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日中版権ビジネス窓口となる日本法人「ゴールデンブリッジ」設立


 中国版権保護センター(Copyright Protection Center of China)は27日、都内で記者会見を開催。日本における中国版権保護センターの出先機関として、中国版権ビジネスの窓口となる日本法人「ゴールデンブリッジ株式会社」の設立を発表した。ゴールデンブリッジ株式会社は9月19日に設立、主要株主は中国版権保護センターおよびプラネットシンクジャパン株式会社。

 中国版権保護センターは、中国政府の国務院の中にある国家版権局直属の組織で、各種著作権登記、著作権関連の法律コンサルティング、著作権取引の代理窓口業務などを事業として行っている。


「日中の架け橋に」中国版権保護センター主任 段氏

中国版権保護センター主任 段氏
 記者発表会には中国版権保護センター 主任(正局)の「段 桂かん(だん・けいかん、“かん”は監の“皿”を“金”に変えた字)」氏が出席。段氏は、「著作権についてのニーズが高まっている一方で、著作権に関して、日中のコミュニケーションが非常に取りにくい現状は認識している」と述べ、「日本とのコンテンツビジネスにおける架け橋となる、著作権関連を扱う窓口企業を設立することになった」と設立の背景を述べた。

 具体的には、「日本の企業が協業する中国企業を積極的に探し、コンテンツを合作することで、共同して著作権の保護をしていこうと考えている」と述べ、日中協業してのコンテンツ制作を積極的に支援していきたいとの考えを示した。

 中国が、海外に著作権保護の出先機関を設けるのは日本が初めて。段氏は「ヨーロッパなどは、実際に視察に行ったが、まだ難しいと感じた。日本は地理的にも近く、歴史的文化的に共有しているものも少なくない。経済的にも密接な関係にあり、ニーズも大きいと判断した」とまず日本で設立することになった背景を述べた。

 発表会では、中国版権保護センターがここ1年で手がけた中で最も大きな成果としては、バンダイと中国の小白龍社との調停締結が紹介された。中国でもバンダイのガンダムのプラモデル商品は人気が高く、小白龍社をはじめ複数企業が類似商品を製造販売していた。中でも、小白龍社はガンダムのプラモデル類似商品を自社商品として意匠権登録を完了しており、バンダイが通常の法的措置で解決することは非常に困難だった。

 このケースで中国版権保護センターは、小白龍社に対して知的財産権の意識啓発や「模倣品で短期的に利益を上げるよりも正式な生産パートナーとして長期的利益を上げるべき」という説得を行った。この結果2008年10月に、ほぼバンダイの希望通りの「小白龍社がすでに所持していた意匠権の破棄」「小白龍社が所持する金型のバンダイへの引き渡し」「小白龍社の所持するパッケージおよびCADデータの引き渡し」という条件を盛り込んだ調停を締結するに至った。引き渡し作業も一部の金型引き渡し作業を残すのみで順調に進み、現在調停条項の8割ほどがすでに完了したという。


中国版権保護センターの事業内容 中国版権センターで扱った事例として、10月に調停を締結したバンダイと中国・小白龍社のケースが紹介された

小白龍社の陳社長。今後は日本のパートナーと協業してお互いに発展いきたいと述べた
 発表会にはガンプラの模倣品を製造販売していた小白龍社の陳 振かい(ちん・しんかい、“かい”は木へんに皆)社長も出席。「ここに来たのはまず誠意を示すため」として模造品製造について非常に間接的ではあるが反省の弁を述べた後、「今後は、生産パートナーとして相互に利益をもたらす関係を日本企業と結んでいきたい」と述べ、とくに「日本のアニメは世界でも最高のレベルにある。この日本のアニメ制作をパートナーとして手伝っていきたい」と、アニメ制作を積極的に請負っていきたいとの考えを示した。


