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GPS+カメラ+αでサイクリングの記録を残す、画期的なガジェット「INOU」


INOU本体

 自転車乗りは「ログ」が命。というと大げさかもしれないが、せっかくロングライドして帰宅した後、サイクルコンピューターのデータが吹っ飛んでしまって意気消沈という経験をした人ならば、その気持ちをわかってくれるかもしれない。走行データは努力の証。その記録が水の泡になってしまったときの呆然さを忘れないようにするため、サイクリストはガジェットに重きを置くのだ。そして一日走ったログを肴に、酒を飲めるようになったら一人前の自転車乗りだ。

 また、移動先で目にとまった印象的な風景を、写真や動画に残したいという願望を持つ人も多い。走行中はカメラやビデオを構えるのが困難だし危ない。そこで車載、あるいはヘルメットにカメラを装着して、ツーリング中の光景を記録することもある。しかし、路面の安定しないところではガタガタの画になり、せっかくの苦労がショボイものになることも……。チャレンジャーたちは、いくつも改良を重ねてベストなショットを目指すが、なかなか難しいのが現状である。

 今回紹介する「INOU」は、そうしたログ好き+ビジュアルチャレンジャーの融合を狙った画期的な新製品である。GPSが連動され、サイクリングの動向がすべて記録されるマジックボックスだ。自転車パーツでおなじみの株式会社キャットアイが開発・販売している。最初に説明しておくと「INOU」とは、かの伊能忠敬の名前からとられた。文明が未発達な江戸時代、足と知恵で日本の国土を測量した偉人の名を冠された、この新ガジェットの魅力をお伝えしよう。

走りながらも撮れるシンプルな操作性

INOU本体を自転車のハンドルにマウントしたところ

 ざっくりと説明すると「INOU」は、手のひらサイズの本体、WindowsおよびMac向けソフト「INOU Sync」、ウェブサイト「INOU Atlas」の3つがリンクし、サイクリングで走ったルートの情報を記録&公開できるコミュニケーションツールである。走行中の道や景色の写真/動画をボタンひとつで写せ、位置情報まで記録される。これを専用アプリでサイトに公開することで、さまざまな人に見てもらえ、あるいは他人がたどったルートを共有することもできる。IT時代のサイクリングSNSとも言えるシステムだろう。

 操作は簡単だ。まず自転車のハンドル、もしくはヘルメットに「INOU」本体をマウント。このマウントブラケットはキャットアイのライト装着に使われる汎用パーツで、手堅さを誇っている。次にトリップを記録するには、電源をオン。しばらくするとGPS捕捉のランプが点滅する。あとは走り始めるときに電源ボタンを再度押す。これでライド開始だ。

 試しに自宅のある東京都府中市から高尾(八王子市)を抜け、神奈川県との堺にある大垂水峠を目指してみた。途中の幹線道路で撮影開始。写真はボタンを押すだけで撮影可能だ。ランプが緑に光り、ピーッというブザー音で知らせてくれる。最初は押す案配がよくわからず、長めに押してしまって自動撮影モードに入ってしまうことがあった。自動撮影は1分〜10分間隔で、ボタンを押さずとも写真を撮影してくれる機能。いちいちボタンを押す余裕がないときに重宝するものだが、さすがに1分間隔は多すぎると思い、マニュアルで操作することにした。

 動画撮影は別ボタンをワンプッシュ。記録している間はやはりランプが緑に光り、1分ごとにブザー音で知らせてくれる。撮影終了時は再度ボタンを押せばいい。すべてのトリップが終われば、電源ボタンを押して記録を停止。再度、長押しして電源を切る。操作方法はこれだけ。非常に簡易で、初めての人でもすぐにマスターできるはずだ。

荒れた路面にもグラグラしない安定性

ウェブサイト「INOU Atlas」のトップページ。ユーザーがアップしたログを閲覧できる

 幹線道路で目についたポイントを写真撮影しながら、いよいよ大垂水峠へ。ここからは動画を試してみようと思い、登坂〜ダウンヒルを撮影してみた。いつも思うのだが、この大垂水峠の道はアスファルトが荒れていて、動画撮影に耐えられるか……と若干の心配があった。結果は後ほどお見せするが、不安は当たらなかった。非常にスムーズに映像が流れ、路面の衝撃にも強い。

 以前、某社の車載ミニDVカメラを付けて試走したことがあったが、そのときは再生時、めまいを起こしそうなほどの「酔い映像」だった。おそらくマウントの弱さが原因だろう。しかしこの「INOU」の映像はブレが少なく、安定感がよい。むしろライダー(筆者)の実力不足によるハンドルの揺れが気になった。撮影時には、コースラインをきっちりなぞることがキレイな動画を撮る秘訣かもしれない。

