非営利団体のPew Internet & American Life ProjectとElon Universityが、インターネットの未来についてインターネットの専門家742人に対して行なった調査の結果が24日に発表された。
低コストの世界的なネットワークが繁栄し、「フラット化する世界」の中で新たな機会が多くの人に開かれ、スマートエージェントなどの自動化テクノロジーの利用が盛んになるという見方がある一方で、驚くべきことに回答者の42%が「人類がテクノロジーを将来制御できなくなるのではないか」という悲観的な考え方を抱いていることも判明した。
この調査に参加したのは、Internet Society、World Wide Web Consortium(W3C)、Working Group on Internet Governance、ICANN、Internet2、Association of Internet Researchersなどに参加するメンバーで、文献などの調査によって選び出された742人の自発的回答者に対して行なわれた。調査方法としては、1つのシナリオを描き、そのシナリオが2020年までに実現するかどうかを「賛成」「不賛成」「無回答」の3つの方法で選択させた。提示されたのは7つのシナリオだが、いずれも50%を間に挟みあう結果となり、賛成・不賛成ともに際だって大きな差が開いたシナリオは1つもなかった。
その中で賛成と不賛成の数値に最も差が開き、かつ無回答が最も多かったという特徴を持った1つの調査シナリオがある。それは、テクノロジーの進歩に反対する人々や、テクノロジーに置いていかれた人々がテロ活動を行なうことになるというものだった。2020年までに、加速する情報通信技術に置いていかれた(大抵は自分の意志により)人々が同様の人々とともに新しい文化的なグループを形成し、近代化社会から自ら関係を絶つようになる。その一部は単に平和と情報過多から自分を癒すために自らをテクノロジーから切り離す一方で、他の人々はテクノロジーに抗議する意志によりテロ行為や暴力行為を行なうようになるというものだ。このシナリオに賛成したのは58%、不賛成だったのは35%、そして回答しなかった人が7%存在した。
比較的多くの識者が賛成したシナリオは、世界的な低コストネットワークが繁栄するというものだ。このシナリオでは、2020年までに世界規模のネットワーク総合運用性が完成され、スムーズなデータフロー、認証、決済が行なわれるようになり、移動無線通信が世界中のどこでも誰でも極端な低コストで利用できるようになるという。このシナリオに対しては賛成が56%、不賛成が43%、無回答が1%だった。
また、多くの人が賛成しなかったのは、英語が他の言語を置き換えるというシナリオだ。このシナリオでは2020年にはネットワークコミュニケーションによって世界が1つの大きな政治的、社会的、経済的空間となり、すべての場所にいる人々がインターネット上で顔を合わせ、言語的また視覚的コミュニケーションを定期的に取ることができるようになり、英語はコミュニケーションに不可欠なものとなっていき、他のいくつかの言語を追いやってしまうという。このシナリオに賛成したのは42%、不賛成は57%、無回答は1%だった。
そのほかに自動化テクノロジーが問題となるというシナリオに対しては賛成が42%、不賛成が54%、無回答が4%。透明性はプライバシーを犠牲にしてもより良い世界を形づくるというシナリオについては賛成が46%、不賛成が49%、無回答が5%。バーチャルリアリティが生産性を高めるものの、中毒が問題となるというシナリオについては賛成が56%、不賛成が39%、無回答が5%。また、世界が「フラット化」するに従ってインターネットが世界中の人々に成功への機会を提供するというシナリオについては賛成が52%、不賛成が44%、無回答が5%だった。
この合同調査の結果の詳しいシナリオと調査手法、個々の回答者のコメントなどは115ページの英文レポートにまとめられており、Pew Internet & American Life ProjectのサイトからPDFファイルで入手できる。
関連情報
■URL
ニュースリリース(英文)
http://www.pewinternet.org/press_release.asp?r=131
調査レポート(英文)
http://www.pewinternet.org/PPF/r/188/report_display.asp
( 青木大我 taiga@scientist.com )
2006/09/25 12:17
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