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1600年分の災害事例を地図上で調べられる「災害年表マップ」、防災科研が公開
2016年9月15日 06:00
災害事例の分布や発生頻度を視覚的に把握
NIEDでは、災害事例を全国一律に俯瞰することを目的として、「災害事例データベース」の構築・整備を2009年に開始。データベースには、416年から2013年まで約1600年分・約5万レコードの地震災害や火山災害、風水害、斜面災害、雪氷災害の情報を収録している。
今回公開した「災害年表マップ」は、同データベースを可視化して、過去の災害事例の分布や、年ごとの発生頻度などを視覚的に把握できるようにすることを目指したもの。2011年3月に初めての試作品が完成し、現在の形に落ち着いたのは2015年5月。その後、改良を進めて、今回、正式に公開された。災害規模などの事例の詳細は、添付の「事例カルテ」で閲覧することが可能だ。
背景地図は国土地理院の「地理院地図」を使用しており、上部の年表のスライダーを左右に動かして西暦を選択すると、発生した災害事例の種別ごとに色分けされたアイコンが表示される。アイコンの種類は「地震災害」「火山災害」「風水害」「斜面災害」「雪氷災害」「その他気象災害」の6種類。同年に複数発生した場合はその年における最後の災害の種別が示される。また、複数の災害が組み合わさっている場合は、アイコンにも複数の色が付いている。表示されるアイコンは県別または災害種別で絞り込むこともできる。
アイコンをクリックすると災害の詳細情報ウィンドウが表示される。ここでは、出典資料を発行している自治体や発生当時の自治体、災害名称、発生日時、被害内容、出典資料名などさまざまな情報が表示される。また、右下の「災害事例カルテ」をクリックすると、詳しい情報がまとめられたPDFを取得できる。
自治体が保有する地域防災計画から災害事例を収集
同マップのもとになっている災害事例データベースの情報は、主に市区町村が保有する「地域防災計画」が出典で、基準となる市区町村は2013年1月1日時点の1742市区町村。NIEDの担当研究員(臼田裕一郎氏、鈴木比奈子氏、内山庄一郎氏)によると、すべての自治体に手紙と電話を併用して情報提供を依頼し、出典資料の収集には6年もかかったという。現在の収集資料数は約4000だが、すべての資料に災害事例が掲載されているわけではないため、掲載内容の確認をしながら入力をしている。収集資料の中には自治体が合併する前の資料も含まれているため、過去の自治体名称も調べつつ、文献の整理作業を行った。
「災害情報の抽出は、資料の形態が表や文章などバラバラで、機械的な入力が困難なため、1レコードずつ手作業で入力しています。入力の手引書は50ページ程度あります。地図上で正確に情報を表示するためには、データベースの入力を正確に行う必要があり、特にカギとなる発生年月日、発生自治体名称、旧自治体名称、災害種別は細心の注意を払って入力を行っています。入力も大変ですが、データの検査も非常に苦労しました。」(NIED担当研究員)
現在は地域防災計画が主要な出典資料となっているが、今後は各市町村で独自に作成されている市区町村誌や災害誌なども対象に整備を進めていく予定だ。
なお、災害年表マップでは、災害発生地点を「出典資料発行元の市区町村」としているので注意が必要だ。これは、災害事例のデータ収録を市区町村ごとに行っていることに加えて、現在の出典資料の記載だけでは「災害発生場所」を正確に特定することが困難なため。出典資料に掲載される災害は、利用者に自分の町に関係がある災害だと知ってもらえるように、発生場所が極端にかい離している場合や、参考情報として掲載されている災害などを除いては、時代は関係なく入力をすることにしている。NIEDによると、今後は災害が影響した範囲や過去の市区町村単位での表示などにも取り組んでく予定だという。
災害年表マップで使用したデータはウェブ開発者向けにAPI配信も行っている。また、災害事例データベース本体のデータ公開も2017年度中に予定している。