Mozilla Japanは17日、米Mozilla Corporationのモバイル版Firefox「Fennec」の開発担当者と、研究開発部門であるMozilla Labsの担当者の来日に合わせて、記者説明会を開催した。
● Windows Mobile版「Fennec」は年末~年始にかけてアルファ版を公開予定
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米Mozilla Corporationモバイル担当バイスプレジデントのJay Sullivan氏
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モバイル担当バイスプレジデントのJay Sullivan氏は、モバイル機器向けのWebブラウザ「Fennec」の概要をデモを交えながら説明。Fennecは「ユーザーが妥協することなく、フルのブラウザ体験ができることを目指している」として、AjaxによるWebアプリケーションやプラグイン、アドオンなどの機能を備えたモバイル向けのブラウザであるとした。
ユーザーインターフェイスの面では、モバイルデバイスの画面を最大限に活用するため、移動ボタンなどのユーザーコントロール部分は左右に隠してあり、画面をスライドさせることで表示される仕組みを採用。また、ロケーションバーと検索ボックス、ページのタイトル表示欄は「スマートバー」として1つに統合し、こちらもページをスクロールすれば表示は隠れ、なるべくコンテンツは全画面で表示することを主眼に置いているとした。
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Fennecの起動画面
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「進む」「戻る」などのボタンは画面右側に隠れている
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タブの切り替え機能などは画面の左側に隠れている
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URL入力・表示欄と検索ボックス、タイトル表示欄を統合した「スマートバー」
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NokiaのN810で動作するFennecのアルファ版
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また、セキュリティ機能も重視しており、サイトの証明書を表示する機能や、ポップアップブロック機能などを備えると説明。モバイルの分野で先行する他のブラウザに対しては、セキュリティ機能やアドオンへの対応など、他社がまだサポートしていない機能を備えることと、既に2億人のユーザーがいるFirefoxの知名度、60言語への対応を実現したオープンソースコミュニティの存在などが強みだとした。
Fennecは現在、Nokiaのスマートフォン「N810」向けのアルファ版が公開されており、デスクトップ環境での試用のためにWindows版、Mac OS X版、Linux版が公開されている。今後は、Windows Mobile対応版については、2008年末か2009年初頭にアルファ版のリリースを予定していると説明。現在公開しているアルファ版では800×480ドットの画面を想定しているが、QVGA版についても年末までに公開を予定しており、タッチスクリーンを搭載していないデバイス向けには次期バージョンで対応予定だとした。
また、iPhoneへの対応については、「先日、OperaがiPhone向けにOpera miniをリリースしようとしたが、却下されたという話だ」とコメントし、現状のiPhone SDKライセンスでは我々は開発できないと語った。
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コンテンツの表示例
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拡大表示したところ
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サイトの証明書表示機能
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ブラウザの機能を拡張するアドオンにも対応
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● Mozilla Labsで開発中のプロジェクト「Weave」「Geode」「Ubiquity」を紹介
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Mozilla LabsのAza Raskin氏
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Mozilla LabsのAza Raskin氏は、現在Mozilla Labsで開発中のプロジェクトから「Weave」「Geode」「Ubiquity」の3つを紹介した。
「Weave」は、複数のブラウザ間でブックマークや閲覧履歴、パスワードなどを同期できるオンラインサービスで、モバイル版のブラウザにとっても重要な機能だと説明。デスクトップのブラウザとモバイル端末のブラウザでこれらの情報を共有することで、PCで見たページがモバイル端末から見られるようになるなど、モバイル端末で面倒な入力を省略することにも役立つとした。
Weaveは現在、Mozilla LabsからFirefoxのアドオンとして提供されている実験的なリリースの段階だが、今後はどのような形でFirefoxに取り込んでいくかを検討するとともに、Fennecにも機能を搭載していきたいとした。
一方で、こうしたプライバシー情報をサーバー側に送信することになるため、情報はすべて暗号化して送信しており、情報を保管しているMozillaの側でも内容を見ることはできないと説明。どの情報を誰が閲覧して良いかといった決定権はユーザー側にあり、ユーザーが許可したユーザーのみに情報が開示されるとした。また、企業向けには、Weaveを利用してユーザー情報を自社で管理するためのサーバープログラムも提供していくとした。
「Geode」は、Firefoxに位置情報機能を組み込むアドオンで、位置情報を利用して地図を表示するといったアプリケーションの構築を可能とするものだ。Webブラウザの位置情報利用に関しては、W3Cの位置情報ワーキンググループで標準化作業が進められており、Firefoxにも今後この規格が取り入れられると説明。また、GeodeではWiFi情報から位置を特定するSkyfookの技術を採用しているが、このほかにもGPS機器があればそれを利用できるようにするなど、ユーザーには複数の方法を提供していきたいとした。
「Ubiquity」は、コマンドを入力することでWebサービスやコンテンツのカスタマイズか可能になるアドオン。UbiquityをインストールしたFirefoxで「Ctrl+スペース」キーを押すとコマンド入力欄が表示され、「map」「translate」などのコマンドを入力することで機能が利用できる。
デモでは、Gmailで本文の欄に入力した単語をドラッグで選択し、Ubiquityを呼び出して「map」コマンドを入力するとGoogleマップの検索結果が表示され、その地図をメールの本文に貼り付けるといった動作が簡単に行える例を紹介。このほか、Web中の選択した部分に「translate」コマンドを実行すれば、コンテンツ中の文章が翻訳されて表示されるなど、コンテンツ自体もカスタマイズすることが可能になる例を示した。
Raskin氏はUbiquityについて、「言語を使って人にとって自然なかたちでWebと接続していく」技術だと説明。現在はUbiquityは英語のみが対応しているが、今後はさまざまな言語に対応していくとした。また、コマンドは追加可能で、JavaScriptで数行書くだけで実現できるため簡単に開発できるとして、「現在、Firefoxのエクステンションは2000程度だが、Ubiquityによりその数を1000万以上にしたい」と語った。
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Geodeの対応例。日本のタウン情報検索サイト「30min.」
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Ubiquityのデモ。指定した文字列から「map」コマンドで地図を呼び出せる
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指定した文字列を「translate」コマンドで翻訳。コマンドは先頭の数文字でも認識される
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Ubiquityのコマンド例。「I love ramen!」と表示するだけの単純なものだが、簡単なコマンドなら数行で書けるという
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関連情報
■URL
Mozilla Japan
http://mozilla.jp/
Fennec alpha 1リリースノート(英文)
http://www.mozilla.org/projects/fennec/1.0a1/releasenotes/
Mozilla Labs(英文)
http://labs.mozilla.com/
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( 三柳英樹 )
2008/11/17 20:11
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