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第138回:地理空間情報のイベント「G空間EXPO 2012」を見てきました


 地理空間情報をテーマとしたイベント「G空間EXPO 2012」が6月21日から23日までの3日間、横浜市のパシフィコ横浜にて開催された。このイベントは2010年9月に開催された第1回に続き2回目となる開催で、地図や測量、GIS、ナビゲーション、位置情報サービスなど地理空間情報に関するさまざまな業界の企業に加えて、国土交通省や国土地理院、経済産業省、JAXA、大学の研究室などが幅広く参加。産・官・学が集結したイベントとなった。

開会式

 展示会は測量機器や位置情報ソリューション、GIS、3Dマッピングシステムなどビジネス寄りの話題が多めだが、コンシューマーの視点から見て興味深い出展も少なからず見られた。まず注目されたのが、屋内測位技術「IMES(Indoor MEssaging System)」を紹介する「IMESコンソーシアム」のブース。前週に幕張メッセで開催された「Location Business Japan(LBJ)」と同様、実証実験で募集したIMESのアプリキャンペーンの応募作品が発表された。このコンテストは二子玉川ライズにて開催されたもので、同施設に設置されたIMES環境を使って開発されたアプリや技術が寄せられた。

IMESコンソーシアムのブース IMESアプリ開発キャンペーン

 さらにLBJと同様、会場内の各所にIMES送信機が設置され、IMES体験イベント「バーチャル世界ツアー」も行われた。これはIMESの受信機とAndroidスマートフォンを借りて、会場内にあるIMES送信機の設置場所を巡りながらスタート地点で選択した国を探し出すというルール。探し当てた人には景品がプレゼントされた。

「バーチャル世界ツアー」のブース 会場内に設置されたIMES送信機
IMESの受信機 Androidスマートフォンで場内のIMES送信機の場所を確認

 体験イベントとしてもうひとつ注目されたのが、屋内歩行者向けのナビサービス。加速度センサーや電子コンパスなどを組み合わせて屋内での相対位置を求める「歩行者デッドレコニング(PDR)」技術を使い、屋内3Dモデルと体験者の位置や向きをタブレット端末に表示するデモが行われた。PDR技術はIMESやWi-Fi測位などほかの屋内測位技術と組み合わせての実用化も研究されており、今後の発展が注目される。

PDRのセンサー 移動した軌跡が3Dマップ上に描かれる

 このほか、災害時の帰宅支援マップ検索システムの実演やGIS体験コーナー、自分の歩幅を調べて実際に歩いて距離を測る歩測体験コーナー、2枚の写真を立体視で見ながら間違い探しをするコーナーなどさまざまな体験コーナーが用意されていた。

GIS体験コーナー 歩測体験コーナー

 屋外では、音響測深機を搭載した自律測線走行無人リモコンボートの体験デモや移動体GPS測量(モービルマッピング)機器による屋外試乗体験、放射線測定器付きGNSS測量機「ホットスポットナビ」の実演などが行われたほか、準天頂衛星のLEX(L-band experiment)測位の体験コーナーも設置され、GPSに比べて準天頂衛星によるLEX測位がどれくらい高精度なのかを体験できるようになっていた。

自律測線走行無人リモコンボートの体験デモ 移動体GPS測量機器の屋外試乗体験
準天頂衛星のLEX測位の体験コーナー 青の軌跡が従来のGPSで取得したもので、赤がLEX測位

 民間企業の展示ブースでは、国際航業株式会社のシームレス位置情報連動型情報配信サービス「ぶらサポ」や、株式会社ゴーガによるGoogle EarthをKinectで操作するシステム、キャンバスマップル株式会社のカーナビソフトや株式会社マップル・オンのアプリ紹介コーナーなど、ソフトウェアやサービス、ソリューションの紹介が行われたほか、株式会社グランマップが発売したベクトル/ラスターのデュアル地図データ搭載の登山用ナビ「山ナビ」や、株式会社イメージワンのUAV(無人航空機)など、さまざまなハードウェアを展示していた。

