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ラジコンプロポも2.4GHz帯活用、利用拡大で総務省の委員会が報告書案


 総務省・情報通信審議会情報通信技術分科会の小電力無線システム委員会は21日、小電力を用いた自営系移動通信の利活用と高度化についての報告書案を公表した。2.4GHz帯をラジコンに使用する場合に、新たに適用する技術的条件などを盛り込んでいる。

 現在、ホビー用ラジコンの周波数帯としては27MHz、40MHz、72MHzがあるほか、農薬散布などの産業用として73MHzがある。一方、最近では、無線LANなどで広く使われているISMバンドの2.4GHz帯を使ったラジコンも登場。報告書案によれば、欧米では普及が進んでおり、米国では販売される製品の50~70%が2.4GHz帯だという。変調方式は特に規定されておらず、周波数ホッピング(FH)や直接拡散(DS)など、データ通信でおなじみの方式が用いられているようだ。

 国内でも2.4GHz帯のラジコンがすでに製品化されているが、既存の「小電力データ通信システム」の規定に沿ったもので、現状では特にラジコン用に2.4GHz帯を使うにあたっての特別な技術的条件は規定されていない。これに対して報告書案では、「安全性を確保しつつ周波数の有効利用を図って運用するために、相互に影響の少ない方式を利用することが望ましい」とした上で、「特に飛行体の操縦に使用する場合は十分な注意が必要であり、必要に応じて技術基準を定める必要がある」とした。

 具体的には、変調方式ごとの要件として、1)FH方式では、ホッピングの滞留時間が50ms以下であること、2)その他の方式では、運用開始の初期において、キャリアセンスを用いること──のいずれかに合致するものであることとしている。その他の技術的条件は、2.4GHz帯の小電力データ通信システムと同一とする。

 ホッピングの滞留時間については、ラジコン飛行機は半径500m程度の範囲を時速90km(秒速25m)程度で飛行する可能性があり、干渉による通信データの欠落があっても操作の遅延を概ね100ms以下にとどめる必要があるというのが根拠だ。通常の小電力データ通信システムでは0.4秒以下とされているのに対して、ラジコンではホッピング滞留時間を短く規定することで遅延の可能性を軽減する。また、キャリアセンスとは、周辺でのチャンネルの利用状況を検出し、空きチャンネルを使用する方式のことだ。

 追加する技術的条件が無線設備規則として省令に反映されるのは夏頃の見込み。ただし、すでに2.4GHz帯を使ったラジコンが販売されていることを考慮し、一定の経過措置をとる方針だ。既存の規定に基づいて技術基準適合証明を取得して国内で発売されている2.4GHz帯のラジコンは、ほとんどが新基準にも適合していると見られるが、これを満たしていない商品もある可能性がある。それらの商品についても、省令化後、直ちに技術適合証明が抹消されるということはなく、そのまま使用できるという。


 ラジコンで使用している従来の周波数帯は、混信せずに同時に使えるチャンネル(バンド)が、27MHz帯で12チャンネル、40MHz帯で13チャンネル、72~73MHz帯で13チャンネルだった。これに対して2.4GHzを使えば、個々のメーカーの技術にもよるが、同時使用可能チャンネルを2倍以上に増やすことができるとも言われている。また、従来、送信機と受信機のチャンネルを合わせるために一般的に用いられている、クリスタルの交換を行なうわずらわしさが省けるというメリットもある。

 一方、これまでのラジコンの販売台数の推計値をもとに、報告書案では今後も年間数十万台が販売されると予測している。今後、2.4GHz帯のラジコンが増えれば、状況によっては、周辺で運用している無線LANなどともあわせて、無線システムの混在による影響が互いに出てくることも考えられる。この点については、ISMバンドである以上、ある程度の影響があることは認めた上で、それを最小限にとどめるという観点で検討が行なわれた。2.4GHz帯のラジコン同士での干渉を最低限回避できるよう規定すれば、他の無線システムとの干渉も回避されるだろうとの考え方だ。

 報告書案では、既存の周波数帯を使用するラジコンの運用制限の緩和も盛り込んだ。建築物から500m離れた場所で使用することとの条件(1957年郵政省告示第708号)については、「撤廃しても支障ないと考えられる」としている。当時、他の無線機器への電波干渉を回避するために設けられたものだが、現在は同一周波数帯を使う他の無線機器が主流ではなくなったことなどが背景にある。

 報告書案ではこのほか、動物を検知・通報するための無線システムの技術的条件についてもとりまとめている。小電力無線システム委員会では、報告書案について2月21日までパブリックコメントを募集する。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080121_2.html


( 永沢 茂 )
2008/01/22 13:23

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