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総務省、「通信市場における競争評価」の公開カンファレンスを開催


「電気通信事業分野における競争状況の評価2006」公開カンファレンスの模様
 総務省は29日、2006年度の電気通信事業分野における競争状況の評価に関する公開カンファレンスを開催した。総務省では、電話やインターネット接続サービスなどの通信事業について、市場の状況を把握するための競争評価を2003年度から毎年実施している。

 2006年度の競争評価については、各市場ごとの評価をまとめた「定点的評価」を5月28日に、市場間の影響力やMNPなどのテーマごとの評価をまとめた「戦略的評価」を5月29日にそれぞれ評価案として公表し、パブリックコメントを6月25日まで募集した。

 公開カンファレンスではこの結果を踏まえて、競争評価アドバイザリーボードの構成員と各通信事業者からの出席者によるパネルディスカッションが行なわれた。


ブロードバンド市場におけるNTT東西のシェア増加に懸念

 固定電話、携帯電話、インターネット接続といった各市場の状況をまとめた「定点的評価」については、2006年度は「ブロードバンド市場」と「ISP市場」に関する評価を新たに実施した。

 ブロードバンド市場は、これまでも「ADSL」「FTTH」「CATV」の各市場については評価を行なっていたが、これらをまとめた形で評価したもの。ブロードバンド市場全体で見た場合には、ADSLからFTTHへの移行が急速に進む中でNTT東西のシェアが増加傾向にあり、NTT東西は市場支配力を行使しうる立場にあると評価している。また、NTT東西には設備の開放が義務付けられているため市場支配力の行使は抑止されているが、圧倒的なシェアを持つ固定電話市場の力を背景とした市場への影響(レバレッジ)の懸念があるとしている。

 競争評価にあたっては、ADSLやFTTHといった状況の異なる市場をまとめて「ブロードバンド市場」として評価することについての懸念も表明されたが、各事業者からは「実態に即した評価だ」「個別の市場と全体の両方の評価が必要。現場においてもADSLだけ、FTTHだけという販売形態にはなっていない」といった肯定的な意見が寄せられた。

 一方、NTT東西の市場支配力の行使について「固定電話市場からのレバレッジの懸念がある」とした評価については、事業者の意見は分かれている。NTT東西などは、「ブロードバンド市場でのNTT東西のシェアは42.1%にとどまり、市場支配力を行使しうる立場にあるとは言えない」と主張。一方、KDDIなど他の事業者からは「既に懸念の段階ではなく、実際に影響が及んでいる」と主張している。

 ケイ・オプティコムの土森紀之氏は、「レバレッジについては2種類の懸念がある」と説明。「1つは、NTTは料金の割引によりFTTHの顧客獲得を進めているが、その原資はどこから来ているのかという問題。もう1つは、営業活動に固定電話の顧客情報を流用しているのではないかという問題」として、固定電話市場の支配力がブロードバンド市場にも影響を与えていると主張した。KDDIの長尾毅氏も同様に「NTTは独占時代からの設備を利用しており、その顧客情報を持っている」として、固定電話市場からのレバレッジに対する懸念を表明した。


 ソフトバンクBBの筒井多圭志氏は、FTTHにおいてはNTTが持つ設備の開放が不十分なため他事業者が競争できる状態にはないとして、より一層の設備の開放を求めた。総務省からは、ADSLでは開放がうまくいったと思うが、FTTHではどのような形が望ましいかについてはまだ課題があるとした。一方で、電話回線というほぼ独占状態にある設備を利用するADSLと違い、FTTHでは自前でネットワークを構築している事業者もあり、設備競争という側面と、設備を借りてサービスを提供する事業者との公平競争という、両面を考えていく必要があるとした。

 京都大学大学院教授の依田高典氏は、「NTT東西のシェアが伸びているのは事実は厳然としてある」として、これをどう評価するのかを考えなければいけない段階に来ていると説明。レバレッジについては、ルールを破るようなことが行なわれていないかという点と、ルールでは避けられない問題という面からの検討が必要だとした。

 このほか、出席者からは「将来的にはFTTHが100%になることが前提であるかのような議論になりがちだが、その他の技術も含めて議論してほしい」「競争評価というとどうしても市場シェアに焦点が当たるが、本来の目的は市場をより良い状況にしようということ。市場の集中度が下がっても、マーケットの状況が悪くなってはユーザーにメリットが無い。ユーザーの満足度といった面なども評価の上で検討してほしい」といった意見が挙がった。


関連情報

URL
  総務省 電気通信事業分野における競争状況の評価
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/kyousouhyouka/index.html


( 三柳英樹 )
2007/06/29 21:01

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