国際航業の「ぶらサポ」 Google EarthをKinectで操作
キャンバスマップルとマップル・オンの展示 イメージ・ワンのUAV
国土地理院が展示した電子基準点のポール 放射線測定器付きGNSS測量機

 展示ホール中央のコミュニティゾーンでは、国土地理院の主催による「電子国土賞」の表彰式を開催。モバイル部門では、明治初期から現代までの地図を見比べられるiPhoneアプリ「東京時層地図」、PCソフト部門では山岳展望を楽しめる「カシミール3D」やGISソフト「地図太郎」、コンテンツ部門では明治初期に作成された「第一軍管地方二万分一迅速測図」を現在の位置情報と重ね合わせて見られる「歴史的農業環境閲覧システム」などが選ばれた。さらに「電子国土功績賞」として、電子国土や数値地図を見られるiPhoneアプリ「Field Access」やESRIジャパン株式会社の「ArcGIS Desktop」なども受賞した。受賞結果の詳細は国土地理院のサイト(http://www.gsi.go.jp/gijyutukanri/gijyutukanri60006.html)を参照のこと。

電子国土賞の表彰式 電子国土功績賞を受けた「ArcGIS Desktop」

ユニークなアイデアや研究成果が集まった「Geoアクティビティフェスタ」

 展示会と並んでもうひとつ注目されたのが、地理空間情報の活用に関するユニークなアイデアや活用事例、研究成果などの展示やプレゼンテーションを行う「Geoアクティビティフェスタ」だ。こちらは講演会やシンポジウムが行われた2階ホールの前が展示スペースとなり、計21の展示が行われた。企業や大学の研究室だけでなく個人による参加者もおり、22日のコアタイムには展示スペースでプレゼンターによる実演が行われ、多くの人の注目を集めていた。

Geoアクティビティフェスタの展示スペース Geoアクティビティフェスタの発表会

 コアタイムとは別にホールで発表会も行われ、審査員の前で各展示につき10分間でプレゼンテーションが行われた。この結果、優秀賞5作品、最優秀賞1作品が選出された。受賞した作品は以下の通り。

【優秀賞】

カンタンマップ for iPad(あっとクリエーション株式会社)
 使い慣れた地図をiPadに入れられる現地調査・施設管理アプリ。

沖縄の防災における地理空間情報の活用例(GIS沖縄研究室 渡邉康志氏)
 沖縄における防災・減災情報を基盤地図情報やフリーのGISソフト、Google マップなどを組み合わせて構築。

トリアージ情報共有を目的としたWebGIS情報配信システム(新潟大学工学部情報工学科・牧野秀夫氏)
 災害現場や建物内から傷病者のトリアージ情報を送信し、Web GISで共有するシステム。

手持ちのExcelデータを簡単にGoogleマップとリンク。地図管理への第一歩〜営業リスト見える化ツール〜(株式会社デバイスワークス)
 Excelデータの住所情報を緯度・経度に変換してGoogle マップ上に表示するツール。

時空を越えた地図共有サービスの提案(大塚恒平氏)
 旧版地形図や古地図などの地図画像を投稿してウェブ標準仕様のタイル地図化を行って共有できるサービス。

【最優秀賞】

地理空間情報ボランティアを支える枠組みの提案(NPO法人LISRA設立準備委員会/名古屋大学・河口信夫氏)
 iPhoneアプリ「駅.Locky」の経験を生かして、身近な位置情報サービスの実現を目指し、地理空間情報ボランティアを支える枠組みとしてNPO法人位置情報サービス研究機構(LISRA)を10月に設立予定。

