趣味のインターネット地図ウォッチ

第199回

チェックしておきたい日本の火山関連サイトを一挙紹介

 戦後最悪の火山災害となった御嶽山の噴火。亡くなった方には謹んで哀悼の意を表するとともに、被災された方には1日も早い回復をお祈り申し上げる。この噴火を機に、日本に噴火の恐れがある火山がどれくらいあるのか、火山に関する情報はどこにあるのかを知っておきたい人もいると思われるので、今回は地図と組み合わせた火山情報を提供しているサイトを紹介したい。

気象庁、「火山登山者向けの情報提供ページ」を公開

 気象庁は10月10日、個々の火山ごとに火山情報を調べられる「火山登山者向けの情報提供ページ」を公開した。同サイトは9月27日に発生した御嶽山噴火を踏まえて開設されたもので、同庁が発表する最新の火山情報を登山者などに迅速・的確に提供することを目的としている。

「火山登山者向けの情報提供ページ」
各エリアの詳細地図

 アクセスすると小縮尺の日本地図が表示される。ここには、現在、噴火警報や火山の状況に関する解説情報を発表している火山が、アイコンで表示されている。アイコンのうち、噴火警戒レベルの対象火山は三角形のアイコンで、対象外の火山は丸形、海底火山は二重丸のアイコンで表示している。例えば2014年10月17日現在、御嶽山はレベル3(入山規制)、三宅島や草津白根山、阿蘇山などはレベル2(火口周辺規制)となっている。また、「北海道地方」「関東・中部地方」など各エリアの詳細地図も用意されており、これを見ると日本全図にはアイコンが表示されていなかった山についても警戒レベルを確認できる。

 各アイコンをクリックすると、規制内容や噴火警報、予報などの解説を見られる。さらに下へスクロールさせると、噴火警戒レベルに関する資料や、火口で噴火した場合の噴火警戒レベルの規制範囲を示した防災マップも見られる。このほか、各火山についての火山活動をまとめた年表も載っており、有史以降の火山活動について詳しく調べられる。このサイトを使えば、登山者は自分が登ろうとしている山が活火山かどうか、登ろうとしている山の近くに活火山があるかどうかということについて山行前に確認できる。

火山ごとに活動状況を解説
浅間山の噴火警戒レベル
草津白根山の有史以降の火山活動

 ほかにも気象庁は火山についてかなり豊富な資料を保有している。火山の状況に関する解説情報や、噴火に関する火山観測報のほか、「火山カメラ画像」というコーナーもあり、各地の火山に設置されたライブカメラの映像を見られる。これらの資料を使って活火山の位置を確認するとともに、火山の知識も学んでおくことをお勧めする。

火山カメラ画像

全国の火山ハザードマップを集めた「火山ハザードマップデータベース」

 防災科学技術研究所が公開している「火山ハザードマップデータベース」では、1983年から現在までに日本で公表された全国の活火山について、ハザードマップや防災マップを収録している。同サイトにアクセスするとウェブ版の全国地図が表示されるので、調べたい火山の名をクリックすると、一覧表の該当箇所が表示される。

 収録している火山の数は97で、北海道の知床硫黄山から鹿児島県の諏訪之瀬島まで幅広く網羅している。一覧表には火山活動度や資料名、ファイル容量、発行機関、発行年などを確認できる。収録されている地図は、防災マップのほか、噴火災害危険区域予想図や災害記録、報告書、防災手帳、避難地図など多彩な種類の地図を収録している。

「火山ハザードマップデータベース」
ハザードマップデータベースの一覧表
火山分布図
阿蘇山の火山防災マップ

 ウェブ地図のほかにKMLファイルでも配信しており、ダウンロードしてGoogle Earthなどで閲覧できる。Google Earth上でピンをクリックすると、ウィンドウがポップアップして、一覧表へのリンクが表示される。日本語版の表のほか、英語版の表へのリンクも記載されている。収録されている地図はPDFファイルとなっているので、あらかじめ登山前にダウンロードしておくといいだろう。

Google EarthなどでKMLファイルを閲覧可能

日本の活火山の分布状況が分かる「日本の火山」

 日本にどれくらい活火山があるのかについて、基本的な情報を押さえておきたい時に役に立つサイトで、産業総合研究所(産総研)地質調査総合センターが提供している。全国の活火山の中から調べたい火山を選び、詳細情報を調べられる。

「日本の火山」
火山分布図

 収録されている情報は、主な活動記や活動年代、最新活動年、火山の形式・構造、岩質、主な岩石、所在地、標高、緯度・軽度、該当する国土地理院の地形図の名称など。所在地については地理院地図へのリンクが張ってあり、クリックすると地理院地図の該当箇所を表示させることができる。このほか、フォトギャラリーや、過去の噴火履歴なども調べられる。

 火山の検索方法は、火山名称から探す方法、火山分布図のクリッカブルマップから探す方法のほか、Google マップを背景地図に使った分布図も用意されている。また、日本百名山に含まれる活火山や、国立・国定公園内にある活火山などのリストも用意されている。

詳細情報
フォトギャラリー
噴火履歴
日本百名山に含まれる活火山のリスト

 産総研は御嶽山に関する特設ページも開設しており、活動履歴の解説や、火山灰の現地調査への取り組み、火口状況の上空観察などの進捗状況について述べており、同センターが保有している御嶽山に関する各種の情報を公開している。「日本の火山」と合わせて参照していただきたい。

御嶽火山の噴火に関する情報

海の火山について調べられる海上保安庁の「海域火山データベース」

 海域火山の情報を調べられるデータベース。伊豆諸島や小笠原諸島、南西諸島などの海域火山について、緯度・経度や水深などの基本データを見られるほか、活動記録も収録している。また、画像コンテンツとして海底地形図や地質構造図も用意している。

 さらに、海上保安庁が上空から撮影した写真も収録しているほか、伊豆東部火山群については海底噴火の動画なども見られる。

 「海域火山」とは海底火山および火山島のことを指しており、このデータベースには北海道の有珠山や駒ケ岳、長崎県の雲仙岳などの海に近い火山もいくつか収録している。海域火山といえば最近では西之島の活動が記憶に新しいが、西之島の2013年の活動についても写真を豊富に用意しており、形状の変化を時系列でチェックすることができる。

「海域火山データベース」
詳細情報
海底噴火の動画
西之島の写真

国土地理院、御嶽山噴火に対するさまざまな取り組みを実施

 御嶽山の噴火直後から航空機を飛ばして空中写真の撮影やSAR(合成開口レーダー)観測を行い、その観測結果を迅速に公開した国土地理院。これらの撮影結果やレーダーの観測結果は「地理院地図」上で見られるほか、推定火口位置の情報をKMLでも配信している。

御嶽山の正射画像
航空機SAR画像

 また、ここで撮影した斜め写真による3D画像をもとに、擬似3D動画も作成している。これはMicrosoft Live Labsで提供している「Photosynth」というサービスを活用したもので、斜め写真の新たな見せ方として注目される。

 さらに、2014年5月に打ち上げたれた陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)を利用して御嶽山の噴火に関する変動を検出し、その結果を地理院地図のコンテンツの1つとして公開している。

斜め写真による擬似3D動画
「だいち2号」による観測結果

 国土地理院はこのほか、過去に撮影した空中写真や火山土地条件図のPDFなども地理院地図で公開している。これらの情報は特設ページにまとめられており、非営利の被災地支援のための目的であれば、成果物に出展を明示するだけで、転載も含めて自由に使用することが可能だ。

火山土地条件図

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。