グーグルは9日、検索エンジンの現状や今後の展望に関する記者説明会を開催した。説明会では、米Googleで検索部門およびユーザーエクスペリエンス部門の副社長を務めるMarissa Mayer氏がグローバルでのGoogleの今後の展望について説明したほか、日本法人の担当者からも日本での取り組みについて説明した。
● あらゆる言語からの検索に答えていきたい
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米Googleで検索部門およびユーザーエクスペリエンス部門の副社長を務めるMarissa Mayer氏
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Mayer氏はまずGoogleの歴史を振り返り、サービス開始当初のページを紹介。Googleのトップページがシンプルな理由について、「最初のページを作った(共同創業者の)Sergey Brinは、『我々にはWebマスターがおらず、自分はHTMLのことはやらなかったから』と語っているが、元々はそれだけの理由であり、ページがシンプルなのは偶発的なことだった」と説明。しかし、結果としてこのページが、シンプルで結果重視という企業理念に繋がっていったと説明した。
また、サービス開始当初、学生を対象として実際に検索してもらうユーザー調査を行なったところ、なかなか検索を始めないユーザーがいたので理由を尋ねたところ、「まだページが全部表示されていないと思って待っていた」という回答があったというエピソードを紹介。Googleのトップページ最下部には「(C)Google」というコピーライト表記が入っているが、「これはコピーライト表記というよりも、ページの読み込みが完了したことを表わす“句点”としての役割が大きい」と語った。
最近のGoogleの取り組みの中では、Web検索以外にもニュースや動画などの様々な検索結果をまとめて表示する「ユニバーサルサーチ」が大きなものだと語った。Mayer氏は、「例えば『蝶ネクタイの結び方』という検索に対しては、図解や動画がユーザーにとって最も役に立つものだ」と語り、「検索に対する一番良い答えはWebページとは限らない」という考えに基づいて、ユニバーサルサーチを開始したと説明した。
また、モバイル分野にも力を入れており、米国で展開している音声による検索サービス「GOOG-411」を紹介。音声による検索の可能性についても期待しており、世界中で同様のサービスを展開していきたいという意向を示した。一方では、モバイル端末の能力も向上しており、よりリッチなUIによるサービスも、モバイルに向けて提供していきたいと語った。
日本市場に対する取り組みに関しては、日本語版トップページの改良について言及。「ユーザーのニーズを調査した結果、日本のユーザーはもう少しトップページに情報が掲載されることを望んでいることがわかった」として、GmailやYouTubeなどのサービスに誘導するアイコンを表示するようにしたと説明。韓国や中国のGoogleでも同様の取り組みを行なっており、今後数カ月かけてさらにこの取り組みを強化していきたいと語った。
Mayer氏は最後にGoogleの翻訳検索機能を紹介。「日本語についてはWebページも豊富にあるが、言語によっては良い情報がWebからはほとんど得られない場合もある。将来的にはあらゆる言語のクエリーから、あらゆる言語の検索結果を返したい」と説明。「Webにあるコンテンツを言語にとらわれずに開放し、最適な答えをすべてのユーザーに提供したい」と語った。
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Googleの最初期のトップページ。シンプルすぎるページにユーザーのとまどいもあったという
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最初のトップページを作成したのはSergey Brin氏。ページがシンプルな理由は「Webマスターがいなかったから」
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「蝶ネクタイの結び方」の検索結果としては図解や動画の方が最適と説明
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電話から音声で検索できる「GOOG-411」も各国にも展開していきたいと語った
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● テレビを見ながらの検索ニーズに対応する「急上昇キーワード」
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検索担当プロダクトマネージャーの倉岡寛氏
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続いて日本法人の検索担当プロダクトマネージャーを務める倉岡寛氏が、日本でのGoogleの取り組みを紹介。日本市場の特徴として、「情報を効率よく収集したいという欲求が高い」「業務で使うことが多い」「知的好奇心が旺盛」「海外のページも見たいという要望が高い」といった点を挙げ、日本市場向けの戦略として、1)日本市場に適したホームページデザイン&検索の方法、2)日本に最適化したサーチクオリティ、3)急成長が続くモバイル検索への対応――の3点を重視しているとした。
このうち、日本市場に適したホームページデザインについては、Mayer氏も紹介した日本版トップページの改良を紹介。日本法人が中心となって開発したサービスとしては、「Google急上昇ワード」を挙げた。
倉岡氏は、「日本ではテレビを見ながらの検索が多く、特にモバイルでその傾向が顕著に表われる」と説明。テレビのゴールデンタイムなどでは、番組の内容に関連するキーワードの検索数が急激に増えるケースが多く、こうしたニーズに対応するために、急上昇ワードのサービスを開発したと語った。
