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私的録音録画小委員会の2007年第13回会合
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私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しを図るために、文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の2007年第13回会合が、26日に行なわれた。今回の会合では前回に引き続き、これまでの議論をまとめた「中間整理(案)」をベースに、著作権法第30条が認める著作物の私的複製の適用範囲などについて議論が交わされた。
中間整理案では、違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画について、第30条の適用範囲から除外することが適当であるとしている。これが法制化された場合、海賊版からの録音録画をはじめ、違法ダウンロードサイトやファイル交換ソフトで入手した違法コピーから著作物を録音録画することは違法行為となる。ただし、罰則については適用されない見込みだ。
なお、本日の会合では、第30条の適用範囲から除外について検討してきた「違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画」の利用形態の説明として、「視聴のみを目的とするストリーミング配信サービス(例 投稿動画視聴サービス)については、一般にダウンロードを伴わないので検討の対象外である」という脚注を追記することが事務局から提案された。
この脚注を加えた理由について文化庁著作権課の川瀬真氏は、一部の新聞や雑誌で「YouTube」などの動画共有サイトを視聴することも第30条の適用から除外されるという記事があったためと説明。この点については「誤解である」と述べ、視聴のみを目的とするストリーミング配信は一般にダウンロードを伴わないため、動画共有サイトを視聴するだけでは違法行為にはならないとする見解を示した。
なお、YouTubeなどの動画共有サイトを視聴する際には、動画ファイルのキャッシュがPC内のHDDに一時的に保存される。この点についてIT・ジャーナリストの津田大介氏は、「違法ダウンロードが法制化された場合は、キャッシュとして保存することも複製と見なされ、違法行為になってしまうのか」と疑問を示した。
この質問に対して川瀬氏は、「それが複製にあたるかどうかの知識はない」と前置きした上で、2006年1月に提出された文化審議会著作権分科会報告書の内容を紹介。それによれば、文化審議会著作権分科会に設けられた「法制小委員会」において、仮に現行の著作権法でキャッシュが「複製」と解釈されても、権利制限を加えるべきではないとする見解が示され、法改正事項として挙げられていると答えた。
● 日本レコード協会、違法ダウンロードへの民事訴訟「ないとはいえない」
違法サイトなどからのダウンロードを第30条の適用範囲から除外することに反対意見を表明し続けている津田氏は、権利者団体がユーザーに対して、法改正が実施された場合に民事訴訟を行なう意思の有無を確認した。
これに対して日本レコード協会の生野秀年氏は、法改正後にはまず啓発活動でユーザーに違法行為であることを伝え、適法サイトであることを示す識別マークを普及させることが優先としたが、悪質なユーザーについては「訴訟しないとはいえない」と回答した。
さらに津田氏は、法改正で違法サイトからのダウンロードが禁止されれば、「お前は違法ダウンロードをした」と脅して、金銭を振り込ませる架空請求メールが増えると指摘。罰則が適用されないにもかかわらず、わざわざ法改正を実施するとすれば、「消費者に混乱をもたらすだけ」とコメントした。また、送信可能化権によって違法アップロードを取り締まれば、新たに違法サイトからのダウンロードを取り締まる必要はないと訴えた。
続けて津田氏は、動画共有サイトに公開されている動画について、専用ソフトを使ってダウンロードする行為は「情を知って」録音録画することになるのか質問。これに対しては川瀬氏が、動画共有サイトに違法著作物がアップロードされていることを理解している場合は「情を知って」に該当すると回答。さらにストリーミング配信から専用ソフトで動画をダウンロードすることが、コピーコントロールを回避する行為と認められれば著作権侵害になると答えた。
なお、これまでの会合では「違法サイトと知らずに利用した人にまで権利侵害とするのは行き過ぎ」などの意見が出たことから、中間整理案には「違法サイト等と承知の上で(「情を知って」)録音録画する場合や、明らかな違法録音録画物からの録音録画に限定する」など、利用者を保護する記述が盛り込まれた。
関連情報
■URL
私的録音録画小委員会(第13回)の開催について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/kaisai/07091308.htm
■関連記事
・ 私的録音録画小委員会、違法サイトからの私的複製禁止に異論も(2007/09/13)
( 増田 覚 )
2007/09/26 17:23
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