日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)とインターネット協会(IAjapan)は24日、6月にパリで開催されたICANNの会合に関する報告会を開催した。報告会ではICANN会合に出席したJPNIC理事の丸山直昌氏が、新gTLDの導入についての議論の状況を紹介した。
● 新gTLDの導入に関する2つの誤解
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JPNIC理事の丸山直昌氏
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ICANNパリ会合では、「.com」などの分野別トップレベルドメイン(gTLD)について、新たなgTLDを追加するための議論が行われている。丸山氏は、ICANNがパリ会合で出した新gTLD導入に関するニュースリリースを受けて、メディアに過剰な反応が見られたと説明。リリースには、新gTLDの導入に対して注目を集める目的があったと思われるとした上で、これを受けた報道の中には2つの誤解があると説明した。
丸山氏はまず誤解の1つとして、報道ではICANNの理事会が「改定案を承認した」といった表現が挙げられると説明。実際にはGNSO(分野別ドメイン名支持組織)の勧告を理事会が受け入れたというだけで、導入に向けた具体的な実施案はまだできていない段階であり、現時点で「承認した」とするのは誤解が多いとした。
また、もう1つの誤解としては、「誰でも自由に新TLDを登録できる」といった表現が見られたが、実際にはレジストリ事業を行うためのTLDを申請できるという話であって、自分(自社)が専有するためのgTLDを申請できるわけではないと説明した。
一方で、今回のGNSO勧告では、全体で何個のgTLDを新設するかといった個数制限は設けられておらず、新設するgTLDに対しても「社会的価値があるか」といったこれまでのような評価基準も設けられていないことから、「これまでよりも確かに自由ではある」と語った。
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報道における2つの誤解
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ICANNパリ会議の理事会決議
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新gTLD導入に関するICANNの動き
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新gTLDの申請に対する審査
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● 新gTLD導入に向けては紛争解決機関の確保が課題に
ただし、丸山氏は新gTLDの新設に向けては、「なお相当の困難が予想される」と予想している。その理由の1つは、申請されたgTLDの文字列について、意義申し立てを受け付けるための紛争処理機関を設けるとしているが、その確保が容易ではないことを挙げた。
GNSO勧告には新gTLDの審査基準が挙げられているが、たとえば基準の中には「既存のTLDや予約語と類似でないこと」という条件が挙げられているが、「類似」の基準を明確化するのは難しいと説明。同様に、「他人の法的権利を侵害していないこと」「道徳と公共秩序に反しないこと」といった条件も基準を策定するのは難しく、勧告ではこうした条件については意義申し立てを行える機関を設けることで、問題を解決するという方針が示されている。
丸山氏は、紛争処理機関については候補となっている機関の名前は公表されていないが、理事会の議事録などにはWIPOやハーグ仲裁裁判所といった名前が見られると説明。ただし、理事会では法的顧問から「既存機関のルールに合わせるためには多くの困難がある」といった意見が挙がっており、依頼にあたってはICANN側で明確なルールを定めておくことが求められるなど、紛争処理機関の確保は困難が予想されると語った。
丸山氏は、「JPNICとしては、世界的に新gTLDの導入を求めている人は多く、こうした要望に応えるためにも新gTLDの導入には賛成を表明している。要望に応えられなければ、オルタネートルートの登場など、ドメイン名の一意性が保てなくなる事態を招くことになる」と説明。ただし、実際の導入に向けては、まだ解決すべき課題が多数あるという見解を示した。
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申請文字列に対する審査
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申請文字列に関する紛争処理機関
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関連情報
■URL
JPNIC
http://www.nic.ad.jp/
インターネット協会
http://www.iajapan.org/
ICANNのニュースリリース(JPNICによる翻訳文)
http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/2008/20080626.html
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( 三柳英樹 )
2008/07/25 11:14
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