デジタル時代における著作権意識が高まる中、欧州連合(EU)の行政機関である欧州委員会(EC)は21日、図書館での著作権料徴収を義務づけることを決めた欧州指令(1992年のEC指令)を無視し、国内法を未だ整備していないイタリアとルクセンブルクを欧州司法裁判所に提訴することを決定した。
公共貸与権とも呼ばれる図書館での貸与権については無料とすべきという考え方もあるが、EUでは古くから一定料金の著作権料を受け取る権利を認めてきた。これは、1992年のEC指令で決定されたもので、著作権および著作隣接権に及ぶ。指令によれば、著作権者は公共貸与権を禁止または許諾する権利を有するが、一定の補償金を支払うことで、その権利には制限を加えることができるという。その結果、図書館での無料貸与が継続されている。
ほとんどの国がこの指令を受けて国内法令を改正した中、2カ国は法令を改正しないまま現在に至っていたことから、今回の提訴決定に至ったようだ。デジタル時代を迎え、図書館を介したオンライン複製も簡単になる一方で、なんら補償がされない2カ国の著作権者保護にも一役買うことになる。
EUは著作権法の域内での厳格な適用に躍起で、2004年12月にも公衆貸与権を正しく適用していないとしてスペイン、アイルランド、ポルトガルの3カ国を提訴している。また今回は、インターネット上の複製などについての規制に関する2001年の著作権法指令を実現していないとしてベルギー、フィンランド、スウェーデンの3カ国の提訴にも踏み切っている。国境が事実上ないEUでは域内における著作権の一致の早期実現に躍起になっており、今後もこのような措置は続くと考えられる。
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■URL
ニュースリリース(英文)
http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/05/347&format=HTML&aged=0&language=en&guiLanguage=en
( Gana Hiyoshi )
2005/03/23 11:20
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