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SP盤をデジタルアーカイブ化して公開へ、NHKやレコ協らが協議会設立


 日本放送協会(NHK)、日本音楽著作権協会(JASRAC)、日本芸能実演家団体協議会、日本伝統文化振興財団、映像産業振興機構、日本レコード協会の6団体は27日、「歴史的音盤アーカイブ推進協議会(Historical Records Archive Promotion Conference:HiRAC)を設立したと発表した。初期のレコード(SP盤)の音源をデジタルアーカイブとして保存し、2011年度の公開を目指す。

 対象となるのは、音楽や演説、放送劇など、1900年頃から1950年頃までに国内で製造されたSP盤と金属原盤に収録された約7万音源。例えば、「ガダルカナル沖海戦 −大本営発表−」(ニッチク、1942年11月14日にNHKが録音)、東條英機による「大東亜共同宣言」(ニッチク、1943年11月6日の大東亜会議実況録音)、東京放送劇団による連続放送劇「鐘の鳴る丘(第1編)」(コロンビア、1947年録音)などがある。

 HiRACには、「技術検討部会」と「運用検討部会」の2つの部会を設置。実際にアーカイブ化するにあたっての方法や音源フォーマットなどの技術面と、アーカイブの利活用ルールの策定や関連団体との連携などの運用面から具体的な検討を進める。

 2007年度は、まずテスト的に1,000音源程度によるプロトタイプを作成し、技術面や権利面などで問題点を洗い出す。本格的なアーカイブ作業は2008年度からで、メタデータの整備やデータベースの構築を2010年度までに完了する。この間、公開への準備過程として、Webや試聴機による展開も予定している。具体的な内容はこれから検討するが、例えば、CD店にあるようなサンプル試聴機を図書館などに設置して試聴できるようにすることも考えられるという。また、あくまでも試聴だが、Webでもアーカイブを試聴できるようにする。2010年度には一般公開や商業利用、学術・研究機関での利用に向けての検討を行ない、2011年度に運用を開始する。


SP盤は歴史的・文化的資産、国家プロジェクトとしての援助を

(向かって右から)日本レコード協会会長の佐藤修氏、JASRAC理事長の吉田茂氏、HiRAC代表幹事の廣瀬禎彦氏、NHK専務理事放送総局長の原田豊彦氏
 27日に開かれた設立会見で、日本レコード協会会長の佐藤修氏は、「SP盤の歴史は、音による近代日本文化の歴史。必ずしも音楽だけでなしに、歴史的に価値のある講演や朗読、演説がたくさん残っている」と強調。しかし、SP盤や金属原盤の劣化とともに、昨今のレコード会社の統廃合などにより、音盤の散逸や消失が始まっているという。「一部のレコード会社では、気が付いたら昔の音源がすでに無くなっているということが起きている。今、残せるのか、失ってしまうのかという岐路に立っている。一刻も早く音源の保存にとりかかるべき」と、HiRAC設立の背景を説明した。

 日本レコード協会では、音盤のデジタル保存事業を2006年の重点施策に取り上げ、SP盤の製造に関連する会員レコード会社5社に対して、各社が保存しているSP盤の金属原盤の調査を開始。現在ほぼ調査を終え、カタログや集計の整備にとりかかっている段階だ。しかし、レコード会社により保存状態に差があり、紙ベースの台帳は解読さえ難しいものがある上、昔のことがわかるスタッフもいないのが実情だ。

 佐藤氏によれば、すでに各レコード会社において可能な範囲で相当部分をデジタル化しているが、これ以上はレコード会社が自力でやることには限界に来ているという。「貴重な歴史的・文化的資産である音盤を保存し、広く国民に公開・伝承する必要性を訴え続けるとともに、一刻も早くアーカイブの作業に取りかかる必要がある」として、「国家プロジェクトとしての国の資金援助も含めてご理解を賜わりたい」と訴えた。なおHiRACの運営予算については、会員会社が年会費を出す一方で、文化庁をはじめとする関連省庁に支援を要請している段階だという。

 会見では、JASRAC理事長の吉田茂氏もコメント。「流行歌というものは、音楽そのものの美しさや楽しさはもとより、生活の中での人々の情感やその時々の世相を世に伝えてきた。そうしたものが散逸の危機にみまわれているこの時期に、協議会が保存・公開に取り組むことは意義が大きい。貴重な記録が歴史の闇の向こうに消えてしまわないように、連携して取り戻していかなかければならない」と述べた。

 同日開催されたHiRACの総会では、コロムビアミュージックエンタテインメント代表執行役社長兼CEOの廣瀬禎彦氏が、HiRACの代表幹事に就任することが決まった。会見で廣瀬氏は、神奈川県川崎市にあった同社のCDプレス工場を2005年に閉鎖した際に、膨大な数の金属原盤やSP盤が出てきたというエピソードを紹介。その中から、有名な詩人が自分の詩を朗読していた驚くべきものが見つかったことを引き合いに、「かなり道の長い仕事だが、我々としては宝探しのような楽しみも持ちながら、アーカイブを作っていきたい。幸いにも、ネットワークの環境なども整いつつある。アーカイブを秘蔵するのではなく、広く公にお使いいただき、音楽だけでなくいろいろな文化に貢献できるもの理想としている」と述べた。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.riaj.or.jp/release/2007/pr070427.html


( 永沢 茂 )
2007/04/27 20:33

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