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ソフトバンク決算会見、孫氏は健全経営をアピール

750億の特損の可能性も、一時的なものとして経営危機説を否定

 ソフトバンクは29日、2008年度上期の決算を発表した。売上高は前年同期比で約2.6%減少したが、営業利益は同7.3%増で、全体的には減収増益となった。

 同社代表取締役社長の孫正義氏は、株価が大きく落ち込む中、キャッシュフローが大きく改善して手元流動性も豊富にあることを強調したほか、ボーダフォンジャパン(現ソフトバンクモバイル)買収時の借入金返済が順調に進んでいると説明。また、数年ぶりとなる業績予想値の公表もあり、会見は、経営の健全性を強くアピールする内容となった。


連結業績と業績予想

健全経営をアピールし、経営危機説を否定したソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏
 連結ベースでの売上高は1兆3289億9800万円で、前年同期より約357億円減少した。売上高の減少は、携帯電話端末が前年同期比で20%減少したことが主な要因とされている。一方、営業利益はヤフーでの利益拡大やソフトバンクテレコム、ソフトバンクBBでのコスト削減で前年同期よりも7.3%増加し、1800億円となった。経常利益は1173億円(前年同期比5.5%増)で、当期純利益は同11.5%減の411億円。

 あわせて、通期予想も発表された。孫氏は「BB事業の開始以来、業績予想を出していなかったが、今回、それ以来初めて今年度・来年度の業績予想を発表する。発表会を1週間早めたのは、少しでも早く、ソフトバンクの財務状況を知りたいという要望や不安があったためで、それに真正面から取り組む。透明性を高めて不安を払拭したい」とコメントした。

 2007年度の営業利益は3242億円、営業キャッシュフローは1582億円、投資キャッシュフロー(設備投資)がマイナス3224億円、フリーキャッシュフローはマイナス1642億円だったが、今回明らかにされた業績予想によると、2008年度の営業利益は3400億円、営業キャッシュフローは4200億円、投資キャッシュフローはマイナス2800億円、フリーキャッシュフローは1400億円とされている。

 また2009年度は、営業利益4200億円、営業キャッシュフロー5000億円、投資キャッシュフロー2500億円、フリーキャッシュフロー 2500億円となった。この予想に従えば、フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー)は年々潤沢になるとされ、その余剰資金は携帯事業買収で発生した借入金の返済に充てられる。

 この業績見通しについて、孫氏は「これまで発表していなかった物を今回公開した、ということ自体、大きなコミットメントと受け取っていただいて良い。株式投資に対する疑心暗鬼が広まる中、透明性を高めいきたい。今後、数年間は継続して公表するだろう」と述べた。なお、業績予想では売上高が示されていない。これは「市場競争の変化で、割賦の一部を変更するといった手法を採用することで売上高は変化する。経営上の選択肢を少し残すため、売上高は公表しない」と説明した。


今期の業績サマリー 業績見通しも発表された

「無借金で次代にバトン」が哲学

 質疑応答で、今後大幅に増加すると見込むキャッシュフローの用途を尋ねられると、孫氏は「それは僕の人生哲学に大いに関わること」と語り、同氏が掲げる計画を説明しはじめた。

 孫氏が19歳に立てたという“人生哲学”とは、20代で事業を立ち上げ、30代に1000億円規模の軍資金を得て、40代に1兆円、2兆円という規模で大きな勝負をかけ、50代で事業を完成形に近づけて、60代で次代の経営陣にバトンを渡すというものだ。

 孫氏は「49歳のとき、ボーダフォンジャパンを2兆円で買収した。少なくとも私個人にとって、“無借金”が快適な借入の状態だと感じる。私の哲学から逆算して、今後フリーキャッシュフローの管理を行っていく。返済が終わり、その上でキャッシュフローがあれば、投資や増配、自社株購入などになるだろうが、それまでは数千億単位の投資を行うつもりは全くない。これまでの行為で“孫は狂ったように投資する”と思っているかもしれないが、40代の勝負どころで行ってきたこと」とした。


モバイル買収での借入返済は順調、経営危機説を否定

フリーキャッシュフローを借入返済に充てるとした孫氏は、「ソフトバンクの借入金の大半はボーダフォンジャパンの買収に関わるもの。買収は2兆円規模だったが、証券化したのは1兆4000億円。既に数千億円の返済は終了しており、このまま順調にいけば、4~6年で返済し終わる」と説明。

 また、「一部で、銀行に対して約束している返済額、あるいは条件に違反している、あるいは違反しそうになっているという報道があるが、完全に(そういった報道内容は)間違い」とした。ただし、「銀行側がよければ私どもはいつ公表してもかまわない」(孫氏)と、具体的な返済額や、残額については金融機関の合意が得られていないため、非公表となった。

 なお、現ソフトバンクモバイルでは、ボーダフォン時代に750億円の公募社債を発行していた。買収時、ソフトバンクでは「公募社債買戻しと同じ効果を得るため」(孫氏)、750億円分の投資を行った。

 しかし、昨今の金融危機を受け、この投資が全て損失計上しなければならない可能性が出てきたという。孫氏は「投資は160銘柄のパッケージだったが、そのうち6銘柄までのデフォルト(債務不履行)は、損失計上する必要ない。ただ7銘柄目になると456億円、8銘柄目になると750億円の特別損失を計上しなければならない。今日の時点では6銘柄まで来ており、まだ損失は0円だが、今後7、8銘柄となると損失になる。ただし、9銘柄以上になっても 750億円以上の損失になることはない。29日16時にムーディーズからソフトバンクの格付けに本件の影響はないと公表された」と説明し、一時的に最大 750億円の損失を計上する可能性があるものの、一時的なものであり、社内に類似の取引は存在しないとした。

 またCDSと呼ばれる指標を元に「現在10%近い要求利回りを示しているが、大丈夫か?」と経営を不安視する声に対しては、「CDSなどマーケットの状況は経営破綻するような勘違いのスプレッドになっているところがある。基本的には借入金の返済がどの程度かが本質」と述べ、返済状況が順調なことから、不安視する必要はなく、むしろ満期まで保有するほうが高い利回りで利益に繋がるとした。


携帯事業買収による借入金の返済状況を示したグラフ。具体的な金額は示されなかった 750億円の特損になる可能性が明らかにされた

関連情報

URL
  プレスリリース(業績予想)
  http://www.softbank.co.jp/news/release/2008/081029_0001.html
  IRデータ
  http://www.softbank.co.jp/irdata/


( 関口 聖 )
2008/10/29 23:28

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