Internet Watch logo
記事検索
最新ニュース

日刊工業新聞社、技術者向けにブログとSNSを提供する「てくてくjp」


 日刊工業新聞社は、技術者交流を目的としたブログとSNSを提供するサービス「てくてくjp(TechTech.jp)」を2006年2月に開始すると発表した。SNS機能の利用は有料で、月額315円の年契約制。なお、サービス開始時は3カ月間の無料期間が付与される。


技能や技術を蓄積して受け継ぐサービスに

日刊工業新聞社の千野俊猛代表取締役社長(右)とJDS信託の土井宏文代表取締役(左)
 てくてくjpは、日刊工業新聞社が創立90周年事業の一環として開始するサービス。ジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)とホットリンクの協力のもと、同社の紙面コンセプトである「モノづくり」「技術」「中小企業」の3分野を支援するためのブログとSNS機能が提供される。協力会社の役割としては、JDC信託がコンサルティングとプロデュース、ホットリンクがシステム開発をそれぞれ担当する。

 日刊工業新聞社の千野俊猛代表取締役社長は21日に行なわれた発表会で、「モノづくりでは技能と技術をどのように繋いでいくかが問題になっている」と指摘。「科学技術創造立国を標榜しているが、現場力の維持に加え、2007年問題である人口減少や団塊世代の定年退職によって技能の継承問題もある」と付け加えた上で、「こうした技術をいかに若者につないでいくかが重要になる」と語った。

 千野社長は続けて、「日本には自然科学系の研究者が約57万人、技術者が約250万人おり、これに学生やジャーナリスト、海外からの参加を含めると、SNSの意義は非常に高いと考えている」とし、てくてくjpについて「技術、知識、人の循環を進めていきたい」と方向性を説明した。その上で千野社長は「(てくてくjpで提供する)無料のブログと有料のSNSによって技術者や研究者のコミュニティを構築するのが狙いであり、こうしたモノづくりを支えることが当社の使命である」という点を強調した。

 てくてくjpの主なサービス対象は、企業経営者や技術者、大学や公的研究期間などの研究者。提供機能のうち、ブログに関しては誰でも自由に閲覧が可能。SNS機能は月額315円の有料制で、利用は1年契約。ただし、サービス開始時には3カ月間無料で利用できるキャンペーンなども実施する予定。なお、サービス自体は日刊工業新聞社などが出資する新会社を通じて、運営するとしている。

 同社編集局電子メディア事業室の水野洋室長はSNSの機能面について、「事前に大分類と中分類のカテゴリを設定しており、会員はどのカテゴリにも自由に参加可能で、コミュニティも作成できる」と概要を説明。「例えば半導体にしても、チップや装置、素材など分野ごとに技術者がおり、従来であれば各分野ごとの縦のつながりしかなかったが、SNSのコミュニティを通じて横のコミュニティも持つことが可能になる」と横断的な情報交流が実現できる点と述べた。

 また、大学教授を中心に30名程度が参加するコメンテーター制度も設けられる。水野室長は「コメンテーターの方に研究成果やコメントを投稿してもらうほか、企業からの質問に回答してもらう機能も用意していきたい」とした。加えて、「東大柏ベンチャープラザ、(同社が主宰する)産業人クラブの参加企業もサービス開始時点で参加しているほか、今後は企業単位での入会を受け付けるプランも検討している」という。

 さらに、てくてくjpには日刊工業新聞社の記者(約200名)も参加。水野室長は「記者はコメンテーターとして参加するとともに、解説記事の執筆、コミュニティ内の議論でニュース性の高いものがあれば、追加取材を行なって紙面に反映させる」と語り、「日刊工業新聞本紙との双方向的なやり取りも考えている」と述べた。


てくてくjpのSNS機能概要 日刊工業新聞社編集局電子メディア事業室の水野洋室長

ホットリンク内山氏「技術や知識、人が循環していくバーチャル学会に」

ホットリンクの内山幸樹代表取締役社長
 発表会にはまた、ジャパン・デジタル・コンテンツ(JDS)信託の土井宏文代表取締役、ホットリンクの内山幸樹代表取締役社長も出席。JDS信託の土居氏は「日刊工業新聞社さんという堅めの新聞社がこうした事業を展開することは、さまざまな可能性がある」とコメント。「てくてくjpを通じて、技術者の交流による知の連鎖が起きることを期待している」と述べた。

 また、権利関係の問題に関して土居氏は「研究者は横との情報を欲している」と述べた上で、「著作権や特許権の部分に関しては、当社でもサポートしていく考えである」とした。

 続けて、ホットリンクの内山社長からは、てくてくjpのシステム概要に関する説明があった。内山社長は時代と経済価値を生み出すものは変化してきているとした上で、「18世紀までは農業、19世紀から21世紀前半は工業の時代で、21世紀後半からは“脳業”の時代が来る」と自身の考えを披露。「現在は情報の洪水が発生している状況で、良い情報をせき止めるダムや個人ごとに必要な情報を提供する蛇口のようなものが必要になる」と考えているという。

 その上で、「検索エンジンのような人工知能ではすべてに対処することはできない」と指摘。内山社長は「ユーザーが発信した情報を蓄積したナレッジデータベースを作成して、情報のマイニングやリコメンドから、ユーザーごとにあった情報を提示する“学習型知識循環システム”が必要になる」と述べた。

 具体例として内山氏は、同社も共同開発を手がけるブログとSNSサイト「B食倶楽部」を紹介。ブログとSNSの連携として、「趣味を共有する人同士の形式知化」「形式化された知識をコミュニティ全体で共有が可能になるととももに、新しい友人との繋がりが発生してコミュニティが密になる」などのメリットを挙げた。

 またB食倶楽部と同様にてくてくjpでも、技術情報をデータベースとして登録する仕組みを導入する考えで、「ブログはあくまでも情報の入り口として捉えて、技術データーベースとして後々再利用できるようにしていければ」と述べた。その上で、てくてくjpについて内山社長は「メンバー同士のコミュニケーションの多さが重要で、再利用できる情報を蓄えていくことで、技術や知識、人の循環が進んでいくバーチャル学会になれば」と語った。


学習型知識循環システムのイメージ 知識循環プラットフォームの活用スケール

学生や技術者などに対して起業資金の提供も検討

 このほかてくてくjpでは、ベンチャーキャピタルが参加し、学生や技術者に対して起業資金の提供も検討。日刊工業新聞社の水野室長は「投資には一定の基準はあるが、ある程度リスクが高いものでもビジネス価値があれば立ち上げに協力していきたい」とした。また、トラックバックやコメント投稿によるポイント付与システムも導入され、獲得したポイントにより日刊工業新聞社刊行の技術図書などと交換できるようにするとしている。

 2006年度の有料会員目標は1万~1万5,000人程度で、水野室長は「2年後には採算ベースである5万人を目指したい」とコメント。売上は「1万会員あたり年3,600万円を想定し、バナー広告収入を含めて初年度で4,000万円程度を見込んでいる」という。


関連情報

URL
  日刊工業新聞社
  http://www.nikkan.co.jp/
  ジャパン・デジタル・コンテンツ信託
  http://www.jdc.jp/index.shtml
  ホットリンク
  http://www.hottolink.co.jp/
  関連記事:メイプルなど、招待制のブログ「B食倶楽部」にSNS機能を追加[Broadband Watch]
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/8378.html


( 村松健至 )
2005/11/21 20:41

- ページの先頭へ-

INTERNET Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.