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代表取締役会長の登大遊氏。手にしているのは、エントリー向け「バリュープラン」で利用する回線終端装置
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ハードイーサの概要
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ソフトイーサ株式会社は11月25日、広域専用線サービス「ハードイーサ」を発表した。同社はこれまで、「SoftEther」「PacketiX VPN 2.0」といったVPNソフトの開発を手掛けてきたが、このサービスをもって電気通信事業に参入する。提供地域は、東京都と、茨城、千葉、埼玉、神奈川の各県のみ。販売は12月1日より開始する。
代表取締役会長の登大遊氏は、「PacketiX VPN 2.0は3.1Gbpsまで出せるが、100MbpsのBフレッツなど、あまり速くないブロードバンド回線が一般的で、VPNでは70~80Mbpsの速度しか出ない。またベストエフォートであるため、物理的な回線品質も保証されていない。広帯域、低遅延でVPNを使いたいという要望もあったが、当社だけではこういった課題は解決できず、月額料金は高くなるが、専用線や広域イーサネットを使ってくださいと案内するしかなかった」と述べ、現状の通信環境の問題点を指摘。ベンチャー企業でも利用できる価格帯のサービスがなかったために、「自社でサービスを展開しようと考えた」と説明した。
そのハードイーサでは、高速・高品質・低遅延の回線を提供でき、最低800Mbpsの通信速度を保証するという。実際の設備としては「敷設されたけれども余っている光ファイバを利用する」(登氏)とのことで、株式会社TOKAIをはじめとする複数の第一種電気通信事業者と契約し、光ファイバの提供を受ける。通信にはEthernet技術を利用するため、IPv4/v6、NetBEUI、AppleTalkをはじめレイヤ3のプロトコルはすべて利用可能なほか、VLANタグにも対応。またユーザー側には回線終端装置を設置し、インターフェイスは1000BASE-T×1が提供される。
特に、品質面に力を入れているのが特徴で、スループットは前述の通り常時800Mbps以上を保証。また、パケットロス率0.05%以下、通信遅延0.46ms以下(同一市内の場合、都県をまたがる場合では最大5ms)も保証され、これらのSLA(サービスレベル保証)に違反した場合は、規定に応じて料金を返還する。
● 必要とする信頼性に応じた3種類をラインアップ
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3種類のサービスタイプを用意した
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エンタープライズタイプの概要
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バリュータイプの価格の目安
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サービスメニューは3種類をラインアップした。バリュータイプとスタンダードタイプは1本の1Gbps専用線を用いるプランで、そのうちスタンダードタイプでは回線障害時のバックアップとして、実速度50Mbps程度のVPN回線もあわせて提供し、障害時には自動切り替えを行う。また最上位のエンタープライズタイプでは、主回線に加えてもう1本、コールドバックアップ用の1Gbps専用線を用意し、主回線障害時でも速度を落とさずに通信を継続できるようにした。このプランではさらに、万一2本の専用線が落ちてもVPNによるバックアップが提供されるので、高い可用性を備えているという。このほか、スタンダード/エンタープライズの両タイプでは、ソフトイーサの回線監視センターから遠隔監視を行っており、終端装置や光ファイバに障害が発生した際には、顧客からの連絡を受ける前に対応するとした。
ただし登氏は、「他社サービスは原則24時間365日の体制で、迅速な復旧体制を持っているが、当社では原則営業時間内のみの対応で、復旧目標も設定していない。SLA条件も、短い故障であれば他社の方が返金額が多い」と述べ、サポート体制が既存の事業者と比べて落ちるという点を強調。「通信速度などは技術上の仕組みでハードイーサが上回ることが多いものの、このサービスは本来、コストを削減しても2拠点間をつなぎたいお客さま向け。本当にミッションクリティカルな用途では適用できないのではないか」と述べ、メリットとデメリットを見極めた上で利用してほしいと呼びかけた。
登氏がメリットの1つとして挙げた価格は、月額費用と初期費用からなり、接続する拠点によってさまざま変わるが、「(月額費用は)既存事業者のサービスと比べて半分から数分の一の価格を実現した」(登氏)。初期費用は6~30万円で、別途配管費用などの「工事費等加算額」が発生する場合もある。月額費用は、例えばバリュータイプの場合、同一市内の場合で18~31万円、同一都県内では31~38万円、都県をまたがる場合は38~106万円。スタンダードタイプはバリュータイプより10万円ほど高く、またエンタープライズタイプはバリュータイプの1.6~2倍程度に設定された。最低利用期間は各プランとも1年間。開通までは、申し込み後14~60日かかるとしている。
なおバリュータイプには、初期費用が半額、月額費用が5万円引きになる「ベンチャー割引」、「アカデミック割引」の両プランも用意されており、中小企業基本法の小規模企業者に規定される企業や、法人設立日から3年未満の企業、教育・研究機関などはさら安価に利用できる。「ベンチャーでも高速回線を利用したいというニーズがあるが、資金的に、利益が十分に出せていなければ既存サービスは利用できない。高速な回線が必要な場合は、ハードイーサを安価に利用していただきたい」(登氏)。
販売目標は1年間で50~300契約、翌年が200~500契約。登氏は、「拠点間接続で多くのノウハウを持っているので、それを多くの人に提供したい」と理念を述べたが、「あくまでも本業はソフト開発」という立場は変えず、今後の事業を展開する意向である。
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料金は、ソフトイーサのWebサイトで見積もりが可能
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スタンダード/エンタープライズタイプで利用する回線終端装置
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サービスの発表会ではハードイーサのデモを実施。トラフィックモニタソフトを利用して、高速な通信が行えるということを実証して見せた
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関連情報
■URL
ソフトイーサ株式会社
https://www.softether.com/jp/
サービス情報
https://www.softether.com/jp/he/
料金見積もり
https://www.softether.com/jp/he/charge/
( 石井一志 )
2008/11/25 19:51
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