趣味のインターネット地図ウォッチ

金沢市の今昔を比較できる地図アプリ「古今金澤」、古地図上にくずし字で記載されている寺社名や武士名の表示・検索にも対応

 石川県能美市のアプリ/システム開発会社である株式会社エイブルコンピュータは、金沢市の古地図と現在の地図を見比べられるiOSアプリ「古今金澤」をリリースした。App Storeから無料でダウンロードできる。

 古地図と現在の地図を上下の画面で同時に閲覧・比較可能。収録している古地図は、石川県立図書館が所蔵する「寛文7年金沢図」(1667年)で、これは現存する最古の大型絵図とのこと。エイブルコンピュータは同図書館から絵図画像データの提供とアプリでの利用許可を得た上で「古今金澤」を開発した。

 同アプリでは、端末内蔵のGPSによる位置情報を利用して、古地図上に現在地を表示させることができる。古地図と現在の地図を重ねたときの位置のずれについては、独自の位置補正エンジンにより補正している。補正のための位置データは、金沢工業大学の増田研究室との共同研究によるものだという。

「古今金澤」起動画面
「寛文7年金沢図」を収録
地図上で現在地を表示

 同アプリならではの特徴として、古地図上のくずし字を長押しすることで、記載されている名前を表示する機能を搭載している。古地図にくずし字で記載されている寺社名や人名での検索も可能で、検索結果は現在の地図と古地図上に表示される。さらに、金沢の地名の由来や逸話などがまとめられている百科事典「金澤古蹟志」の情報も解説として収録しており、同書に記載された場所を検索して内容を表示することも可能だ。

 このほか、古地図と一緒に写真を撮影する機能も搭載している。現在の風景と、同じ場所の古地図を一緒に写真に収めることにより、今と昔の状態を比較することができる。

古地図上のくずし字が、何と書かれているか表示できる
施設を選んで解説を見られる
解説として「金澤古蹟志」の情報を収録
古地図と一緒に写真を撮影する機能も搭載

 エイブルコンピュータの代表を務める新田一也氏によると、「古今金澤」を開発したきっかけは、ネットで藩政時代の金沢城下絵図を見つけたことだったという。身近な道が350年以上前から残る道であったり、よく行くカフェは有名な侍が住んでいた場所だったりと、そこにはさまざまな発見があった。

 「何度も古地図を見ているうちに、古地図の上に今いる場所が表示できれば街歩きがもっと楽しくなると思い、『古今金澤』を開発しました。この楽しさをたくさんの人に感じていただければと思い、エイブルコンピュータ創立20周年の地域貢献として無償提供することにしました。」(新田氏)

 今後の抱負については、「さまざまな年代ごとの古地図を搭載して、街の変化が視覚的に分かるようにしていたいですね。また、テーマを決め、ルート作りやポイントの解説を出せるようにして、古地図を見ながらテーマに沿った散策ができるような仕組みを作りたいと思います」と語る。金沢やその近隣に住む人はもちろん、観光や出張で金沢を訪れる人なども、このアプリをぜひ使ってみてはいかがだろうか。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。