 さて、自宅に帰り、今度はログをPCに移植。夏の汗にひたったジャージも脱がず、筆者は作業に移る。こうしたところが「自転車乗りはログが命」の所以である。まず「INOU Atlas」にて会員登録を済ませておこう。本体からログ保存用のmicroSDを取り出して、PCに接続。「INOU Sync」を立ち上げて、データ取り込みメニューをクリックすれば自動にログが吸い出されるようになっている。

 それが完了すれば、次は撮った写真や動画の整理。必要な画と不必要な画を選択する。動画をアップするときに必要なYouTubeアカウントも取得しておこう。あとはその後「INOU Atlas」へアップロードするだけ。データサイズや回線の都合で、少し時間がかかることもあるが、そういうときはシャワーでも浴びてこよう。その間、オートマティックに、あなたのログは驚きの姿に変換されているはずだ。

走って撮った記録を、地図とバーチャルサイクルコンピューターで確認

 「INOU Atlas」にアップロードされたログは、ライドの軌跡がGoogleマップ上に描かれ、途中で撮った写真と動画が自動的にスライドショーとして閲覧できる仕組みだ。軌跡上のカメラとビデオのアイコンをクリックしても、その地点の画が表示されるようになっている。思った以上に画質がいい。当初はもっと簡素な画質かと舐めていたが、PCで閲覧する限り、まったく問題はない。

府中〜高尾〜大垂水峠のログ

 さらに驚いたのは、マップ右下の「グラフ表示」をクリックしたとき。なんと、バーチャルサイクルコンピューター(サイコン)があらわれて、地図上のアイコンが動きながら走行スピード/標高/距離/経過時間が再現されるようになっている! さすが自転車パーツで名高い、キャットアイらしいアイデアに驚いてしまった。こうした機能はINOU Atlasにアクセスして、公開されているログを実際に閲覧するとよくわかる。

グラフ表示を押せば右上にあらわれるバーチャルサイコン。合わせてルート上をアイコンも動く

 次に試してみたのは、筆者のトレーニングコースである多摩川サイクリングロードだ。雨の日以外はほぼ毎日走っているルートだが、あらためて「INOU」で記録してみた。それもなかなか楽しいログになっている。普段、見慣れた光景も、こうして見てみると感慨深い。景色と合わせ、前述のバーチャルサイクルコンピューターで「ああ、このあたりは風が強くて速度が遅いな……」など、さまざまな確認ができて楽しくなってしまった。こうした日常のログも乙なものである。

多摩川サイクリングロードのログ

 褒めてばかりだが、 ちょっと高い値段(2万6250円)を置いておいても、 仲間とのツーリングやポタリングに最適なガジェットではないだろうか。気になるランタイムは単4電池2本で約6.5時間。自動撮影や動画撮影が長くなると、その半分とみてよい。しかし手軽に用意できる電池だから、予備を持っておけばロングライドにも十分対応するだろう。夜間の撮影にも十分対応する。今回ナイトランはしなかったが、トンネル内での撮影も問題なし。GPSの掴みもよく、300mほどのトンネルで電波をロストするかと思いきや、そんなことはなかった。

 今回の試走で感じたことは以上だが、最後にリクエスト。アップロードされた写真や動画にコメントをつけられるような機能ができたら、走ったほうも記録が充実するし、閲覧するほうにも親切なのではないだろうか。これほどコンパクトな「GPS+カメラ+α」なガジェットを可能にしたのだから、さらなる進化を期待したいのだ。

製品概要
サイズ 96.5×70×37.5mm(縦×横×高さ)
重さ 150g(電池、ブラケット、microSDカードを含む)
GPSログ情報 5秒間隔
記録画素数 解像度640×480画素(VGA) 30 /15fps
自動撮影間隔 1分、2分、5分、10分(専用ソフト「INOU Sync」で設定)
記録媒体 microSDカードHC(32GBまで対応)
電池 単4形アルカリ乾電池/充電池×2
電池寿命 連続トリップ記録時間:約6.5時間(自動撮影を併用した場合:約6時間)
付属品 microSDカード(1GB)、単4形電池、H-34Nフレックスタイトブラケット、ヘルメットマウントブラケット
INOU Syncの対応OS Windows 7/Vista/XP SP3、Mac OS X 10.4以降(Intel Macのみ)
希望小売価格 2万6250円(税抜き2万5000円)

関連情報

2011/8/19 06:00


増渕 俊之
 愛車スペシャライズド・アレーに乗り、多摩サイや尾根幹に出没するフリーランスの編集&ライター。定期媒体は『MdN Design Interactive』『宝島』『自転車人』など。編著に『これがデザイナーへの道』『自転車ファンのためのiPhoneアプリガイド』がある。