受賞者および審査員

「ジオメディアサミット」をはじめとした講演・シンポジウムも開催

 展示会と並んでさまざまな業界の講演やシンポジウム、研究発表会などが多数開催された。これらの中から、主なプログラムを紹介する。

G空間WAVE 2012 ジオメディアサミット

 今回で9回目を迎える国内最大の位置情報メディア向けフリーコンファレンス。位置情報メディアのマネタイズやO2O、ゲーミフィケーションなど、これまでマーケティング寄りの話題をテーマにしてきた同イベントだが、今回は技術をテーマに開催。最初にライトニングトークとして、位置情報コンテンツの開発を支援する「HeartRails Geo API」および「HeartRails Geo Express」、ゼンリンデータコムによる「人を軸に店を探すグルメサービス」、動画配信と位置情報を連携させる「Geo Jackkas」、ウェブ業界とGIS業界とを橋渡しする「Web時代のGIS技術勉強会」、IMESを活用した屋内位置情報ゲーム「ニコタマコレクション」、株式会社らしくによる商店街・地域生活情報アプリの紹介、セーフロケーションプラットフォーム「ZONE」の7つが発表された。

 続いて株式会社頓智ドットの井口尊仁氏が新サービス「tab」を紹介した。tabは興味関心をとらえて現実に行動へ移すための雑誌のようなツール。ショップやレストラン、料理、グッズなどをアイテムとしてお気に入りに登録(tab)しておくことで、その周囲へユーザーがやってきたときに認知を促す。例えば、お気に入りの自転車が会社の近くのショップに入荷したり、たまたま降り立った駅に、以前友だちに教えてもらった評判の店があったことなどを確認することができる。tabしたアイテムはカテゴリ別に並べられるほか、バーズビューの地図上でも探せる。

 次にNTTレゾナント株式会社の澤村正樹氏が位置情報サービス「PinQA」を紹介。ロケーションベースのQ&Aサービスとして始まったPinQAだが、位置情報らしく眺めるだけで楽しいビジュアルで、それを見て行ってみたいと思えるサービスとして今年3月にリニューアルしたことを紹介。その上で、位置情報サービスが抱える課題として、エリア名と区分の問題や地図のインターフェイスが画一的であるといった点を述べた。

ジオメディアサミットのライトニングトーク 頓智ドットの新サービス「tab」の紹介

 最後に行われたのは、マップコンシェルジュ株式会社の古橋大地氏の司会による「ジオ大喜利」。登壇した2名に、JAXAの武藤勝彦氏やKDDI株式会社の高木悟氏、ヤフー株式会社の河合太郎氏、ジオアクティビティフェスタで受賞した大塚恒平氏が加わった合計6名で、「3年後のウェブ地図のメインストリームは誰か?」「自分がジョブズだったらAppleジオチームになんと言う?」「こう料理するともっと面白くなると思う技術は?」など、さまざまなお題にフリップの書き込みで答えた。

ジオ大喜利

震災に備えてG空間情報を有効活用する仕組みをどう作るか?(主催:GIS学会、共催:東京大学空間情報科学研究センター)

 東日本大震災における地理空間情報の利用について、防災科学技術研究所の長坂俊成氏や浦安市の醍醐恵二氏が事例や課題を発表。さらにJR東日本コンサルタント株式会社の小林三昭氏が「ライフライン・交通事業者における地理空間情報の利用」について、NPO法人ITS Japanの八木浩一氏が東日本大震災や2011年9月の台風12号の災害におけるカーナビゲーションのプローブ情報利用について発表。自動車の通行実績・道路規制情報の提供について語り、「平常時にしっかり機能している仕組みを災害時にうまく転用する 」「緊急期、応急期、復旧期に応じた道路交通情報を収集・共有・配信する」など、ITS Japanの7つの提言を紹介した。さらに、東京大学・空間情報研究センター/マップコンシェルジュ株式会社の古橋大地氏が、復興支援プラットフォーム「Sinsai.info」の活動や、現地情報を集める「情報レンジャー」などを紹介した。

