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IPAが教育現場でLinux導入実験、教員の80%以上が「授業に支障なし」


実験概要
 情報処理推進機構(IPA)は19日、「学校教育現場におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての実証実験」に関する成果を公開した。実験は2004年10月から順次行なわれ、全国17校3,800人という規模は国内最大級。「先駆的な試みだ」(IPA窪田明理事)という。

 今回の実験は、OpenOfficeなどオープンソースOS向けのアプリケーションや、優れたGUIを装備するLinuxディストリビューションなどが充実してきたことが背景にある。IPAでは既存の商用OS環境を、これらのアプリケーションやLinux環境に置き換えるべく実験を進めた。

 具体的には、Linux専用デスクトップマシンを利用した実証実験と、KNOPPIXを利用した実証実験の2本柱で実施された。2004年10月から2005年5月にかけて行なわれたLinux専用デスクトップマシンの実証実験には、茨城県つくば市の小学校1校、中学校4校、岐阜県の小学校2校、中学校1校など9校3,089人が参加。一方、2005年1月から6月にかけて行なわれたKNOPPIXの実証事件では埼玉県の小学校や愛知県の商業高校、拓殖大学などの8校673人が参加した。

 実証実験に使用されたマシンは、レノボ・ジャパンの「ThinkPad R51」やソーテックの「WinBook」シリーズ、同「PC STATION」シリーズなど合計374台。307台を利用したLinux専用デスクトップマシンの実証実験では、ThinkPad R51とサン・マイクロシステムズの「Sun Java Desktop System, Release 2」、ソーテックのPCと「Turbolinux 10」をそれぞれ組み合わせた環境が採用された。


Linux専用のデスクトップマシンを利用した実験の概要 こちらはKNOPPIXの実験概要

サポートコストは商用OSを若干上回る可能性はあるが、初期費用は抑えられる

実験風景

システムメンテナンス用に「クラスルームPC管理ソフトウェア」を開発
 Linux専用デスクトップマシンの実証実験では、各Linuxを搭載したクライアントマシンから教科ごとのWebコンテンツにアクセスしたり、生徒だけでなく教員もLinuxマシンを利用してテストの作成や成績管理を行なった。事前に懸念されていた動画コンテンツの再生などもソフトの改良で対応した。実験に参加していない学校の商用OSマシンとのネットミーティングに成功した授業例もあったという。

 また、セキュリティ修正プログラムの適用などメンテナンスについては「クラスルームPC管理ソフトウェア」を開発。このソフトは、マイクロソフトの「Software Update Services(SUS)」などに該当する管理ツールで、各種オープンソースソフトのアップデートをネットワーク経由で適用できる。電源を切ったクライアントマシンに対してEthernet経由で電源を投入し、アップデートを適用すると電源を自動的に切る設定も可能だという。

 実験に参加した三菱総合研究所によればサポートコストは、1校40~50台とすればヘルプデスクは年間50万円程度。月間2~3件程度の質問であればオンライサポートも年間50万円程度となる。

 IPAの秋間弁参事は「サポートコストは商用OSを若干上回る可能性はあるが、初期費用は抑えられる」とコメント。また、「一部コンテンツを閲覧するには改良が必要だったが、改良した結果、教材コンテンツの8割は利用可能になった。子供たちも商用OSとの違いを気にせずに授業が行なえ、教員の80%以上は授業に支障なしと回答している」と述べた。


KNOPPIXを利用すれば障害時の対応も再起動で可能、今後は導入ガイドラインを策定

各校で行なわれたKNOPPIXを利用した実証実験
 CDブートが可能なKNOPPIXを利用した実証実験では、協力したアルファシステムズがKNOPPIXやOpenOffice、Firefoxなどをまとめてインストールできる専用ブートCDを作成。このブートCDに収められているアプリケーションのほとんどは無料で提供されているオープンソースソフトだが、仮名漢字変換ソフト「Wnn7」(7,000円)やウイルス対策ソフト「Sophos AntiVirus」(1,830円)も含まれている。

 常にCDブートで起動させるため、どのマシンでも同じ環境が構築できることが特徴だ。作成したファイルはファイルサーバーやUSBメモリに保存する必要がある、起動に3分程度かかるなどの点も指摘されたが、KNOPPIX自体も実験用にカスタマイズされており、「シンプルな機能で生徒も戸惑わず集中できた」「障害が発生しても再起動で対応できる」といった声もあったという。アルファシステムズによれば、今回用意したブートCDのマスターは1枚あたり約100万円程度。費用にはシステム構築時や導入時のレクチャーも含まれる。

 IPAでは今後、オープンソースソフトウェアの導入を促進するため検討すべきポイントなどをまとめたガイドブックを作成する予定だ。また、「英語が多いオープンソースソフトウェアのドキュメントを日本語化するなどの作業も今後の課題だ」(窪田理事)という。


実験概要 システム構成

関連情報

URL
  IPAのニュースリリース
  http://www.ipa.go.jp/about/press/20050719.html
  アルファシステムズのニュースリリース
  http://www.alpha.co.jp/topics/knoppix_exp.html
  実験概要
  http://www.ipa.go.jp/software/open/2004/stc/mri/


( 鷹木 創 )
2005/07/20 11:02

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