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米Google、サイト横断的決済サービス「Google Checkout」提供開始


 米Googleは29日、インターネットショッピングを便利にすることを目的とした決済サービス「Google Checkout」正式版を発表した。これは一部報道で「GBuy」と呼ばれていたサービスだ。このサービスはオークション最大手の米eBayが保有する決済サービスPayPalと直接競合するだけでなく、米Amazon.comなどの大手ネットショッピングサイトとも競合してくる可能性がある。


Googleアカウントによるログインで買い物が可能

Google Checkout
 Google CheckoutはGoogleアカウントと連動しており、1つのユーザー名とパスワードでクレジットカード番号、住所、氏名などの買い物に必要な情報を管理する。何か買い物ををしたい場合にGoogleで検索を行なうと、Google AdWords広告が表示されるが、Google Checkoutが利用できる店舗にはその横に小さな緑色のショッピングカートのアイコンが表示される。その店舗でGoogle Checkoutを使って買い物する時には単にGoogleアカウントのログイン情報を入力するだけでよい。店舗ごとにユーザー名とパスワード、あるいは住所、氏名、クレジットカード番号などを入力する手間が大幅に省けることになる。

 その上、異なる店舗でネットショッピングする場合にもGoogle Checkoutがすべての決済情報を管理しているため、どこで何を購入したかを一覧することができ、別々の請求書に悩まされる必要もなくなる。Googleという巨大なショッピングモールで買い物をする感覚だ。

 Google Checkoutはクレジットカード詐欺を防ぐための措置を講じているほか、買い物する時にメールアドレスを店舗側に通知するかどうかを選べる。それによって店舗側からの広告メールや、さらには店舗から情報が漏洩してたくさんの迷惑メールに悩まされるという問題を避けることができる。

 現時点でGoogle CheckoutはVisa、Master、American Express、Discoverなどのクレジットカードに対応しており、Citi CardはGoogle Checkout加入者向けキャンペーンを開始した。一方、現在Google Checkoutに参加してる店舗は100店ほどで、Google Checkoutのサイトにそのリストが掲示されている。その中には大手量販店のBuy.comやStarbucks Store、Levi'sなどの有名ブランドショップも含まれている。


店舗側が支払う決済手数料はPayPalより割安

 PayPalの強力なライバルと目されているGoogle Checkoutだが、店舗側に請求される決済費用でも価格競争が始まっている。Google Checkoutが請求するのは1回の決済の売上代金の2%+20セントであり、PayPalの2.9%+30セントの費用と比べて割安となっている。

 その上、Google CheckoutではGoogle AdWordsの出稿企業に対して大きなインセンティブを提供している。AdWordsの出稿企業の場合、広告に費やす広告額の10倍の売上まで決済費用が無料となる。これはAdWordsに1ドル費やす度に10ドル分の決済費用が無料になることを意味している。AdWords広告の隣にはGoogle Checkout対応のアイコンが表示されることを考えると、店舗によっては実質的にほとんど無料でGoogle Checkoutを利用できると指摘する声もある。

 Google Checkoutは店舗側が利用しやすいように工夫がされている。ショッピングカートを使用しない最も簡単な利用方法の場合、Google Checkoutが提供するHTMLコードをWebサイトに貼り付けるだけで作業は完了する。より高度な機能を利用した独自のアプリケーションを構築したい場合には「Google CheckoutAPI」が提供されており、これを使って独自アプリケーションを構築できる。

 Googleの発表によると、現時点でGoogle Checkoutは米国内のインターネット店舗限定のサービスだが、Googleではこのサービスを他の国でも利用できるようにするため現在作業を進めていることを明言している。


普及のカギはユーザーからの信頼

 決済サービスという性格上、Google Checkoutはベータ版として公開することはせず、Googleとしては珍しく最初から正式サービスとして発表された。しかしながらGoogle Checkoutの初期の利用者は決済がうまく終了せず、商品を購入できたかどうかわからない状態になってしまったという報告が数多くのブログに掲載されている状況だ。

 Google Checkoutを利用するということは、利用者の最も重要な情報である住所や氏名、クレジットカード番号、さらにはどのような商品を購入したかというプライバシーをGoogleが良識を持って扱うことができるのか──という信用が大きく関わってくる。それだけにこのようなトラブルを一刻も早く解消し、場合によっては保証やユーザーサポートを行なうことが今後の展開にとって重要になってくるだろう。

 決済サービスの世界に進出しようとしたのはGoogleだけではない。過去には米MicrosoftがPassPortを発表する際に決済サービスと統合することを表明したために大きな反発を受け、結局、撤回せざるを得なくなった経緯もある。

 また、大きなショッピングネットワークとオークションサイトを保有していた米Yahoo!も「Yahoo! PayDirect」という決済サービスを導入したことがある。この時にはYahoo! Shoppingのほとんどの店舗がこの決済サービスを導入したにもかかわらず、結局PayPalに打ち勝つことができず、サービス撤退に追い込まれてしまった。このことから、店舗の採用数にかかわらず、ユーザーにどれほど信頼され、受け入れられるかどうかが決済サービスの成功には不可欠であることがわかる。

 巨大なショッピングサイトと決済サービスPayPalを保有するeBayは、Google Checkoutの登場によって、明示的にGoogleの強力なライバルとなった。Googleが決済サービスを発表すると噂されてから、eBayはこの件についての意見を表明した同社社員のブログの記事を撤回させる措置をとるなど、すでに緊迫した空気が感じられている。米国内でGoogle Checkoutがどれほど受け入れられるかによって、今後展開する各国におけるGoogle Checkoutの動向にも注目が集まりそうだ。


関連情報

URL
  Google Checkout(英文)
  http://checkout.google.com/
  ニュースリリース(英文)
  http://www.google.com/press/pressrel/checkout.html
  Google公式ブログの該当記事(英文)
  http://googleblog.blogspot.com/2006/06/find-it-with-google-buy-it-with-google.html


( 青木大我 taiga@scientist.com )
2006/06/30 13:19

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