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ヘビーユーザーへの帯域制御に対するガイドライン、通信業界4団体が策定

帯域制御は例外的な措置として、ユーザーへの情報開示などを求める

 日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)など通信事業関連4団体は23日、ISPの帯域を占有するヘビーユーザーなどに対して、帯域制御の措置を行なう際の運用基準に関するガイドラインを策定し、公表した。

 ガイドラインでは、帯域制御はあくまでも例外的な状況において実施することを基本原則とした上で、特定のヘビーユーザーや特定のアプリケーションに対して帯域制御を行なう場合には、ユーザーの同意を得ることや帯域制御の内容について周知することが必要だとしている。

 JAIPA、電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、日本ケーブルテレビ連盟の4団体は、帯域制御の運用基準に関するガイドラインを検討する協議会を2007年9月に発足。6回の会合を経て策定したガイドライン案を2008年3月に公表し、寄せられた意見を踏まえてガイドラインをまとめ、公表した。

 ガイドラインは、通信事業者としての行動の指針を事業者団体が自主的に策定したものという位置付けになり、これに従うかどうかは各ISPなどの判断に任される。

 ガイドラインでは、まず基本的な考え方として、ネットワークのトラフィック増加などに対しては設備の増強によって対処すべきであり、帯域制御はあくまでも例外的な状況において実施すべきだとしている。

 こうした基本原則を認識した上で、特定のヘビーユーザーがネットワーク帯域を占有しており、他のユーザーの円滑な利用が妨げられるといった客観的状況が存在する場合には、帯域制御を実施することは認められるが、その際には状況が客観的データによって裏付けられていることが求められるとしている。

 ただし、ガイドラインでは、「特定のヘビーユーザー」や「特定のアプリケーション」の具体的内容については、各ISPのネットワーク構造や逼迫状況、他のユーザーの利用状況と照らし合わせて個別に判断する必要があるとして、具体的な数値や基準などについては定義していない。

 また、帯域制御の実施にあたっては、制御の内容についてユーザーに対して十分な情報開示を行なうことが重要だとして、どのような場合に制御を実施するのか、制御する場合にはその具体的な基準や制御方法などをユーザーに周知することが望ましいとしている。


 法律との関係では、電気通信事業法により事業者は「通信の秘密」を侵してはならないとされており、帯域制御の実施は侵害にあたる可能性があるが、利用者に対して明確な同意を得ることや、正当業務行為とみなされる範囲内であれば、違法にはあたらないとしている。

 ユーザーに対して不当な差別的取り扱いをしてはならないとする「利用の公平」との関係については、契約約款などに基づいて、他のユーザーと同等のレベルまでトラフィックを担保する限りにおいては、不当な差別的取り扱いには該当しないと考えられるとしている。一方、特定のコンテンツプロバイダーなどに対して、合理的な理由なく制御を行なうことは不当な差別的取り扱いにあたるとして、公正競争環境の確保という観点からも、他事業者に対する制御には問題があるとしている。

 ガイドラインでは今後の検討課題として、動画共有サービスや動画配信サービスの利用が急増しており、これらのトラフィックに対して検討を進める必要があるとしている。また、加入者系のアクセス網での帯域制御についての検討や、関係事業者間の情報共有のあり方、諸外国の状況などについての動向などを継続的に把握し、ガイドラインの内容についても定期的に見直すことが必要だとしている。


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URL
  ニュースリリース
  http://www.jaipa.or.jp/other/bandwidth/info_080523.html

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通信業界団体が帯域制御の指針案、P2Pトラフィックなどの増大に対処(2008/03/17)


( 三柳英樹 )
2008/05/23 17:11

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