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海賊版対策のための法制度強化を検討へ、政府の調査会が報告


 17日に開催された政府の「知的創造サイクル専門調査会」で、海賊版対策を強化する法制度を検討することが明らかにされた。今回の検討案は、2007年2月26日に開催予定の同専門調査会で取りまとめられ、政府の2007年知的財産推進計画に盛り込まれる。

 現在の著作権法では、著作権を侵害する海賊版を販売するための広告行為について、「権利侵害」と見なしていない。このため、インターネットオークションやスパムメールなどを利用して著作権侵害品を販売するための広告行為が繰り返し行なわれているのが現状だ。

 一方、商標法などにおいては、偽ブランド品の広告行為は違反行為とされていることなどから、「海賊版販売のための広告を許容することは適切ではない」との指摘があった。こうした動きを受け、著作権法でも海賊版の広告行為を権利侵害行為とするための法制度整備を検討する。

 また、短期間で海賊品が売買されるインターネットオークションについては、違法出品が確認された段階で迅速な措置を講じるための制度導入を検討する。具体的には、権利者が海賊版の出品を確認してオークション事業者に通知した場合、オークション事業者は権利者の責任のもとに出品の削除や出品者情報の開示を行なえるようにする。

 この制度の導入を検討する背景としては、違法出品に対応するオークション事業者の負担が大きいことが挙げられる。例えば、権利者の要求で出品者情報の開示に応じた場合、実際には違法出品でないことが判明した際には、オークション事業者が出品者に対する責任を負わなければならない。その一方、開示請求に応じないことで権利者に生じた損害に対する賠償責任は、オークション事業者に故意または重過失がある場合に限られる。そのため、オークション事業者は「開示請求に応じない方がいい」と選択しやすく、出品者情報が開示されることは少なかったという。

 違法出品の削除についても、現状ではオークション事業者の負担が大きい。削除により出品者に生じた損害については、「権利侵害がある」という相当な理由があれば免責を受けられるが、相当な理由がない場合には、出品者に照会後7日を経過しなければ出品削除に対する免責を受けられない。そのため、短期間で売買されるインターネットオークションでは、海賊版の違法出品を削除することが難しかった。検討中の新制度は、オークション事業者が権利侵害の有無を判断する責任を負わないため、迅速な出品削除や出品者情報開示が可能だとしている。


 また、著作権法における「親告罪」の見直しも検討する。親告罪とは、被害者が告訴をしなければ、公訴を提起することができない犯罪。過失傷害罪や名誉毀損、親族間の窃盗などがこれにあたり、海賊版販売行為も著作権法で親告罪とされている。

 この親告罪が海賊版対策に与える影響としては、1)権利関係が複雑になっている場合には、告訴権者による侵害の立証、関係者の調整などが困難であり負担が大きくなる、2)告訴権者が中小企業、ベンチャー企業など、資力や人員の制約が大きい場合には、負担を考慮するあまり、告訴を躊躇する恐れがある、3)親告罪は、刑事訴訟法により、「犯人を知った日から6カ月を経過したとき」は告訴が不可能になるため、侵害事実の立証に時間がかかる場合には訴訟できる期間が経過してしまう――などが挙げられる。

 同調査会では、営利目的または商業的規模の著作権侵害行為など、一定の場合については、著作権侵害行為を非親告罪化すべきとの方策を示した。


関連情報

URL
  知的創造サイクル専門調査会
  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/


( 増田 覚 )
2006/11/17 17:41

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