処理で受信を行なえた。
受信する信号のうち、正しく伝えられたものだけを分離する方式には、多くの処理量が必要となる「最尤判定法」と、これに加え同社が独自開発した信号分離法が採用されており、その処理量は従来の1/1,900に削減された。また、1Gbpsという通信速度を実現するために必要な電波強度も処理量の小さい信号分離法の1/10程度で済むようにもなったという。同社によれば「信号分離に必要な処理量が大幅に低減できたことがポイント」としている。
同社では、今後屋外での伝送実験など4G向けシステムの確立を目指して研究開発を進めていく。
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VSF-Spread OFDM方式およびMIMO多重方式での通信イメージ
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実験に用いられた基地局装置
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こちらは移動局装置
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関連情報
■URL
ニュースリリース
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/04/whatnew1217a.html
( 関口 聖 )
2004/12/17 19:12
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