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オープンソースにも著作権が及びうる、米高裁が判示


 米国で知的財産などを扱う専門の高等裁判所である連邦巡回高等裁判所(CAFC)が13日、フリーあるいはオープンソースであると称して配布されたソフトウェアに対しても、特段の事情がある場合には著作権が及びうるとの判断を示す判決を出したことが明らかになった。

 この裁判は、原告(控訴人)であるRobert Jacobsen氏が、自らの著作物であるコンピュータプログラムについて、Artistic Licenseと呼ばれるオープンソースライセンスに基づいて無料でWebサイトを通じて配布していたところ、被告(被控訴人)のMatthew Katzer氏とKAMIND Associates社が、このソフトをもとに鉄道モデルの商業用ソフトウェアを開発し、有料で販売していたことに対して起こされていたもの。Jacobsen氏の開発したコンピュータプログラムについて、Artistic Licenseの条項に違反して複製・改良が行われていたことから、カリフォルニア北部連邦地方裁判所に提訴し、原審では原告敗訴であったところ、Jacobsen氏が控訴していた。

 控訴審では、著作権者がフリーあるいはオープンソースであると称して配布したソフトウェアに対して権利行使を行えるかどうか、特段の事情がある場合に権利行使できるかどうかが判断された。

 Artistic Licenseと呼ばれるオープンソースライセンスでは、1)改良した場合にそれを公にすること、2)改良版を社内あるいは機関内部での使用にとどめること、3)改良した場合、名称を変更しオリジナルと間違うことのない名称にし、オリジナルとの違いを示したマニュアルを配布すること、3)他の条件を著作権者と協議し、実行すること――という4つのうちの1つを満たす必要があった。

 原審の地裁は、契約違反であれば訴えの対象となるが、このライセンス契約においては、意図的に広い非独占的ライセンスであり、範囲が限定されておらず、また、そもそも著作権侵害についてはその責任を負うものではないとして、Jacobsen氏の訴えを退けていた。しかし高裁では、著作権侵害についても特段の事情を満たす場合には認められる余地があり、本件においてはKatzer氏側はこれを遵守せずにソフトウェアの開発・販売を行っていたことから、Jacobsen氏の著作権が及ぶ条件を満たしうると判断。原審の決定を取り消し、さらに原審へ差し戻す判決を下した。

 判決ではまた、従来は著作権者は有料で販売することによって収益を得ていたが、現在では無料であっても利益がある場合があり、例えばシェアの拡大という点では経済的な考慮要因でもありうると指摘している。

 すでに普及しているオープンソースの考え方だが、著作権がどのように及ぶのかが不明な点があった。今回の判決は、今後のコンピュータプログラム関連の著作権訴訟に影響を与える可能性があり、注目される。


関連情報

URL
  判決文(英文、PDF)
  http://www.cafc.uscourts.gov/opinions/08-1001.pdf


( Gana Hiyoshi )
2008/08/18 15:34

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