 次に東京大学・空間情報科学研究センターの柴崎亮介氏が司会となり、パネルディスカッションを実施。各講演者に内閣府・防災情報システム官の前田安信氏を加えた6名が、災害時に必要なデータをいかに集めるかといった問題や、信頼性と鮮度のバランスなど、さまざまな課題について活発に意見を交換した。

GIS学会によるシンポジウム

場所情報コードの利用技術に関する共同研究報告会

 国土地理院が推進している新たな位置情報基盤「場所情報コード」の利用に関する研究報告会。場所情報コードとは、ある場所に固定されたモノを識別し、必要な情報を結び付けるためのコードで、「ucode」に準拠している。報告会ではこの場所情報コードについて、自治医科大学キャンパスで行われた実証実験や株式会社リプロが被災地に設置したICタグ機能付きの「復興情報杭」、山梨県小菅村で行われた森林・山村域における場所情報コードの実証実験などについて発表された。

 次に場所情報コードの設置や管理における測量業界の役割について日本測量協会の津留宏介氏が講演。さらに場所情報コードの拡張コードである「詳細位置情報」について慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の春山真一郎氏が講演を行った。春山氏はこの中で、可視光通信による屋内ナビゲーションやスーパーマーケットでの情報配信、動線調査、ロボット位置制御、位置自動計測システムなどの事例を紹介した。

 このほか、日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の坂下哲也氏が、二子玉川ライズに設置したアンカーポイントに場所情報コードを付与した実験を紹介するとともに、屋内地図や屋内測位との連携の課題について語った。最後に国土地理院・測地技術調整官である山際敦史氏が、場所情報コードの今後について解説。共同研究の成果を受けて国土地理院では、場所情報コード発行や管理システムの構築、位置情報基盤整備ガイドラインの策定などを実施中であると語った。

場所情報コードに関する研究報告会

G空間WAVE 2012 gコンテンツワールド

 ソフトバンクモバイル株式会社の情報システム・CS統括情報システム本部の永瀬淳氏が、準天頂衛星「みちびき」とIMESによる屋外・屋内シームレス測位実証実験について報告。北海道の網走監獄博物館を舞台に実施された場内スタンプラリーなどのレポートなどを紹介しながら、新しい測位システムの有効性や課題について語った。

 また、国立情報学研究所の相原健郎氏は渋谷で行われた「Pin@clip」や二子玉川で行われた「ニコトコ」など東急電鉄が行った実証実験で得られた行動ログの活用事例を発表。さらに株式会社NTTドコモの太口努氏は、同社の位置情報を活用したサービスを紹介した。後半は登壇した5名の講演者がパネリストとなり、D4DR株式会社の藤元健太郎氏がモデレーターとなってパネルディスカッションを実施。スマートフォン時代における位置情報サービスの課題について議論が行われた。

gコンテンツワールド

 このほか、防災関連や測量関連のシンポジウムに加えて、アジア・オセアニアにおける衛星測位に関する国際シンポジウムや、日本国際地図学会による「女子の地図力最前線ー”地図ガール”の感性と新マーケット」と題したユニークなパネルディスカッションなど、さまざまな分野の講演や研究発表会が開催された。

 2010年の第1回に引き続き開催された今回のG空間EXPO。東日本大震災を経たことで防災や復興関連の話題も多かったが、その一方で屋内測位などの次世代技術が着実に前進していることも確認できた。また、幅広い分野からアイデアや研究成果を募集したGeoアクティビティフェスタが多くの来場者の注目を集めていたのも見逃せない。このような分野の垣根を超えて関係者間の交流を促進させるイベントがG空間EXPOの魅力であり、今後も地理空間情報というテーマのもとに幅広い分野が集うイベントとして継続的に開催してほしいものである。

日本国際地図学会によるパネルディスカッション




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2012/6/28 06:00


片岡 義明
 地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅−デジタル地図に残す自分だけの鉄道記−」がインプレスジャパンから発売中。