総務省は、2006年1月から開催された「通信・放送の在り方に関する懇談会」の最終報告書を公開した。報告書にはNTTのアクセス網分離や放送法、著作権法の見直しについて提言されている。
この懇談会は、デジタル化やIP化などの技術革新が急速に進展する中で、制度や事業者の問題などさまざまな課題によって最先端サービスの提供が困難になっているとの考えから、竹中平蔵総務大臣の下に専門家を集めて開催されたもの。約半年間に渡って開かれた全14回の会合の意見を取りまとめた最終報告書が公開されている。
● 現状に即しない放送と通信の制度は抜本的な見直しを
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懇談会の模様(写真は3月23日に行なわれた第7回会合)
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融合が叫ばれる通信と放送分野においては、どちらも規制体系が旧来の技術特性に基づいて区別されているために十分な利用者利益が実現していないと指摘。通信の規制体系および1999年のNTT再編、50年前に制定された放送法といった制度下では自由な事業展開が難しいとし、通信と放送の在り方を再検討すると同時に、制度の抜本的な見直しが必要との考えが示されている。
放送と通信の融合を進めるための課題の1つとして挙げられたのが、IPネットワークを利用して放送サービスを提供する「電気通信役務利用放送」。このサービス形態は放送法上では放送として扱われながらも著作権法上は通信と解釈され、権利処理の際にも不利に扱われているという。
こうした現状を踏まえ、懇談会では電気通信役務利用放送法を著作権法上も放送として扱うべきと指摘。著作権法そのものについても、実態にそぐわない規定が散見されるとし、放送と有線放送の区分を統合した著作権法の抜本的な改正が必要とした。
● NTT体制はボトルネック設備分離と同時に自由度を高める必要も
懇談会を通じて何度も議論になったNTTの体制の在り方に関しては、2011年には地上デジタルへの移行やブロードバンドゼロ地域の解消、IP化の進展が進む中で、アクセス網をはじめとするボトルネック設備をNTT東西が有していることは健全な競争を阻害する可能性が高いと指摘。会計分離の徹底や接続ルールの遵守強化、ボトルネック設備への同等性確保が必要としたほか、NTT東西のボトルネック設備の機能分離を徹底すべきとの提案が示された。
一方、NTT東西の業務範囲が県内通信に限定されるといった規制により、NTT東西のポテンシャルも損なわれている面もあるという。懇談会ではボトルネック設備の機能分離徹底を前提とした上で、NTT各社が持つポテンシャルが十分に発揮できなければ世界最先端のサービスが提供できないという事態にもなりかねないと指摘。公正競争の確保と同時にNTT各社の自由度を高めることも必要であり、業務範囲の規制撤廃や持株会社の廃止・資本分離も検討すべきとした。
● 地上デジタルのIP再送信は「地域限定すべきではない」
地上デジタルのIPマルチキャスト再送信に関しては「送信範囲を地上波免許に定められた放送対象地域に限定すべき」との議論がある中で、デジタル化やIP化の特徴は距離や地域の制約を取り払うことにあり、地方局の制作力強化や経営基盤充実といったメリットもあるため、基本的には地域限定すべきではないという考えを示した。ただし、この問題に関しては行政が積極的に関与するものではないため、事業者が自らの判断により、関係各社と協議した上で決定することが適当としている。
地上放送のデジタル化によって空く周波数帯は、通信・放送の融合時代にふさわしい有効活用が必要。携帯向け映像配信サービスなど新しいサービスが登場した際には、電気通信役務利用放送を用いて通信設備を活用した放送も行なえるなど、新規参入を容易にすべきとした。
NHKに関しても、現行保有する8チャネルは電波の希少性などの面から多すぎるためにチャネル削減を提案したほか、不祥事が続発する現状を踏まえてNHK本体と子会社の見直しが必要と指摘。また、公共放送たるNHKはブロードバンド上でも一定の役割を果たすことが求められるとの考えから、番組アーカイブのブロードバンド提供も促進すべきとの考えが示された。
● 報告書にNTTは真っ向から反論。ソフトバンクは肯定的
懇談会の最終報告書に対して、NTTとソフトバンクはそれぞれの意見を発表した。NTTは報告書で提言されたボトルネック設備の機能分離や持株会社の廃止・資本分離といった意見に対し、「これらの措置が実施されれば、中期経営戦略の円滑な推進に支障をきたす」と反論。「これらの提言は受け入れられるものではない」と強い否定の立場を示した。
これに対してソフトバンクは「ブロードバンドを通じてより良い日本を作るために重要な示唆がなされた」と肯定的。「これを出発点として速やかに検討を開始していただくことを希望する」との考えを示した。
関連情報
■URL
通信・放送の在り方に関する懇談会 最終報告書
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/tsushin_hosou/pdf/060606_saisyuu.pdf
ニュースリリース(NTT)
http://www.ntt.co.jp/news/news06/0606/060606a.html
ニュースリリース(ソフトバンク)
http://www.softbank.co.jp/news/release/2006/060607_0001.html
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( 甲斐祐樹 )
2006/06/07 21:03
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