趣味のインターネット地図ウォッチ

第155回

GPSランニングウォッチで最軽量?! GARMIN「ForeAthlete 10J」

 ランニング中にリアルタイムに走行スピードを確認することが可能で、走行後に走った軌跡を地図上に表示できるGPSランニングウォッチは、マラソンブームの高まりとともに近年人気を集めているガジェットである。中でも特に人気なのが米GARMINの製品だが、その最新モデル「ForeAthlete 10J」が2月14日、国内代理店の株式会社いいよねっとから発売された。今回はこの製品のレビューをお送りしたい。

40gを切った軽量GPSウォッチ

 ForeAthlete 10Jの特徴は、なんといってもその軽さだ。男性向けのブラックは43gで、女性向けのグリーン/ピンクは36gという軽さを実現している。この36gという値は、ランニングウォッチの定番であるセイコーの「プロスペックス スーパーランナーズ」と同じで、GPS非搭載のランニングウォッチと変わらない重量を実現しているのは驚きだ。筆者の知る限りではGPSランニングウォッチの中でも最軽量だと思うし、GPSランニングウォッチといえば60g以上が当たり前だった数年前と比べると隔世の感がある。50m防水仕様なのでランニング中に雨に降られても大丈夫だし、準天頂衛星「みちびき」にも対応。希望小売価格も1万4800円と、コストパフォーマンスは抜群だ。

 サイズはブラックが45.5×57.2×15.7mm(幅×高さ×厚さ)、グリーン/ピンクが40.1×52.2×15.7mm(幅×高さ×厚さ)。GPS非搭載のランニングウォッチよりは少し厚めだが、樹脂バンドが柔らかく装着感はかなりいいし、手持ちの「Forrunner 405」(60g)に比べると本当に軽い。

ForeAthlete 10J(ブラック)
ForeAthlete 10J(グリーン)
ForeAthlete 10J(ピンク)

 操作ボタンは本体サイドに左右2個ずつ、計4個が配置されている。左上が「電源/バックライト」、左下が「戻る/ラップボタン」、右上が「トレーニングボタン」、右下が「スクロールボタン」となっている。

 充電の際は付属のクリップケーブルを使用し、USB ACアダプターなどに接続して充電する。このケーブルはデータ転送用も兼ねており、PCのUSB端子に接続してデータのやりとりを行う。バッテリー持続時間はGPS受信時で約5時間で、フルマラソンにはちょうどいいがウルトラマラソンに使用するには足りない。なお、GPSを使わずパワーセーブモードで使った場合はバッテリーは約5週間持続する。

パッケージ
36gという軽さを実現
操作ボタンは4つ
クリップケーブル
充電/データ交換用の接点
裏側に取り付けて充電/データ交換
バンドが柔らかく付け心地は良好
Forrunner 405(左)に比べてかなり小さい
厚みも大きく違う

走行中に画面を自動で切り替えるオートスクロール機能

 ランニング開始時は、メインページ表示中にトレーニングボタンを押すと「イチカクニンチュウ(位置確認中)」のメッセージが表示され、衛星の捕捉が完了するとタイマーページが表示される。ここで再度トレーニングボタンを押すと計測開始となる。

 トレーニング中の表示ページは、現在日時およびGPS衛星の捕捉を知らせるGPSアイコンが表示される「メインページ」、「データページ1」、「データページ2」、そして「ラン/ウォーク」または「バーチャルぺーサー」を設定している場合はいずれかが表示される。この4画面を一定時間ごとに自動的に切り替える「オートスクロール」機能も搭載している。

 なお、データページは「経過時間(タイム)/移動距離」「経過時間/ペース(1kmを走行するのにかかる時間)」「経過時間/カロリー」「ペース/移動距離」「ペース/カロリー」「移動距離/カロリー」の6種類の組み合わせの中から選択可能。データページは2ページ用意されており、それぞれ別の組み合わせを表示できる。なお、速度はペース表示のほか、時速で表すことも可能だ。

 ランニングを終了する場合はトレーニングボタンを押せばタイマーがストップするので、「ホゾン(保存)」を選択すれば記録が履歴の「アクティビティ」項目に保存されて後から見直せる。トレーニングデータとして記録されるのはトレーニングの合計時間と合計距離、平均走行ペース、平均走行スピード、消費カロリー、ラップタイム、ラップ間の距離、ラップ平均ペースの8項目。なお、保存したトレーニングデータの中に自己ベスト記録が含まれている場合に自動的に保存される「自己ベスト」機能も搭載する。

時計画面
衛星測位が完了するとスタート画面が表示される
タイマーがストップするとデータの保存か削除を選べる
走行履歴
データページに表示する項目の選択画面
上段に経過時間、下段にペースを表示

ラン/ウォーク機能とバーチャルぺーサー機能を搭載

 低価格ということもあり、けっして多機能ではないが、特徴的な機能がいくつかある。1つめは歩行と走行を交互に繰り返しながらトレーニングできるラン/ウォーク機能だ。これはラン/ウォークともにあらかじめ時間を設定しておくと、ランからウォーク、またはウォークからランへの切替時に3秒前からカウントダウンし、ビープ音と液晶表示で知らせてくれる機能。ランニングを始めたばかりで、まだ長い距離を続けて走れない人などが歩行と走行を組み合わせてトレーニングするのにも役立つし、「5分間ハイスピードで走って、1分間ゆっくりと流す」といった風に走行ペースに変化を付ける際にも使える。

