P2Pファイル交換ソフトによるダウンロード速度を最大5倍にまで高める可能性のある新技術を、米研究者グループが開発した。米カーネギーメロン大学が10日に発表した。
これは、同大学のコンピュータサイエンス助教授のDavid G.Andersen氏と、Intel Research PittsburghのMichael Kaminsky氏が設計・開発した「Similarity-Enhanced Transfer(SET)」と呼ばれる技術。この技術を使えれば、あるファイルではダウンロード速度は5%しか向上しないが、場合によっては最大で5倍の速度になることもあるという。
SETは、一見異なるファイルの中にも、全く同じ部分があることに着目して開発された。BitTorrentやGnutellaなどのP2Pファイル交換ソフトでは、巨大なファイルをたくさんの小さなファイルに分割し、複数の場所から別々にダウンロードして後で結合する方法をとる。これは巨大なファイルを1つの場所からダウンロードするよりも早く完了できる。したがってP2Pファイル交換ソフトのダウンロード速度を速めるためには、同じファイルを複数見つける必要がある。
通常、全く同じファイルを複数見つけることは、人気のあるファイルでない限り難しい。しかし、SETの開発者らは、全く同じファイルでなくても、分割したときに「ほとんどが同じファイル」は存在するという事実に着目した。例えば、人気のある映画の英語版とドイツ語版は映像の部分は同じで、音声部分だけが異なることがあり得る。また、音楽ファイルでもアーティスト名やタイトルのヘッダーだけが異なっており、音楽の部分は全く同じということもあり得る。ソフトウェアの異なるバージョンは改良した部分だけが異なっており、残りはほとんどが同じコードだということもあり得る。
こうしたファイルの場合、ファイルを分割した後には全く同じ部分が存在することになる。そうであれば、ドイツ語版の映画を求めている人が、今までであればドイツ国内からしかダウンロードできなかったのに対して、SETを使えば、米国にある英語版の映画の一部分をダウンロードすることで、ダウンロード速度を大幅に速めることができる。
実際にP2Pネットワークで行なわれたテストでは、SETを使用することによってMP3ファイルのダウンロード速度を71%向上できたという。また、47%が同じファイルで構成されていた55MBの映画をダウンロードした場合、30%の速度向上が見られた。
研究者グループは、ソフトウェアや学術論文を共有するサービスに実装したいと考えているが、映画や音楽共有サービスに応用することは考えておらず、このアイディアを開発者たちに自由に使ってもらいたい考えだ。SETについての論文と開発したソースコードは、11日にケンブリッジで開かれる「4th Symposium on Networked Systems Design and Implementation」で発表される予定だ。
関連情報
■URL
ニュースリリース(英文)
http://www.cmu.edu/news/archive/2007/April/april10_set.shtml
David G.Andersen助教授のホームページ(英文)
http://www.cs.cmu.edu/~dga/
( 青木大我 taiga@scientist.com )
2007/04/11 12:59
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