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FONに1,000万ユーロの追加出資、日本の有料サービスは夏を予定


 FONWIRELESS Limitedは29日、総額1,000万ユーロの出資を受けたと発表した。同日にはCEOのマーティン・バルサフスキーが来日し、FONの日本展開などについて説明した。


日本はFONの設置数第3位に。地域独自の出資も日本が初

FONのマーティン・バルサフスキーCEO
 今回出資した企業は、米Google Inc.、米Sequoia Capital、スイスIndex Venturesに加え、日本からは伊藤忠商事、エキサイト、DGインキュベーションが出資。Google、Sequoia、Index Venturesは2007年2月に続く2回目の出資だが、伊藤忠、エキサイト、DGインキュベーションの出資は今回が初。なお、出資比率や株式数などは上場企業ではないため非公開。

 これまでFONではグローバルでの出資を受けていたが、地域独自での出資を受けるのは日本が初めて。バルサフスキー氏は「今後は他の国でもその地域ごとの出資を受けていく」とした上で、「サービス開始時点での日本のアクセスポイント数は20位だったが、今では3位にまで伸びている」とコメント。また、ソニーのmyloとの提携にも触れ、「ソニーのオンラインショップであるソニースタイルで、ソニー以外の商品として販売されているのはFONだけ。非常に光栄に思っている」と語った。

 海外ではスペインやフランスが、市町村単位ではあるものの病院や学校、美術館などでFONを導入しているケースもあり、バルサフスキー氏は「こうした動きに対して通信事業者やISPは反対しなかった」と説明。「FONの利用にはブロードバンド回線が必要であり、それは事業者やISPにもメリットのあること。FONは民間企業と政府、国民に好まれるサービスだ」と自信を示した。


伊藤忠とエキサイトがFONのサービス展開を支援

伊藤忠の宇宙・情報・マルリメディアカンパニー 情報産業ビジネス部 瓜生裕明プロジェクトマネージャー

エキサイト エンタテインメント事業部の坂本孝治取締役事業部長
 伊藤忠の宇宙・情報・マルチメディアカンパニー 情報産業ビジネス部でプロジェクトマネージャーを務める瓜生裕明氏は、「FONには高い新奇制と、インフラ的な使命感を感じていた。また、成功の要件を多数揃えており、極めて高い可能性があると考えた」と出資の理由を説明。一方で、「固有ローカルマーケットで成功するためには、欧米とは異なるハードルがある」との課題も示し、「そうした課題を総合商社特有の総合力やグループ企業、他企業との関係性などをもって解決していきたい」とした。

 具体的にはFONのネットワークや対応機器拡大のためのパートナーシップを支援していくほか、FONユーザーの利便性を高める各種サービスの構築に努める方針。瓜生氏は「FONは元々バイラル的に広がってきたが、クチコミだけでは広がりに限界がある」と指摘。「ユーザーを広げるためにはデバイスだけでなく、ここにいけばFONを使えるといったランドマーク的なエリアも重要であり、そうしたセットアップも我々の役割」との考えを示した。

 また、公衆無線LANのローミングについても触れ、「一般的にはFONが公衆無線LANとの競合と思われがちだが、FONはホームやビジネスからエリアを展開し、サービスの品質はユーザーに委ねている。事業者の場合は駅や空港などでキャリアとしての品質でサービスを展開でき、アプローチがそもそも異なる」と指摘。「こうした既存の公衆無線LAN事業者とは高いシナジーがあるだろう。この分野でもFONを支援していきたい」と語り、決済面でも「日本では利用率の低いクレジットカード以外の決済方法にも対応していきたい」とした。

 エキサイトのエンタテインメント事業部 取締役 事業部長である坂本孝治氏は、「エキサイトは他ポータルとの差別化のためにゲームやブログ、音楽などのコンテンツを充実させており、FONのネットワーク活用に重要なサービスを持っている」とコメント。ISP事業のBB.exciteも「9割以上がBフレッツユーザーであり、FONのインフラとしても非常に有効」とした。

 エキサイトIDとFONとの連携も進め、エキサイトのIDから日本だけでなく世界中でFONを利用可能都市、有料サービスの場合はそれをレベニューシェアしていく。さらにFONユーザーを活性化させるためのコミュニティも運用予定とした。


FONユーザー以外も利用できる「Alien」プランを夏頃に予定

フォン・ジャパンの藤本潤一CEO(中央)と千川原智康Chairman(左)
 発表会では日本におけるFONの進捗状況も発表された。FONの会員数は現在約1万8,000人で、アクセスポイントは東京都内を中心として約9,500カ所に設置。FONではサービス開始当初、5日間限定の無料キャンペーンを実施していたが、フォン・ジャパンの藤本潤一CEOによれば、このキャンペーンでFON対応ルータ「La Fonera」を入手したのは約8,000人で、残りの1万人は自ら購入しており、「アクティブなユーザーにFONをご登録いただいている」とした。

 日本ではLa Foneraを設置したユーザーのみ他のLa Foneraを利用できる「Linus」というプランでのみ展開しているが、藤本氏は「アクセスポイント数も伸びており、夏頃にはLa Foneraを設置していないユーザーも有料で利用できるAlienをスタートしたい」と発言。ただし、具体的な料金などはまだ未定だという。また、設置したLa Foneraを有料開放できる「Bill」については、「電気通信事業法の問題もあり、Billのサービス提供は日本では考えていない(フォン・ジャパンChairmanの千川原智康氏)とした。

 現行多くのISPの利用規約ではFONのようなサービス形態を認めていないという課題についても、「日本のTOP5と言われるISPとも話を進めている」(千川原氏)。基本的にFONを排除したいというISPはなく、千川原氏は「どのようにFONと組むのがISPにとっていい関係なのかという議論をしている」と説明。「近い将来この点についても発表できるだろう」とした。

 ユーザーの回線を開放するという点で、FONを踏み台として利用するという行為も懸念されるが、FONの利用にはユーザーIDとパスワードが必要な点に加え、「アクセスログはFONでも管理している」とバルサフスキー氏はコメント。「一定期間が過ぎれば削除しているが」と断った上で、「問題が発生したとき、FONのユーザーを守るための措置も行なっている」とした。

 日本でのアクセスポイント数は2007年末までに7万5,000以上を、2010年には全世界で100万カ所のアクセスポイント設置を目標としている。また、現在はLa Foneraを1,980円で発売しているが、「この価格では利益は出ていない。将来的にはもっと高機能のLa Foneraを提供し、ハードでも利益を生み出していきたい(バルサフスキー氏)との目標を示した。


関連情報

URL
  FON
  http://www.fon.com/jp/
  関連記事:FON、ソニースタイルがLa Foneraとmyloをセット販売。AP数は約8,500に[BroadBand Watch]
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/17457.html
  関連記事:連載 清水理史の「イニシャルB」第225回[BroadBand Watch]
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/shimizu/16601.html

関連記事
「FON」が日本での本格展開を開始。エキサイトとの提携も(2006/12/04)


( 甲斐祐樹 )
2007/03/29 20:16

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