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Yahoo!オークション、利用者履歴を基に詐欺を自動検知する仕組み導入へ


 ヤフーは14日、Yahoo!オークションに「不正利用検知モデル」を導入すると発表した。詐欺のパターンをモデル化し、不正出品の自動検知に役立てる。12月にも導入を開始する。


突然ノートPCを30台出品すると、状況によっては詐欺と判定

(写真奥から)オークション事業部長の殿村英嗣氏、PS本部長の大蘿淳司氏、法務部長の別所直哉氏
 不正利用検知モデルは、株式会社金融エンジニアリング・グループ(FEG)と協力して約1億円かけて構築する。FEGは、金融機関の与信リスクモデルやクレジットカードの不正利用検知モデルの構築で実績がある会社。今回、Yahoo! JAPAN IDの数が500万件以上、平均総出品数が月間850万点以上に上る膨大なデータを活用して、Yahoo!オークションにおける利用者の行動パターンをデータマイニング技術によって分析・モデル化することにした。例えば、どんなものを出品し、いつもどんな商品説明を付けているのか、また出品する時間帯や場所など、出品者に対するさまざまな情報が残っているのだという。これらのデータをパターン化し、あるモデルとマッチングする行動パターンを不正利用とみなす。

 これにより、普段の利用パターンと異なるような出品を検知できるという。例えば、普段は低額商品を落札し、出品経験はなく、良い評価を積み重ねている利用者が、突然ノートPCを一挙に30台出品したような場合に、事前に評価を高めるための偽装工作だった可能性、または第三者によるIDの乗っ取りの可能性が高いと判定。これをもとにIDの利用停止などの措置をとる。

 ただし、実際にどういう手順で措置を行なうのかは決まっていない。必ずしも出品時にチェックするのではない可能性もあるという。ID登録時点または出品中にチェックすることも考えられるが、「できるだけ早い段階で(不正出品を)排除できるようにしたい」(オークション事業部長の殿村英嗣氏)としている。

 「怪しい」とみなす基準についても、広いグレーゾーンの中でどこに閾値を設けるかによって変わってくる。「ブラックに近いグレーに閾値を置いた場合には、ほぼ機械的に判定ができるかもしれない。ただ、モデルを広く適用しようとすれば、ホワイトに近いグレーに閾値を置くことになる。その場合は、実際に抜き出したデータをこれまでの(人手による)パトロールのノウハウに当てはめ、出品削除やID削除を行なう対応になる」(殿村氏)。不正利用検知モデルはあくまでも、今まで手作業や経験値で行なってきた監視体制を数値化して効率化するもので、最終的には人が判断することになりそうだ。

 ヤフーでは不正利用検知モデルについて「完全なる形というものはない。随時モデルは変わっていく。その時その時で行動は変わってくるため、それに合わせてモデルをバージョンアップしていく必要がある」(殿村氏)としている。現在のところモデル自体はまだ構築中で、できれば12月にも「フェイズ1」として簡易版を導入したいという。


オークション詐欺ではペイしなくなるような仕組みを構築

 なお、ヤフーでは詐欺の防止対策について、「不正利用検知モデルがすべてではない。トータルで詐欺のやりにくい環境を構築していく」(PS本部長の大蘿淳司氏)と強調する。例えば、Yahoo!オークションでは2004年7月より、新規に登録されるIDに対して郵送による住所確認を課すようになった。オークション詐欺を企む場合にも住所を用意する必要を発生させることで、「詐欺をしようとするとコストがかかる」という仕組みを構築しようとしているわけだ。

 その結果、「加害者の数の増加は抑えられていると思うが、大きな詐欺を狙ってこないとペイしないということで、最近報道されているように詐欺の規模はそれなりに大きいものになってくる」(大蘿氏)。そこで今回の不正利用検知モデルによって、大規模詐欺を早期に発見できるようにする考えだ。

 ヤフーによると、架空出品詐欺やオークション振り込め詐欺などのほか、海賊版などの知的財産権侵害、改造エアガンや児童ポルノなどを含む不正出品の削除率(削除件数÷新規出品件数)が2005年上半期(1~6月)で1.7~3.3%、詐欺被害発生率(被害件数÷落札個数)が同じく0.009~0.013%になるとしている。「我々としては、まだまだ抑えていられている状態と思っているが、とはいえ、やはりこれだけの発生率で起こっている。これに対してどんどん対策を組んでいきたい」(殿村氏)として、不正利用検知モデルのほか、今後も不正利用対策の強化を図る計画だ。年内にパトロールチーム人員をのべ150名から170名体制に増員する。また、エスクローサービスの強化や個人間代引きサービスも検討中だとしている。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://docs.yahoo.co.jp/info/pr/release/2005/1114.html

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( 永沢 茂 )
2005/11/14 19:57

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