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総務省の違法・有害情報対応検討会、最終報告書をとりまとめ

児童ポルノの位置付けなどに多数のパブコメ

鳩山邦夫総務大臣
 総務省は14日、「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の第10回会合を開催し、最終報告書をとりまとめた。総務省が今後推進する「『安心ネットづくり』促進プログラム」の骨子となるもので、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(青少年ネット規制法)が施行される2009年4月1日から2011年度までに講じるべき施策を提言している。16日に同省のサイトで正式に公表する予定だ。

 報告書では、1)違法有害情報対策の基礎となる法制度などの側面での「安心を実現する基本的枠組の実現」、2)「民間における自主的取組の促進」、3)ITリテラシー向上のための「利用者を育てる取組の促進」――という3本柱で、官民におけるこれまでの違法・有害情報対策の状況を整理するとともに、新たに必要となる対策を挙げている。例えば、2)では、従来のISPにおける違法情報対策ガイドラインや、違法・有害情報の通報窓口であるインターネット・ホットラインセンターの取り組みなどに加え、企業や個人が広く参加し、違法・有害情報対策に取り組むための「自主憲章」の策定、レーティングの実証実験、ブロッキングによる児童ポルノ対策の実証実験などが今回議論され、盛り込まれている。

 第10回会合の最後には、鳩山邦夫総務大臣も出席してあいさつを述べた。「インターネットをはじめ、科学技術には光と影がある。科学技術が進歩することで、逆に人間の大切な部分が失われることは避けなければならない。子供たちが適切な時と場で、インターネットや携帯電話を安心して利用できるように、保護者や教育機関はもとより、社会が総掛かりで教育するとともに、安心・安全なインターネット環境を整備することが重要」とコメント。総務省では、検討会の最終報告書を踏まえながら「『安心ネットづくり』促進プログラム」を速やかに策定し、今後実施する具体的な施策を示すとした。

 また、2008年6月、鳩山氏の法務大臣時代に東京で開催されたG8司法・内務大臣会議において、主要な議題の1つとして、インターネットなどを使ったID犯罪を取り上げたことにも言及。「まるで行政機関のようなネットワークを作り、そこに落とし込むという、オレオレ詐欺や振り込め詐欺とは全くけたの違う高度で巧みな詐欺技術を使った犯罪が世界的に拡大しているというのが主要なテーマだった。たいへん怖いことだ」と述べ、今後、こうした犯罪への対策でも協力を求めることがあるとして、引き続き協力を呼び掛けた。


児童ポルノの位置付けなどに多数のパブコメ

「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」第10回会合
 第10回会合は当初、2008年12月24日の開催が告知されていた。しかし、11月下旬から3週間にわたって募集した最終報告書案へのパブリックコメントで想定していたより多くの意見が寄せられたため、整理に時間がかかり、年明けまで延期された。

 事務局である消費者行政課の二宮清治課長によると、違法・有害情報対策は一般のインターネット利用者からの関心が高く、「総務省としても容易に規制を導入するのではなく、慎重に検討してきたつもりだったが、特に個人の方から、より慎重な対応を求める意見が多く寄せられた」という。

 パブリックコメントの結果は、個人からが82件、法人・団体からが7件。法人・団体としては、インターネット先進ユーザーの会(MIAU)、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)、関西経済連合会、福岡県などが意見を出した。

 総務省では、寄せられた意見に「できるだけつぶさに対応した」(二宮課長)という。パブリックコメントの対象となった最終報告書案の段階と大きな変更はないものの、各意見に対して総務省の考え方を説明するとともに、技術的な説明の不備の修正や不適切な事例の削除のほか、多くの意見が寄せられたという児童ポルノに関する部分では、補足説明を追加するなどの反映を行っている。

 例えば、最終報告書案において、児童ポルノを「社会的法益侵害情報」として扱っていた点に対して、児童ポルノ禁止法のそもそもの目的が児童の人権を擁護すること(個人法益)であり、「権利侵害情報」として扱うべきとの意見が多く寄せられた。

 これに対して総務省では、確かに児童ポルノ禁止法では、児童の権利侵害という側面を重視しているが、「同時に、同法は、児童を性欲の対象としてとらえることのない健全な社会を維持するという社会的法益の保護をもその目的としているものと考えられる」と回答。また、違法情報の類型の整理にあたって、名誉毀損情報や著作権侵害情報などと同じ類型として扱われてこなかった経緯や、最終報告書案においても「被害児童が存在するため権利侵害の側面もある」点や「被害児童保護の要請により、インターネット上の児童ポルノ対策は喫緊の課題」と位置付けているとして、権利侵害の側面を否定・軽視しているわけではないと説明している。

 ただし、多くの指摘があったことから、誤解を与える恐れが高いとして、上記のような説明を追加した。また、健全な社会を維持するという目的があることについても、児童ポルノ禁止法改正案の発議者の1人である円より子参議院議員が過去の委員会で説明した内容を引用して裏付けている。

 このほか、ACCSからは、権利侵害情報への対策に関して、「Winny」などのファイル共有ソフトによる著作権侵害に対して、法制度の検討や実務上の問題点の解決で総務省に積極的な協力を求める意見も寄せられた。


関連情報

URL
  インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/index.html

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( 永沢 茂 )
2009/01/14 17:06

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