趣味のインターネット地図ウォッチ

第160回

3G通信で現在地を他の端末に知らせるソフトバンク「みまもりGPS」

 携帯電話網などを利用した通信機能を内蔵し、GPSで測位した現在地をほかの端末に知らせることが可能な“GPSトラッカー”。運送業やルート営業などに向けた法人用のシステムや自動車の盗難対策を目的とした製品はこれまでにも存在したが、一般ユーザー向けに気軽に使える製品はあまり見られなかった。

 ソフトバンクモバイル株式会社が4月26日に発売した「みまもりGPS 201Z」は、一般ユーザーでも気軽に手を出せる3G通信機能搭載のGPSトラッカーだ。主に子供やお年寄りに持たせて現在地を確認することを想定した製品だが、ほかにもスポーツや旅行、防犯用とさまざまな用途で使用できる。今回はこの製品のレビューをお送りしたい。

「みまもりGPS」

音声通話機能やディスプレイは非搭載でGPSトラッキングに特化

 ソフトバンクでは以前から「みまもりケータイ」という子供に携帯電話やスマートフォンを持たせて現在地を把握するというコンセプトの携帯電話を発売していたが、みまもりGPSは通話機能もディスプレイも搭載しないシンプルな製品で、遠隔地から端末の現在地を把握するという機能に特化している。その分、サイズは約45×67×15mm(幅×高さ×厚さ)、重量は約48gと軽量・コンパクトを実現。この小ささと軽さでIPX5相当の防水機能とIP5X相当の防じん機能を備えている点も魅力だ。充電時間は約130分で、測位間隔が5分の場合の連続測位時間は20時間。連続待受時間は約340時間(2週間)。

シンプルなデザイン
本体の裏側

 料金については専用プランが用意されており、購入時に「みまもりGPS基本料無料プログラム」に加入することで、2年契約で最大25カ月間、基本使用料が無料となる。このほかに端末本体の代金と契約事務手数料が3150円がかかる。本体価格は一括の場合は1万1760円(ヨドバシカメラ秋葉原店での価格で、10%のポイント付き)で、割賦の場合は月額490円。

 このほか、利用中に通信費が発生した場合は、その分を支払う必要がある。みまもりGPSではほかの端末との通信をSMSやMMSで行う仕組みなっており、ソフトバンクの端末とのやりとりには通信費がかからないが、他キャリアと通信する場合は通信費が発生する。この点に注意して運用すれば、スマートフォンを買って通話プランやパケット定額プランを契約することに比べると低コストで維持できる。

 セコム株式会社も子供向けのGPSトラッカー「ココセコム」を提供しているが、月額900円(ウェブサイトでの位置情報検索が毎月10回までの場合)。10回分のSMS/MMS通信費を入れたとしても、みまもりGPSはココセコムより安価に運用できる。

 ちなみにココセコムの場合、ユーザーからの要請により緊急対処員を急行させる有料オプションが用意されているが、みまもりGPSでもセントラル警備保障による「CSPケータイdeアシスト」というサービスを利用できる。料金は月額警備料が315円、出動料が1回あたり5775円(出動後1時間まで)となる。ココセコムの出動料(1万500円/回)よりも安いが、ココセコムと違ってみまもりGPS本体のボタンでオペレーションセンターなどに通報する機能などは搭載されていない。

20台の端末と連携可能

 本体のデザインは子供向けの防犯ブザーに似た形だが、みまもりケータイのような防犯ブザー機能はない。色はホワイト1色だが、ブルー、イエロー、ピンクという3色のシリコンカバーが付属。通話機能やメール/ウェブの閲覧などは一切できず、サイズも小型なので、小学校によっては携帯電話の持ち込みが禁止されていても、この製品ならば持ち込みが許される場合もあるかもしれない。

シリコンカバーと付属ストラップを装着

 本体の側面には専用USIMカードのスロットのほか、充電用のmicro USBコネクターも搭載。電源ボタンは細長い突起で押すタイプのもので、オン/オフさせる際には付属の専用工具を使う必要がある。子供の誤操作を防止するためだとは思うが、オン/オフの操作は少々面倒だ。

 前面には大きなボタンが1つと、端末の状態を表すインジケーターランプが3つ並んでいる。また、ビープ音を鳴らすためのスピーカー穴も搭載する。ランプは左から「測位の状態(GPS)」「電波の状態(3G)」「内蔵電池の状態」を示しており、色の変化や点滅で端末の状態が分かる。

 みまもりGPSの管理には、まず測位データを主として受け取る携帯電話やスマートフォン、PCなどを“オーナー”として1台登録する。そのほか、“オーナー”の管理下で測位データを受け取れる“メンバー”の端末も最大19台まで登録することが可能で、計20台の端末と連携させることが可能だ。オーナーとメンバーでは利用できる機能が異なり、また、PCソフト(Windows/Mac用)とスマートフォン(iPhone/Android用)でも利用できる機能に違いがある。

操作ボタンとインジケーター
micro USBコネクターと電源ボタン
USIMカードスロット
ストラップホール
専用工具
インジケーターランプが点灯
シリコンカバーが3色付属
USB ACアダプターとmicro USBケーブルが付属

