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東京大学の平木敬教授
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東京大学を中心とした国際共同研究チームは8日、2006年12月30日~31日に実施したIPv6による長距離TCP通信実験において、32,372kmのネットワークで9.08Gbpsの通信速度を実現し、インターネット速度記録として認定されたと発表した。研究チームでは、この通信速度は10ギガビットネットワークでのほぼ上限値のため、10ギガビットネットワークにおける「最終速度記録」を達成したとしている。
研究チームには、東京大学、WIDEプロジェクト、JGN2(NICT)、NTTコミュニケーションズと国内外のネットワーク機関や企業が参加。今回の実験では、東京から米国を経由してオランダのアムステルダムで折り返し、再び米国を経由して東京に戻ってくる32,372kmのネットワークを使用し、ネットワークの両端に設置した2台のPC間でTCP(IPv6)によるデータ転送を行なった。
2006年12月30日には、この実験ネットワークで7.67Gbpsのデータ転送速度を実現。さらに12月31日には9.08Gbpsのデータ転送速度を実現し、これが米国Internet2のインターネット速度記録(Internet2 Land Speed Record)として認定された。
実験を行なった東京大学の平木敬教授は、国際間の回線ではOC-192と呼ばれる9.6Gbpsの回線を使用しており、さらにこの回線にイーサネットを乗せるWAN PHY技術やTCPのヘッダーによる損失を考えると、国際間10ギガビットネットワークにおける理論上の限界値は9.1Gbpsになり、今回の9.08Gbpsという通信速度はほぼ上限値にあたると説明。Internet2のインターネット速度記録のルールでは、距離の上限が30,000km、新記録はこれまでの記録を10%上回ることが条件とされているため、今回の記録は10ギガビットネットワークにおける「最終速度記録」になるとした。
また、今回の実験では特別なハードウェアを使用していない点も特徴だと説明。実験に使用したPCは、Supermicro製のマザーボードに、Intel Xeon(3GHz)、4GBのメモリ、Celsio製の10ギガビットイーサネットアダプタ(PCI Express x8)という一般的に入手可能な製品による構成となっており、OSもLinux(CentOS 4.4)を用いている。その上で、パケットロスやバーストを抑えるためのレイヤ間協調最適化技術や、CPU負荷を低下させるためのゼロコピーTCP通信技術など、ソフトウェア技術により通信速度記録を達成しており、こうした技術は広く利用が可能だとした。
平木教授は、30,000kmを超す10ギガビットネットワークでほぼ上限にあたる通信速度を達成したことは、将来の超高速インターネット利用に道を開くもので、日本の高速インターネット技術やIPv6技術が世界最高レベルであることを示していると説明。また、今後の記録更新には、国際間ネットワークの40ギガビット化などが必要となるとした。
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実験に用いたネットワークの経路
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通信帯域のグラフ
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10ギガビットネットワークの限界
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記録達成により授与されたトロフィー
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実験に使用したPC
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使用したシステム構成
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関連情報
■URL
ニュースリリース
http://www.wide.ad.jp/news/press/20070508-LSR-j.html
実験の詳細(12月30日)
http://data-reservoir.adm.s.u-tokyo.ac.jp/lsr-200612-01/
実験の詳細(12月31日)
http://data-reservoir.adm.s.u-tokyo.ac.jp/lsr-200612-02/
Internet2 Land Speed Record
http://www.internet2.edu/lsr/
■関連記事
・ 東大を中心とした研究チーム、広域実験でインターネット速度記録を更新(2006/03/09)
( 三柳英樹 )
2007/05/08 19:42
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