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慶應、KDDI、エフエム東京、デジタル放送にIPデータを付加・送信する技術


KDDIの安田氏(左)、慶應義塾大学の村井氏(中央)、エフエム東京の仁平氏(右)
 慶應義塾大学、KDDI、エフエム東京は、デジタル放送にIPデータを乗せて配信する技術「IP over デジタル放送」を共同開発した。20日、同技術の概要についてデモンストレーションを交えた記者発表会が行なわれた。

 「IP over デジタル放送」は、デジタル放送波にインターネットコンテンツの情報を付加して送信する技術。IPパケットをMPEG2-TSパケットのペイロードとして、IPカプセル化したものを放送内容と合わせて電波で飛ばす。視聴者は、デジタル放送チューナー付きPCで受信すると、IP情報が抽出され、放送内容に則したWebサイトなどを閲覧できる。

 これにより、放送の即時同報性とインターネットの双方向性を生かしたサービスが提供できるようになる。またIPとしての特性を生かし、多地点からのデータ送信や、マルチキャストによるグループごとのコンテンツ配信、ネットワーク機器やアプリケーションと連動したリッチメディアの提供など、幅広いサービスを展開することが可能という。

 「IP over デジタル放送」について、慶應義塾大学は、基礎研究や技術的課題の検討、アーキテクスチャ設計、サービスモデル等の提案、標準化に向けた活動を担当する。一方、KDDIはシステム開発および新サービスやコンテンツの検討・開発を、エフエム東京は実験協力および新サービスやコンテンツの検討・開発を担当する。


IP over デジタル放送の概要 システム構成図 放送局側の機器

放送局と視聴者同士がリアルタイムでWeb情報を共有

 慶應義塾大学、KDDI、エフエム東京は、「IP over デジタル放送」の利用シーンを想定したいくつかのアプリケーションを開発しており、発表会では、「ネットサーフィン同期型ディスクジョッキー」のデモが行なわれた。ネットサーフィン同期型ディスクジョッキーは、放送局のパーソナリティが話題や曲に合わせて紹介するWebサイトを、リアルタイムに受信者側のブラウザに表示させるもの。


ネットサーフィン同期型ディスクジョッキーの概要 パーソナリティが操作するPC画面

パーソナリティと同じサイトが表示される受信者の画面 放送を聞いているだけで、リアルタイムに同じサイトが表示される

リスナーが知っているサイトをメールで放送局に送る 放送局はリスナーから紹介されたサイトを他のリスナーの画面に表示できる

店などを放送で紹介したときは、同時に地図を表示し、より詳細な情報が伝えられる リスナーへの簡単なメッセージをリアルタイムでWebページに表示できる

 「IP over デジタル放送」は、エンターテイメント分野だけでなく、災害時等における地域別の避難警告の伝達や安否情報サイトの一斉配信など、緊急時の情報配信にも利用可能としている。同技術を利用した具体的なサービス開始時期などは未定。今後は、技術的な問題や知的財産の問題などを研究課題とし、サービス実現へ向けて準備を進める方針だ。

 なお、同技術の各種デモを11月22日~23日に開催する「SFC OPEN RESEARCH FORUM 2006」で一般公開する。場所は東京・丸の内(丸ビル、三菱ビル、東京ビル TOKIA ガレリア)で、参加は無料。


Web 2.0的なコンテンツの実現も可能

 慶應義塾大学、KDDI、エフエム東京では2004年から同技術の研究開発を進めていたという。慶應義塾大学の村井純常任理事・環境情報学部教授は、「私どもは10年以上にわたって、ブロードキャストメディアにインターネットを配信する技術の標準化を進めてきた。今回の試みによって、新しい端末が発展する可能性もあるし、クリエイターも新しい創造性を発揮できるだろう」と語った。

 KDDIの安田豊執行役員・技術統轄本部長は、「オールIP化を目指すウルトラ3G構想を昨年6月に発表した。今後は、固定と移動と放送の融合・連携が重要になると考えており、今回のシステム開発は、FMBC(Fixed Mobile and Broadcast Convergence)のコンセプトにも合致している。この技術により、視聴者参加型のWeb 2.0的なコンテンツも実現でき、さらには地域社会の活性化などにも活用できる」と語った。

 エフエム東京の仁平成彦執行役員は、「リスナーの方々は、自分の持っている情報をシェアしたいと考えている。今回の技術により、その情報をすべてリスナーに一旦フィードバックして、そこからリスナーの反応を得るようなコンテンツ循環が可能になる。また、インターネット上で整備されつつあるライフライン情報を放送で一斉同報することは、災害時における放送の役割として大きな意味を持つ。さらに、インターネット上の新しいサービスが放送に適用しやすくなることは、未来の放送に向けて意義がある」と語った。


関連情報

URL
  慶應義塾大学
  http://www.keio.ac.jp/index-jp.html
  KDDI
  http://www.kddi.com/
  エフエム東京
  http://www.tfm.co.jp/index.html
  SFC OPEN RESEARCH FORUM 2006
  http://orf.sfc.keio.ac.jp/


( 野津 誠 )
2006/11/20 17:44

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