YOZANは、業績悪化を受けて、これまでの経緯を説明する文書と、事業を再編して2008年度の黒字化を目指す方針を発表した。
これまで同社では、2001年に12月にページャー(ポケベル)事業を当時の日本テレコムから買収。2002年4月には、アステルブランドのPHS事業も取得し、首都圏エリアでのPHSサービスをスタートした。無線IP電話サービスや定額データ通信サービス、据置型端末を使ったPHSサービスなどを模索したが、いずれも軌道に乗ることはなかった。アステルブランドのPHSサービスが全国各地で消滅していく中、同社も2006年6月末にPHSサービスを完全に終了する。一方、2005年12月には、5GHz帯での法人向けWiMAX事業をスタートしたが、収益拡大には至っていない。
14日に発表された各種文書によれば、PHS事業の取得目的は、将来的に無線ブロードバンド通信を展開するための基地局設置地点の確保だった。しかし、買収時の契約によりPHS音声サービスを2年間継続せざるを得なかったという。その間、バックボーンのIP化を計画したが、協力会社が独自に似たサービスを展開したため、中止を余儀なくされた一方で、WiMAX技術が2004年に標準化されたことから、公衆無線LANに取って代わる技術として、PHS基地局をWiMAXに転用することになった。現在は、高速ブロードバンド通信向けに2.5GHz帯が利用されることになったが、当時は2.5GHzの利用は不透明で、5GHz帯で参入することを決断。しかし提携企業のベルネットが事実上の倒産に至ったほか、ライブドアやパワードコムと協力するものの、2006年早々に「ライブドア事件」が発生、パワードコムがKDDIに買収されたことから、WiMAXの事業計画に狂いが生じた。さらにWiMAX事業に必要な製品の開発が遅れたことなどもあり、同社では昨年12月31日をもって、WiMAX事業を一時凍結した。
同社では、資本金および資本準備金を取り崩し、資本金1億円・資本準備金なしという形にする。減少分の資本金約177億円・資本準備金約197億円は赤字の補填に充てられる。また、当面の資金繰りも厳しい状況ながら、株式市場や事業売却などによる資金調達は困難と判断。ただし、法的再建では株主の損失が大きいため自主再建の道をとることとし、転換社債型新株予約権付社債を27.5億円保有する投資会社のDKR-Oasisに支援を要請。DKR-Oasisからは、2008年度の黒字化を必ず達成することなどを条件として、20億円以上の融資を取り付けた。
これらを踏まえて、同社では、2008年度の黒字化に向けて、不要設備の整理などを行なってコスト削減に努める一方、ページャー・WiMAX・コンテンツという3本の事業のうち、WiMAX事業は将来の収益機会を求める可能性は残しつつも、現状では厳しい環境にあるため事業展開を一時凍結する。またコンテンツ事業は、今後の見通しが立たないため撤退する。残るページャー事業を中核とし、さらにメールでFAXを受信できる「D-FAX」サービスとともに収益の柱にする考え。ページャー事業は、送信できる情報量が限られるが、一斉同報性に優れ、280MHz帯で出力250Wという電波浸透力・到達力を活かせるとして、自治体や公共施設からの引き合いが強いという。同社では、ページャー技術を利用した自治体向け「地域情報配信システム」は将来の中核事業にする考えだが、短期的な契約数増加は厳しいと見ており、2008年度の収支計画には含んでいない。2007年度は18億6,800万円の赤字と予想されているが、2008年度の黒字化を目指す。
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YOZAN
http://www.yozan.co.jp/
YOZAN プレスリリース(PDF)
http://www.yozan.co.jp/pdf/080213_c.pdf
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( 関口 聖 )
2008/02/14 16:25
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