送信されるメールの0.71~1.02%はただ消えて無くなり、相手の手元に届かないことが、15日に発表された論文により明らかになった。どのメールが消えてなくなるかは、送信者および受信者は関与・関知できないことから、この現実は重大な問題につながりかねない。
この研究は、米Microsoftの研究部門であるMicrosoft Research所属の研究者とカリフォルニア大学バークレー校の研究者の計3人が共同で行なったものだ。これまでの先行する研究では、このようにただ消えて無くなるメールの割合には大きな差があり、だいたい0.55%から5%の間であるとされてきた。今回の研究ではさまざまなバイアスを取り去り、精度を高めるために工夫した結果として、メールが消えてなくなる割合を0.71%から1.02%の間であろうと推定している。研究者らは、この消失の主な原因がスパムフィルターであると考えている。
研究では、この実験のために複数のメールアカウントを取得。メールコンテンツの内容もパラつくようにし、複数のシステムを使って送受信を行なった。メールアカウントは大学、商用のもの、企業ドメインをオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、米国にある計46アカウントで利用した。メールのコンテンツにはいわゆる「エンロンコーパス」と呼ばれるエンロン裁判で公開された典型的なビジネスメールの文面を集めたメール約1,700通が利用された。
その結果としていくつかのことが判明した。例えばGIFファイルを添付した場合にメールが消失する割合は特に通常の場合と違わなかった。逆にHTML形式のメールは、より高い割合で消失した。また、メールの書き方によって消失する割合が変化することも判明した。メールがビジネスの提案であったり、エンロン関連のニュース、あるいは特定の株式に関する情報である場合にはメールの消失率が急激に増加した。
メールが消失する理由は主にスパムフィルターであり、それにも複数の理由が考えられる。多くの企業ではIPアドレスフィルタリングを使用しているため、受信箱に届く前におよそ90%のメールが除去される。この場合、リレーSMTPサーバーが受信者のSMTPサーバーのホワイトリストに載っていない、あるいはブラックリストに載っているという理由で除去されることもあれば、ある一定量以上のメールが送信されているためにそのSMTPサーバーからのメールが除去される場合もある。また、旅行先からのメールにおいては、ホテルのSMTPサーバーがホワイトリストに載っていないために除去されるということもあり得る。こうした場合にはコンテンツに基づいてフィルタリングを行なうスパムフィルターの手元にさえメールが届かないため、受信者・送信者からすると「ただ消えて無くなる」ように見えるという結果を招く。
こうした事柄の結果として、メールがただ消えて無くなる場合と、スパムコンテンツフィルターの双方によって消失するメールの割合は1.79~3.36%。スパムコンテンツフィルターによる消失割合を除くと、メールがただ消えて無くなる場合は0.71~1.02%の間であると推定している。これは1日30通のメールを1年間送信するとして、3日分のメールがただ消えて無くなるということを意味している。
こうした問題はいずれもSMTPやスパム対策の問題であるとして、研究者らは「SureMail」というSMTPに基づいた新しいメールインフラを提案し、実装したことを論文の中で述べている。
関連情報
■URL
Microsoft Researchの論文(英文)
http://research.microsoft.com/research/pubs/view.aspx?type=technical+report&id=1191
( 青木大我 taiga@scientist.com )
2006/10/16 12:11
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