森田氏「日本と中国では、ビジネスの考え方が根本的に違う」

ゴールデンブリッジ 森田社長
 ゴールデンブリッジ株式会社は、中国版権保護センターなどの出資により設立、中国版権ビジネスの窓口となる業務を推進していく。ゴールデンブリッジの社長には森田栄光氏が就任。森田氏は創価大学卒業後に北京大学で中国語を学び、旭通信社(現ADK)に入社。ADKと人民日報の合弁会社である国際広告有限公司、新華社と共同PRの合弁会社北京東方三盟交響関係策画有限公司、バンダイなどで中国とのビジネスを手がけてきた経歴を持つ。

 森田氏はまず、「中国と日本では顔は似ているがビジネスの考え方が根本的に違う。こうした文化の違いをお互いに許容し、尊重していかないと国家間ビジネスはうまくいかないのではないか」と述べ、距離的にも近く、顔も似ているが中国におけるビジネスは日本と同様にはいかないことを強調した。

 森田氏はまた、「中国から直接役人を派遣し、日本の企業に駐在させるということはこれまでなかったこと。日本と中国では考え方が違うので、中国版権保護センターの方が日本に来て、日本のコンテンツベンダーがどのようなことを考えているか、日本のニーズを直接くみ取ろうとしているのは中国政府の誠意の表れ」だと述べた。

 ゴールデンブリッジでは、中国における版権、商標権、意匠権、特許権などの知財関係の登録代理申請を行うが、現状はまだ人や体制を整えている段階で、実際にこうした業務を開始できるのは2009年春になる見込みだという。


ゴールデンブリッジ社設立の背景 ゴールデンブリッジ社の業務内容。知財登録については、2009年春から業務開始の見込みだという

質疑応答から~「ベルヌ条約加盟国で著作権登録する意味は?」

 発表会の質疑応答では、会場に参加していた経済産業省模倣品対策・通商室の担当官から「著作権の登録という話だが、中国もベルヌ条約に加盟していることから、著作権は登録をしなくても発生するという立場のはずだが、それを登録するメリットを教えていただきたい」との質問があった。ベルヌ条約では、著作権は創作時に発生し、登録や著作権表示などを必要としないという条項(5条2項)がある。これにより、加盟国間では著作権登録や表示をしなくても著作権は発生し、かつ保護される。

 これについて、ゴールデンブリッジの森田社長は、「必要はないというか、絶対にやらないといけないというわけではない」としながらも、「中国では、コンテンツは台湾や香港からも入ってくることもあり、版権はだれが持っているかが非常にわかりにくい。そうした状況の中で、中国においては『自分の著作権を登記する』と言っているのだが、実際に登記をすれば、“誰の子供なのかがよくわかる”ということです。登記しておけば、他の人間が商標権や著作権を侵害する商品やコンテンツを作っても、『あなたにその権利はないですね』と言いやすい」と述べ、登録をしておけば著作権ビジネスが効率的に進められるという実務面のメリットを強調した。

 また、経済産業省模倣品対策・通商室の担当官はあわせて、「中国版権保護センターの調停について、日本の民事訴訟のような法的効力はあるか」「中国での特許出願は弁理士しかできないはずだが、ゴールデンブリッジ社内に中国のそうした資格者を置くのか」について質問。

 これらの質問に対しては森田社長が回答。調停の法的拘束力については「法的拘束力はない。中国版権保護センターは司法当局ではないので、調停の当事者の意見を伺いながら、調停にしたほうがいいのか訴訟がいいのかということも含めて、コンサルティングしていくことになる。ケースによっては、代理訴訟という形でやらせていただくこともあるだろう。中国版権保護センターは裁判所の方々とも密接な交流を持っているので、裁判官のご意見も伺いながら進めていきたいと考えている」として、法的拘束力はないが、そうした解決が必要な場合は訴訟を支援していく解決法を示した。

 また、弁理士については「当面は置く予定はないが、今後必要となれば弁理士資格を持つ人間の常駐も検討する」と述べた。


関連情報

URL
  ゴールデンブリッジ(現在準備中、11/27夕開設予定)
  http://www.golden-bridge.co.jp/


( 工藤ひろえ )
2008/11/27 16:09

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