また、急上昇ワードは「世の中の人がどのようなものに関心を持っているかを知ることも可能になる」と説明。急上昇キーワードはiGoogleやモバイル版で利用できるが、モバイル版では特に急上昇したワードが検索ボックスの下に表示されるようになっており、ユーザーの新たな発見にも繋がるサービスになっているとした。
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「急上昇ワード」はテレビ番組の内容に関連した単語が多いという
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モバイル版では検索ボックスの下に「急上昇ワード」が表示されることも
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● 日本のユーザーの「見つからない」を無くしていきたい
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ソフトウェアエンジニアの賀沢秀人氏
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ソフトウェアエンジニアの賀沢秀人氏は、日本語の検索精度向上に関する取り組みを説明。使用する文字の種類が多く日本語の検索には多くのチャレンジが存在していると述べた。
賀沢氏は、こうした問題の中から、「たまご」「タマゴ」「卵」「玉子」といったいわゆる“表記揺れ”が多数存在する点や、日本語入力時の誤変換やIMEの癖などへの対応を進めていると説明。誤変換と思われる単語に対しては“もしかして”として候補を表示するなど、日本語固有の問題にも積極的に対応しているとした。
日本のユーザーの特徴としては、「何か出来事があるとすぐに検索を試みる傾向があり、検索結果の“鮮度”にも強い関心がある」と指摘。「ニュースの検索結果などでも、なるべく新鮮な情報を表示したいが、一方では検索結果としてどの場所に表示するのが適当かといったことも短時間で決めなければならず、こういった処理をユーザーの期待に応えるために素早く行なえるよう取り組んでいる」と語った。
また、今後の課題については、「この発表の準備をしている際に、『Mac版のパワーポイントでインデントの幅を変える方法』と検索したが、期待した結果はまったく出てこなかった。キーワードをいろいろ変えることで、マイクロソフトのサイトで解説ページを発見できたが、キーワードを選ばなければいけないのではユーザーはがっかりしてしまう」とコメント。自然文検索の技術など、「我々のやれることはまだまだ多く、ユーザーの『見つからない』を無くしていきたい」と語った。
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検索の“表記揺れ”の例
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ユーザーの「見つからない」を無くしていきたいと説明
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● モバイル検索の数は日本が圧倒的なナンバーワン
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モバイル担当プロダクトマネージャーの岸本豪氏
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モバイル担当プロダクトマネージャーの岸本豪氏は、日本のモバイル検索動向を説明。「世界的に見ても、モバイル検索の数では日本が圧倒的なナンバーワン」だとして、日本ではモバイルでインターネットを利用する人数が多く、高機能な端末や高速なインフラの普及、携帯向けのコンテンツも充実しているといった状況が背景としてあると語った。
また、PCと携帯の検索トラフィックパターンを紹介し、「携帯からの検索はまず通勤時間に増え出し、昼休みに一気に増えた後、退社する夕方頃から増え続けて、夜にテレビを見ている時間と就寝前の時間がピークになる」と説明。一方、PCからの検索は「勤務時間中がピークで、夜にもピークはあるがビジネスタイムよりは一段低い」という。PCと携帯の検索ワードについても、「PCからはビジネスやサイエンスの検索が多く、携帯はエンターテイメント関連が多いという特徴がある」という違いがあると語った。
モバイル検索の課題としては、携帯電話会社のIPアドレスからでなければモバイル用のページにアクセスできないサイトなど、ページの収集自体にも困難がある点を指摘。また、携帯サイトは1ページあたりのサイズが少なく、ページ内から入手できる情報が少ない点や、Cookie非対応の端末や絵文字など日本特有の状況についても対処が必要となり、こうした状況の中でも検索結果として最適なものを返せるよう対応を進めていきたいと語った。
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PCとモバイルの検索トラフィックの違い。傾向を比較するためにスケールを揃えており、実際の検索数とは異なる
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クロールとランキング、日本固有の問題などが今後のモバイル検索の課題
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関連情報
■URL
Google
http://www.google.co.jp/
( 三柳英樹 )
2008/06/09 18:59
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