電子情報技術産業協会(JEITA)は28日、音楽CDからの私的録音とテレビ放送からの私的録画に関する意識調査の結果を発表した。
調査は4月18日から21日まで、ライフメディアが運営するオプトインメールサービス「iMiネット」会員を対象に実施。音楽CDに関する調査は、デジタル携帯音楽プレーヤーの保有者500人、テレビ放送に関する調査は、DVDレコーダーやPCなどデジタル方式で記録する「デジタル録画機器」保有者500人が回答した。調査対象は重複していない。
● 携帯音楽プレーヤー「補償金をかけるべきではない」が85%
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回答者の85%が、音楽CDの購入代金、レンタル料金の支払いに加えて、デジタル携帯音楽プレーヤーに補償金をかけることに反対した
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まず音楽CDからの私的録音に関するアンケートでは、デジタル携帯音楽プレーヤーに保存されている楽曲の録音源として、「レンタルCD」(32.4%)や「自分・家族の市販CD」(34.9%)がそれぞれ3割を超え、次いで「インターネットの有料配信」(8.3%)がだった。
この結果についてJEITAは、上位3つの録音源を合計すると75%以上に達すると指摘し、「レンタルCDや購入CDの支払い対価に私的録音の対価が含まれていれば、保存されている音楽のほとんどに対して、私的録音対価が支払い済みとなる」とコメント。暗に、デジタル携帯音楽プレーヤーに対する補償金が不要であるとの見方を示している。
なお、レンタルCD料金に私的録音(リッピング)の対価が「含まれていると」と答えたのは61.0%。これに対して、「含まれていない」は14.4%、「わからない」は24.6%にとどまった。同様に、CD購入および音楽配信の料金にリッピングの対価が含まれているかどうかを尋ねたところ、いずれも「含まれている」が6割を超えた。
また、音楽CDに購入・レンタル料金を支払う一方で、さらにデジタル携帯オーディオプレーヤーに補償金をかけるべきかどうかを質問したところ、「補償金をかけるべきではない」が85.0%と圧倒的に多かった。
● 私的録音以外の理由で音楽CD購入枚数が減っている
このほか、音楽CDの購入枚数については、「変わらない」が48.8%と半数近かったが、「減った」と「とても減った」の合計が41.6%となり、「増えた」と「とても増えた」の合計9.6%を大きく上回った。
購入枚数が「減った」「とても減った」理由については、「レンタルショップで借りたCDからの録音が増えているから」が21.2%で最多。「購入したい音楽CDが減ってきたから」が20.0%と僅差で続き、以下は「CD購入に使えるお金が減ったから」(15.5%)、「インターネットの有料音楽配信からの録音が増えているから」(13.4%)、「音楽に興味が薄れてきたから」(11.5%)が続いた。
これらの結果についてJEITAは、「購入したい音楽CDが減ってきたから」「CD購入に使えるお金が減ったから」「音楽に興味が薄れてきたから」など、私的録音とは関係ない理由を挙げた人が半数近くに上る点を指摘。私的録音と音楽CD購入枚数減少に因果関係がないと示している。
● デジタル放送のコピー制限下では「補償金不要」が78%
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デジタル放送のコピー制限下では、「補償金を支払う必要がない」が78%
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テレビ放送からの私的録画に関するアンケートでは、テレビ放送(アナログ放送含む)をDVDレコーダーでデジタル録画していると答えた人が84.2%。「していない」は15.8%だったが、これについてJEITAでは「DVDレコーダーを保有していながら、再生機のみとして利用している」と推測している。
テレビ放送を録画する理由については、「放送時間に見られないため」が55.6%で最も多かったほか、「同じ時間帯に見たい番組が重複しているため」が13.9%で3番目に多く、JEITAでは「約70%がタイムシフト理由の録画」と指摘している。
一方、2番目に多かったのは「後日何度も見たり、ライブラリー等にするなど長期間保存のため」で16.1%。「映画を見に行く代わり」は2.2%、「レンタルビデオを借りる代わり」は3.2%だった。
また、過去1年間で録画しそびれたテレビ番組がビデオやDVDとして販売された場合、「購入したことがない」と答えたのが83.6%と圧倒的に多かった。JEITAでは、「大半の回答者にとっては、録画をしそびれたとしても、即パッケージ商品の購入動機につながるわけではないことがうかがえる」としている。
このほか、デジタル放送のコピーが制限された状況で、アナログ放送時代と同様に引き続き権利者に私的録画補償金を支払うべきかどうか質問。その結果、「自由に複製できないので補償金は支払う必要がない」が78.4%で、「引き続き支払うべき」(21.6%)を大きく上回った。JEITAでは、「自由に複製できない状況で、補償金を継続することに抵抗感を抱いていることがうかがえる」としている。
● 今回の意識調査は今後の議論の検討用資料に
私的録音録画をめぐっては権利者側が、デジタルコピーによって著作権者の経済的損失が発生していると主張。私的録音録画補償金制度の見直しを訴え、補償金の対象機器や記録媒体を拡大することなどを求めている。
こうした中、文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会は5月8日、今後の補償金制度に関する試案を提出。その中で、補償金制度の縮小を前提としつつも、当面は「音楽CDからの録音」と「無料デジタル放送からの録画」について、補償金制度での対応を権利者側の経済的損失を補うことを提案した。また、iPodやハードディスクレコーダーなど、録音録画が主な用途となっている機器や媒体については、新たに補償金制度の対象になると考えられるとしている。
これに対して、今回発表されたJEITAの調査結果は、地上デジタル放送の番組にコピー回数が限られる状況では、8割近くの回答者が「権利者への補償金は不要」と答えるなど、全体的に権利者側の主張と異なる傾向が見られた。
なお、今回の意識調査を発表する目的についてJEITAでは、「私的録音録画に関する一般消費者の意識、私的録画の目的等の実態を把握し、今後の私的録音録画補償金制度の議論における検討用資料とする」とコメントしている。
関連情報
■URL
音楽CDからの私的録音に関するアンケート調査(PDF)
http://www.jeita.or.jp/japanese/press/2008/0528/quest_tv_cd.pdf
テレビ放送からの私的録画に関するアンケート調査(PDF)
http://www.jeita.or.jp/japanese/press/2008/0528/quest_tv.pdf
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( 増田 覚 )
2008/05/28 19:05
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