フジテレビジョン、ライブドア、USENは16日、フジテレビのライブドア株売却およびUSENとライブドアの業務提携に関する記者会見を開催した。会見は2部構成で、1部ではフジテレビとUSENがライブドア株式売却に関して、2部ではライブドアとUSENが業務提携に関してそれぞれ説明を行なった。
フジテレビは、同社が所有するライブドアの全株を宇野康秀氏個人に売却すると16日付で発表。売却株数は1億3,374万株で、ライブドアの発行済み株式総数の12.74%に相当する。合わせてUSENでは、インターネット事業におけるライブドアとの業務提携に関しても発表を行なっている。
今回の会見はこれら3社の発表を受けて開催されたもの。会見の第1部ではフジテレビ代表取締役会長の日枝久氏とUSEN代表取締役社長の宇野康秀氏が、第2部ではUSENの宇野氏に加えてライブドアの経営陣が出席し、それぞれの発表に関する説明を行なった。
● 株式売却後も「フジとライブドアの関係がなくなるわけではない」
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フジテレビ代表取締役会長の日枝久氏
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USEN代表取締役社長の宇野康秀氏
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売却の理由についてフジテレビの日枝氏は、「宇野社長とは以前からの知り合いであり、映画事業などで現場の交流もあった」と前置いた上で、「USENの代表取締役社長として情報通信業界の地位を確固たるものにしたことは高く評価しており、USENの映像配信サービスとライブドアのポータル事業は必ず良い相乗効果を生むだろう」とコメント。「今回の売却でUSENとライブドアの提携が円滑に進み、両社にシナジー効果が生まれれば」と期待を寄せた。
一方でライブドアに対しては「証券取引法第18条に基づき、速やかに損害賠償を求める」方針。損害賠償額などはこれから検討するが、ライブドア株の購入価格と宇野氏に売却した価格の差額を基本とし、元代表取締役社長である堀江貴文氏個人に対する訴訟も検討しているとした。これを受けてライブドア執行役員社長の平松庚三氏は「訴訟があれば慎重かつ誠実に対応したい」と述べ、具体的な対応に関してはコメントを避けた。
宇野氏以外にもライブドア株購入の申し出は複数存在し、会見前日である15日夕方に最終的な決定がなされたという。日枝氏はライブドアとUSENのシナジー効果に加え、「ライブドア再生に努力したいという宇野さんの熱意を感じた」とコメント。価格面でも「今回合意に至った71円と他のオファーでは歴然の差があった」と、今回の売却額が最も高額であったと説明した。
フジテレビはライブドア株式をすべて売却することになるが、「強制捜査と逮捕という事件は遺憾だが、ライブドアとの関係がなくなったわけではない」(日枝氏)。また、平松氏も「非常に奇妙な縁ではあるが、何らかの形で関係を継続し、本当の意味で(フジテレビとライブドアの間で)シナジーを発揮できれば」と期待を示した。
ライブドア株式による損失に関して経営責任を問われた日枝氏は、「2005年の和解条件の1つであり、将来を拘束する条件を拒否していった結果が第三者割当だった。また、第三者割当の実施も(ライブドアが公表していた)決算を検討した結果」と回答。「ベストの和解策であり、経営責任はないと判断している」との考えを示した。
● 提携で生まれるシナジー効果でライブドア再生を目指す
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握手をするUSEN代表取締役社長の宇野康秀氏とライブドア執行役員社長の平松庚三氏
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宇野氏はUSENとライブドアの業務提携によって生まれるメリットについて「登録者数が800万を超えて広告メディアとしての価値も認められ始めたGyaOと、非常に高いトラフィックを持ったライブドアのポータルは、補完関係があるだけでなく内容も重複しない存在」と説明。また、携帯電話向けサービス「モバイルGyaO」と「livedoorモバイル」といったモバイル分野のほか、ECやファイナンス事業を手がけるライブドアと、インフラ事業や人材サービスなどを提供するUSENという、両社が得意とする分野を組み合わせることで、広告価値の増大やユーザー増による収益機会の拡大も図れるとした。
今回の株式取得は、ライブドアがUSENに対して取得を申し入れ、これを受けて宇野氏個人が全株の取得をフジテレビに対して要請したもの。平松氏は「ライブドアの再生だけでなく今後の成長も視野に入れて社内で検討した結果、出てきた意見がUSENだった」と説明、「USENの自由闊達な企業文化はライブドアとも相性がいいのでは」と付け加えた。
宇野氏個人による株式取得の資金調達は、金融機関の借り入れなどで実施する予定。USENという法人格ではなく個人で株式を取得した理由については、「ライブドアに対するしかるべき調査が終了しておらず、リスクマネジメントからすると個人で引受けるべきと判断した」と慎重な姿勢を見せ、USENへの株式移管についても「現在のところ決定しているわけではない」と補足した。
株式を取得しない業務提携も可能だったのではないかという質問に宇野氏は「より円滑な業務提携を進めて成果を出すためには、一定の株主と言う立場で責任を持つことも必要だろう」とコメント。「(株式取得によって)ライブドア社員からの信頼も得る必要がある」との考えも示した。
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両社のメディア事業の推移
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両社が得意とする事業でシナジー効果を目指す
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業務提携以降、ライブドアの新たな資金調達などは「今は潤沢な資産があるために行なわない」(平松氏)。また、将来的にUSEN傘下となるかという質問に対しては「今回は業務提携の発表であり、両社で発足した業務提携推進委員会の中でさまざまな広がりを構築していきたい」と明言を避けた。
現在もライブドアの筆頭株主は元社長の堀江氏だが、宇野氏は「堀江氏から株式を取得する予定は現在のところまったくない」と株式取得の可能性を否定。「ライブドアの経営でも完全に断絶して進められており、そういう意味では大株主だが一株主。この先の経営関与に関してもコーポレートガバナンスできる形で経営推進すべき」との考えを示した。
家宅捜索から始まった一連のライブドア関連事件に関して平松氏は「社会的な重さを考えれば(再生の)道のりはまだまだなだらかではなく、その責任は1つ1つ果たしていく必要がある」。今回の提携発表は「責任を果たすための重要なマイルストーンでもあり、こうして提携を報告できることを嬉しく思う」と語った。
関連情報
■URL
株式取得に関するニュースリリース(USEN、PDF)
http://www.usen.com/corporate/release/2006/pdf/060316_04.pdf
業務提携に関するニュースリリース(USEN、PDF)
http://www.usen.com/corporate/release/2006/pdf/060316_03.pdf
業績予想の修正に関するニュースリリース(フジテレビ、PDF)
http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104676/00043861.pdf
■関連記事
・ USENの宇野社長、フジテレビが保有するライブドア全株式を取得(2006/03/16)
( 甲斐祐樹 )
2006/03/16 20:24
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