 2つめは「バーチャルぺーサー」という機能。これは事前に設定したペースに対して、走行中のペースが速いのか遅いのかを表示する機能だ。設定したペースよりも遅い場合は「スピードアップ!」、速い場合は「スピードダウン!」、設定したペースで走行している場合は「オンペース」というメッセージがビープ音とともに表示される。GARMINのGPSランニングウォッチの上位機種には、設定したペースで走るランナーと自分を表すランナーの簡単なアニメーションで表示する「バーチャルパートナー」という機能があるが、バーチャルぺーサーはバーチャルパートナーから絵を省いて表示を簡略化にしたような機能で、設定ペースからどれくらい先行(遅延)しているのかが数字で表示されず少々もの足りない。なお、ラン/ウォーク機能とバーチャルぺーサーを同時に使用することはできない。

 このほか、設定した距離ごとに自動的にラップタイムを測定する自動ラップ機能も搭載している。設定できる距離は0.4km、1km、2km、5kmの4段階で、ラップは50ラップまで取得可能。42.195kmのフルマラソンならば、1kmごとに設定しておけば42ラップ刻んでゴールできる。なお、自動ラップだけでなく、ラップボタンを押すことで手動によるラップタイム計測も可能だ。

 また、走行をストップした際に自動的にタイマーを一時停止する「自動ポーズ」機能も搭載する。都市部でランニングする際、信号で止まることが多い場合などに使うと便利だ。さらにアラーム機能やバックライトの点灯機能も搭載する。ただしバックライトは点灯させ続けることはできず、ボタンを押してから数秒間以内しか点灯しない。

ラン/ウォーク機能の設定画面
ウォークへの切り替え
バーチャルぺーサーの画面
走行スピードに合わせてメッセージが表示
ラップタイムの計測画面

トレーニングデータをクラウドで管理

 ForeAthlete 10Jで記録したトレーニングデータはPC上で管理することも可能だ。クリップケーブルをForeAthlete 10Jに取り付けた上でPCのUSB端子に接続すると、ForeAthlete 10Jの内蔵ストレージにアクセスできる。ストレージの「Garmin」フォルダーの中の「Activity」フォルダーの中に入っているトレーニングデータをPCにコピーして保存できるほか、トレーニングデータを管理するための無償のオンラインサービス「Garmin Connect」も利用できる。

 Garmin Connectのアカウントを作成し、PCに「Garmin Commuinicator Plugin」というデータ送受信のためのソフトウェアを入れると準備が完了。Garmin Connectにトレーニングデータをアップロードできるようになる。データを読み込むと地図上で軌跡を確認できるほか、走行スピードや高度の変化をグラフで確認できる。また、タイムや移動距離、平均ペースなどのデータやラップタイムの一覧も表示される。軌跡表示の地図はBingを使用しており、衛星写真にも切り替えられる。

 読み込んだデータは「GPX」「TCX」「KML」形式で出力することも可能で、Google Earthなどのソフトウェアから読み込めば地図や衛星写真上で軌跡を見返すことも可能だ。

Garmin Connectのアップロード画面
読み込むと軌跡が地図上に表示される。

大きな誤差がなく精度の高いGPS

 それではForeAthlete 10Jの測位精度をチェックしてみよう。今回は皇居周回コースを走行して軌跡ログを記録した。比較に使ったのはGARMINのForrunner 405(英語版)。スタート地点は東京メトロ竹橋駅付近にある平川門で、ここから左回りに走行。ForeAthlete 10Jを左腕に、Forrunner 405を右腕に装着してログを記録した。ログの赤線がForeAthlete 10J、青線がForrunner 405を示している。

ログ全景
スタート付近
千鳥ヶ淵周辺

 スタート直後を見るとForrunner 405の軌跡が左右にブレているのに対して、ForeAthlete 10Jは真っ直ぐに安定した軌跡を描いた。その後はどちらも大きな誤差が無くきれいな軌跡となる。桜田門周辺が工事中で受信状況が悪くなるが、軌跡に少しズレが出たくらいで大きな破綻は見られない。

桜田門周辺
大手門周辺からゴールにかけて

 違いが出たのは大手門付近からゴールにかけてのエリアだ。この付近は右手に高層ビルが建ち並ぶからか、皇居周回コースでログを取るといつも誤差が大きくなる。それでもForrunner 405が内堀通りや大手壕にはみ出しているのに対して、ForeAthlete 10Jは左右の乱れがかなり少ない。どちらも十分、実用に耐えうる精度だが、総合的に見るとForeAthlete 10Jの方が精度が高いと言えるだろう。

 40gを切る軽さと高精度なGPS、必要十分な機能を備えながらもコストパフォーマンスの高いForeAthlete 10Jは、多機能や長時間駆動などを求めない人には最適なモデルと言えるだろう。1つだけ惜しいのは、男性向けのブラックも36gと軽くしてほしかったこと。男性でも軽さを優先したい場合は、あえてピンクかグリーンを選んでもいいと思う。

 これから暖かくなるにつれてランニングに取り組もうという人も増えると思うが、GPSランニングウォッチを使って走ると自分の走行ペースがリアルタイムで分かるので楽しく、モチベーションも上がるものだ。初めてGPSランニングウォッチを買おうと思っている人はもちろん、従来機種からの買い換えを考えている人にもおすすめの製品だ。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。