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Airgo Networksがカンファレンス開催。11nにはドラフト2.0以降で対応


 米Arigo Netwokksの日本法人エアゴーネットワークスは25日、同社のMIMO技術に関するプレスカンファレンスを開催した。カンファレンスにはロバート・ディマルティーノ取締役社長や高木映児技術本部長が出席し、MIMOをベースとしたIEEE 802.11nに関する動向の解説や、同社のMIMO技術を搭載した製品のデモを行なった。


11nドラフト製品は「互換性が課題」。Airgoの11n製品は2006年秋に

ロバート・ディマルティーノ取締役社長
 ディマルティーノ氏は「True MIMO」と称する同社の第3世代MIMO技術に関し、「物理層で240Mbpsの速度を実現し、イーサネットを陳腐化させる存在」と主張。通信速度だけでなく、家庭内で通信ができないデッドスポットを解消する、サードパーティーとの互換性を実現するなど高速ブロードバンドに最適なソリューションであり、「FTTHなどブロードバンド化が進む日本では、ブロードバンドの力をフルに発揮できる」と自信を示した。

 MIMO技術を基盤とし、標準化作業が進められているIEEE 802.11nに関しても「Airgoの創設者がIEEEに働きかけたことがきっかけでタスクグループが設立されており、IEEE 802.11nの基盤技術にもAirgoが採用されている」と説明。「弊社のMIMO技術はすでに第4世代まで成熟しており、IEEE 802.11nが標準化され次第最先端の技術を市場に投入できる」とした。

 一方、IEEE 802.11nを巡る市場の動きに関しては、フロリダで行なわれたIEEE 802.11nの会合でドラフト1.0が否決された事例を挙げ、「標準化がゼロに戻ったわけではないが、ドラフト1.0に技術的な課題があることは明らか」と指摘。否決された理由として、IEEE 802.11a/b/gなど既存技術との下位互換性が不十分であるとした上で、「米国ではドラフト1.0製品が既存の11g製品のスループット低下を招くというデータもサードパーティーから示されている」と付け加えた。

 高木氏は「IEEE 802.11gの場合は、ドラフトが5.0や6.0まで進んだ段階で“プレ11g”製品が投入されていたが、11nではまだドラフト1.0すら認められていない状態」と比較し、「今のドラフト1.0ベースの製品では、ファームウェアのアップデートで11nに対応することは不可能だろう」とコメント。「弊社では少なくともドラフト2.0か3.0が出るまでは11n対応を謳わない」との姿勢を示した上で、「7月から9月にはチップセットを提供し、試作品は2006年内に市場に登場するのではないか」との予測を語った。


IEEE 802.11nはAirgoのMIMOが基盤であると強調 11nスケジュールと安定性の関係

IEEE 802.11nで検討中の課題 Airgoが呼びかけるIEEE 802.11nドラフト対応製品の注意点

AirgoのMIMO製品を使ったデモも。見通しの悪い環境でも42Mbpsを実測

高木映児技術本部長
 カンファレンスではAirgoのMIMO技術を搭載したルータによるスループット比較のデータも行なわれた。ハードウェアはAirgoのMIMO技術を搭載したバッファローの無線LANルータ「WZR2-108G」に加え、公平を期すために同じバッファローのMIMO非搭載製品で高出力を謳う「WHR-HP-AMPG」を用意し、アクセスポイントから見通しの良い場所と、アクセスポイントから離れた2階の2カ所でスループットを測定した。

 無線LANは2.4GHz帯のIEEE 802.11gを利用し、国内で利用できる20MHz帯の1チャネルで計測。スループット測定ツールにはChariotを採用した。2機種とも工場出荷時から設定は変更しておらず、2階の環境を劣化させるために扉を全て閉めた上でアルミホイルを貼るといった対策も行なわれている。


デモの測定環境。キッチンにアクセスポイントを設置し、ダイニングと2階のバスルームでスループットを計測 キッチンに設置したアクセスポイント。バッファローの2製品を使用

ダイニングに設置したクライアント 2階バスルームのクライアント

測定結果一覧
 アクセスポイントから距離も近く見通しのよいエリアでは、WHR-HP-AMPGが約25Mbpsだったのに対し、MIMO搭載のWZR2-108Gでは約70Mbpsと3倍近いスループットを実測。また、2階での計測結果はWHR-HP-AMPGの15Mbpsに対し、WZR2-108Gは42Mbpsを記録した。

 また、2階のデータではWHR-HP-AMPGのスループットが12Mbps~24Mbps程度で揺れるなど不安定だったのに対し、WZR2-108Gは40Mbps付近でほぼ安定した結果を見せた。高木氏は「MIMOはデータを多重して送ることもあり、どの角度からデータが来ても安定した結果が出せるようにしている」と解説。WHR-HP-AMPGは瞬間的に0.05Mbpsまで落ちることもあるが、WZR2-108Gは不安定でも34Mbpsをキープしており、「HDTV映像を安定して流すにもMIMOが適している」とした。

 今回はIEEE 802.11gを使って実験が行なわれたが、IEEE 802.11aのMIMOに関しては「コスト的な問題から、RFの価格が落ち着くまではAirgoでは取り組んでいない」とした上で、「もともと11nは5GHz帯をベースとして議論が進められていたが、11gのマーケットが大きいということから11gへの対応も決まった」との流れを説明。「HDTVのような大容量データを流すには11aが向いているなど、2.4GHz帯と5GHz帯のどちらも重要だろう」とした。


ダイニングのMIMOスループットは約70Mbpsを記録 2階バスルームのMIMO。環境が悪いながらも42Mbpsを記録

従来の11g製品は約25Mbps 2階バスルームの11gは平均で16Mbps程度ながら不安定な結果に

Airgoが事前に行なった測定データ。2階の11gは0.05Mbps程度までスループットが低下することも

関連情報

URL
  Airgo Networks
  http://www.airgo.co.jp/
  関連記事:バッファロー、Airgo「第3世代True MIMO」搭載の11g無線LANルータ[Broadband Watch]
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/13293.html

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Airgo、IEEE 802.11nドラフト否決に際してコメントを発表(2006/05/08)
米Airgo Networksが日本法人を設立、“本物”のMIMO技術を提供(2005/02/16)


( 甲斐祐樹 )
2006/05/25 19:39

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