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補償金以外の「対価の還元」検討続ける、総務省が第5次中間答申


 総務省は27日、情報通信審議会の第19回総会を開催した。地上デジタル放送への移行や地デジのコピー制御ルールの課題などを盛り込んだ「第5次中間答申」が取りまとめられ、増田寛也総務相に提出された。


2009年度から生活保護世帯に簡易チューナーを無償配布

 第5次中間答申によれば、地デジ移行に伴い生活保護世帯を対象に、2009年度からアナログテレビで地デジ放送を視聴するための簡易チューナーを1台無償配布する。必要に応じて、室内アンテナ給付や屋外アンテナ改修の費用も負担する。2009年夏までに、5000円以下の簡易チューナーの開発・流通を実現するための取り組みも促す。

 地デジ移行に関する国民の理解については、2008年秋に全国10カ所程度で設置する「テレビ受信者支援センター(仮称)」を早急に拡大し、2009年度初頭には最低でも全都道府県に1カ所設置することなどで、周知徹底を図るべきと指摘。高齢者や障害者など一般的な周知広報では地デジ対応が困難な世帯については、戸別訪問によるサポートも充実させるべきとした。


ダビング10決定後も補償金以外の「対価の還元」を検討

 地デジの新録画ルール「ダビング10」の開始日確定の争点となっていた「補償金制度」については、情報通信審議会では今後、補償金制度以外の側面から「対価の還元」の具体策を検討することが必要であると指摘。補償金制度については、文化審議会で検討中の事項であるため、情報通信審議会の検討対象ではないとしている。

 ダビング10開始にあたっては、第4次中間答申で「クリエイターへの適正な対価の還元」を前提条件とすることが盛り込まれていた。しかし、対価の還元について権利者側は「HDDレコーダーに私的録画補償金を課金すべき」と主張する一方で、メーカー側がこれに反対していた。

 なお、対価の還元を実現する方策のひとつとして、「コンテンツ取引市場の形成」が提言されている。これは、番組製作者が製作・著作を持つコンテンツに関するデータベースを構築することで、コンテンツの二次利用を促進することが狙い。すでに権利者団体が構築しているデータベースとも相互連携を進め、効率的なシステム構築を目指すべきとしている。


B-CAS見直しも検討

 また、地デジ放送受信機にコピー制御を順守させるための仕組みである「エンフォースメント」を見直す必要性についても言及している。現在のエンフォースメントでは、コンテンツ保護技術「B-CAS」が用いられているが、取り扱いに一定の知識と注意が必要であることから、「ストレスを感じる視聴者が多数にのぼる」可能性が高いと指摘。地デジ放送の受信機を普及促進する観点から、B-CASの改善が必要ではないかとしている。

 さらに、基幹放送である地デジ放送は、すべての国民が視聴できるようにすることが政策目標であると説明。しか現行のエンフォースメントでは、いったん暗号化された放送波を受信機で復号する必要がある点に違和感を指摘する意見もあるとしている。こうしたことから今後は、暗号化を用いずに、制度的側面からのエンフォースメントを検討する必要性を示している。

 これらのエンフォースメントの見直しについては、1年後の結論をめどに検討を進めるという。


増田総務相「第5次中間答申案に沿った施策を行う」

 27日に開かれた情報通信審議会の第19回総会では、会長を務める日立製作所取締役会長の庄山悦彦氏が、第5次中間答申案を増田総務相に提出。増田総務相は、地デジに移行する2011年7月に向けて「政府全体で取り組まなければいけない」と述べ、今後の施策に反映する考えを示した。

 「特に地方では高齢者を含めて、テレビに情報網を頼っている所帯が多い。住民に密着した周知広報や相談のあり方、生活保護所帯への支援、受信側の対策、中継局整備といったことについても、政府として最大限取り入れて、今後の施策を行いたい。」

 また、ダビング10については「一番需要が多くなると見込まれる北京オリンピックに向けて、歩み寄っていただいたと思っている」と関係者に感謝を示したほか、「コンテンツ取引市場の形成の提言もいただいたが、これも重要な問題。真剣に考えていきたい」と語った。


関連情報

URL
  情報通信審議会総会(第19回)
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/kaisai/080627_1.html


( 増田 覚 )
2008/06/27 18:50

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