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SOI Asiaプロジェクトにアジア6校が参加、津波に関するシンポジウムも開催


慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授(右)と総合政策学部の小島朋之学部長(中央)、東京海洋大学海洋工学部の大津皓平学部長(左)
 アジア地域の大学を衛星を利用したインターネットによって接続し、遠隔授業などを進めているSOI Asiaプロジェクトは24日、5カ国6大学が新たにプロジェクトに参加し、東京海洋大学と東北大学農学部が授業を提供するパートナーとして参加したことを発表した。

 SOI Asiaプロジェクトは、2001年から衛星を利用したインターネット基盤を構築し、アジアの大学間でのリアルタイム遠隔講義やアーカイブ講義の共有、学会の中継などを行なっている。

 今回、プロジェクトへの参加が発表されたのは、タイのプリンス・オブ・ソンクラ大学と中らチョームクラオ・ロイヤル・ミリタリーアカデミー、カンボジア工科大学、バングラディシュ工科大学、モンゴル科学技術大学、ネパールのトリブヴァン大学の6校。ネパールを除く各校にはすでに接続が完了しており、ネパールも2005年中には接続される予定。

 また、授業提供のオフィシャルパートナーとして東京海洋大学と東北大学農学部が新たに加わり、海洋工学やバイオテクノロジーなど新たな分野の授業を提供していく体制を整えた。東京海洋大学海洋工学部長の大津皓平氏は、「アジア各国の他の大学との情報の共有や、練習船に衛星アンテナを積んで海上でのブロードバンド接続などを以前から計画していた」と語り、SOI Asiaの参加校からは提供を希望する講義として海運分野に関する要望が多く寄せられたことから、プロジェクトへの参加を決定したという。

 SOI Asiaプロジェクトの代表を務める慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純氏は、「SOI Asiaではインフラの構築が難しい地域に対して衛星によるインターネット環境の構築により講義の共有など成果を上げており、衛星と地上の回線を組み合わせたネットワークの運用などによりネットワーク人材の育成にも貢献している」とSOI Asiaプロジェクトの成果を説明。今後については、多くの地域からも参加の問い合わせを受けているが、特にネットワークの構築が難しい地域を中心にプロジェクトを拡大していきたいとした。


シンポジウムでは地震で被災した大学への支援策などを検討

 同日には、SOI Asiaのネットワークを利用して日本・タイ・インドネシア・フィリピンの大学が参加する「スマトラ沖大地震によるインド洋大津波:アジアの大学から世界へ~今大学が果たす役割」と題したシンポジウムが行なわれた。

 シンポジウムでは、東北大学の今村文彦教授から津波の発生するメカニズムや今回のインド洋大津波の特徴についての解説が行なわれた。また、慶應義塾大学の金子郁容教授からは、1995年の阪神淡路大震災の際に、複数のパソコン通信間をインターネットで結びボランティア情報の提供などを行なった「インターVネット」など、災害に対してネットワークが果たした役割が紹介された。

 インドネシアのバンドン工科大学からは、アチェ州にあるシアクアラ大学の被害状況の報告された。シアクアラ大学では、津波により教職員だけで117人の死者が出るなど大きな被害を受け、インフラの回復も遅れているという。こうした状況に対して、上り回線も衛星を利用したインターネット接続環境や遠隔授業の提供など、被災地域の大学に対しての貢献策などを検討していくという。

 SOI Asiaでは今回のシンポジウムを元に、津波に関する「特別講義シリーズ」を4月以降に大学間で共同で構築していく予定としている。

 また、村井純教授は政府のIT戦略会議に出席するためシンポジウムを途中で退席したが、IT戦略会議が開かれている首相官邸からビデオ会議でシンポジウムに参加。首相官邸からは小泉首相もカメラの前に立ち、「日本は地震や津波などの災害を多く経験しており、これまでの経験やインターネット技術をはじめとする科学技術などにより、津波や震災被害の復興に貢献していきたい」というメッセージを寄せた。


シンポジウムは各国をビデオ会議で結んで行なわれた 小泉首相も官邸からビデオ会議でメッセージを寄せた

関連情報

URL
  SOI Asiaプロジェクト
  http://www.soi.wide.ad.jp/soi-asia/


( 三柳英樹 )
2005/02/24 20:07

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