他の端末との連携にはSMS/MMSを使用

 みまもりGPSで利用できる機能は、以下の5つ。

1)本体のボタンを押すことで現在地を測位して、ほかの端末に知らせる「ワンタッチ測位」
2)スマートフォンから操作して、みまもりGPSの現在地を測位できる「遠隔測位」
3)測位した現在地を連続データとして記録できる「連続測位」
4)設定したスケジュールに沿って現在地を測位できる「スケジュール測位」
5)指定したエリアに入った時や指定したエリアから出た時にメールで知らせる「エリア測位」

 このうち、PCソフトで使用できるのはスケジュール測位・エリア測位・連続測位の設定で、スマートフォンのアプリからはスケジュール測位および連続測位の設定と、遠隔測位の開始が行える。PCソフトでは遠隔測位の開始が行えず、スマートフォンからはエリア測位の設定が行えないので注意が必要だ。

 なお、前述した通り、この端末はほかの端末との無線通信をSMS/MMSで行う。スマートフォンからみまもりGPSの設定や操作を行う場合は、スマートフォン側のメッセージアプリを利用して、みまもりGPSに割り当てられた電話番号宛にコマンドとなるテキストをSMSで送付する。

 筆者は現在、auのiPhone 5を使用しているのだが、auのiPhone 5からのSMS送信で操作を行えることが確認できた。ただし、auから他キャリアにSMSを送信する場合、送信料として1回につき3.15円かかる。また、送信する場合だけでなく、みまもりGPSで測位したデータをMMSによりソフトバンク以外のスマートフォンで受け取る場合にも通信料が発生する。これら1件あたりの通信料はそれほど高くはないものの、やりとりする件数が増えるとそれなりに費用がかさむので、ソフトバンク以外のスマートフォンを使う場合は注意が必要だ。

「みまもりGPS」の専用iPhoneアプリ。右上のボタンをタップすると「遠隔測位」が可能
「遠隔測位」の場合はSMSでコマンドを送信する
PCソフトの「連続測位」の設定画面
「スケジュール測位」の設定画面
「エリア測位」の設定画面
「みまもりGPS」からのメール送信履歴

スマートフォンからの遠隔操作が可能

 実際に使い勝手を試してみた。まずは最も基本の「ワンタッチ測位」を実施。外出先でみまもりGPS前面にある大きなボタンを押すとGPSのランプが点灯し、すぐに現在地を知らせるメールがPCおよびiPhoneに届いた。メールに記載されたリンクをクリック(タップ)すると、ブラウザーが立ち上がり地図上に測位した位置が表示された。使用している地図は「いつもNAVI」だ。

 次に遠隔測位を試してみる。iPhoneのみまもりGPS専用アプリから遠隔測位開始のボタンをタップすると、コマンドがSMSで送付される。みまもりGPSを見ると、ワンタッチ測位の時と同じようにGPSのランプが点灯し、現在地を知らせるメールが届いた。スマートフォンからの遠隔操作については、ビープ音を鳴らすことも可能だ。

ワンタッチ測位で送信されてきたメール
クリックすると「いつもNAVI」の地図上で現在地を確認できる

測位精度は今ひとつだが実用性は十分

 次に「連続測位」を試してみた。連続測位の開始はみまもりGPS本体のボタンを2秒間長押しするか、またはスマートフォンから連続測位開始のコマンドを送る。この機能では測位した現在地を連続データとして記録できるので、GPSロガーのような使い方も可能だ。連続測位の終了も遠隔操作で行える。測位間隔の設定は最小で10秒間。

 連続測位の結果はkmlファイルとしてメールで送付される。このkmlファイルは、みまもりGPSの専用アプリで開くことも可能だし、Google Earthなどのアプリで開くことも可能だ。また、PCソフトにログを転送してGoogle マップ上で軌跡を確認することもできる。

「連続測位」の開始・終了はスマートフォンからの遠隔操作で行える
「連続測位」が完了したことを知らせるメール
「連続測位」のログをPCソフト上で表示

 今回はログをGARMINのハンディGPS「eTrex 20J」と比較してみた。測位間隔はいずれも10秒にセットし、市街地を自転車で走行。測定場所はいつもの通り、東京メトロ銀座線の田原町駅から西方向(上野駅方面)へと自転車で走り、上野駅前の交差点で左折し南下。JR御徒町駅前の交差点で左折して東に移動し、左回りで1周して元の位置へと戻った。ログの赤線がみまもりGPS、青線がeTrex 20Jとなっている。

左が「eTrex 20J」、右が「みまもりGPS」
ログ全景
田原町駅付近(スタート/ゴール地点)
上野駅周辺
御徒町駅周辺
最後の曲がり角

 みまもりGPSのログを見ると、序盤の上野駅までの道がeTrex 20Jに比べてかなり左右にブレている。上野駅から南下して御徒町駅に至る首都高速の高架沿いの道は、衛星測位を行う条件としては良くないにもかかわらず、大きなズレは見られなかった。しかし、御徒町駅から東へと帰ってくる道では再び左右に大きくズレている。

 全体的に見るとあまり精度が高いとは言えない。家族がどこにいるのか大体の位置を把握する用途であれば十分実用的だが、ピンポイントに場所を特定する目的には少々厳しい。ただし携帯電話の基地局情報を測位にも利用しているため、測位時間は短く、屋内にいてGPS電波が受信できない場合でもある程度、現在地に近い場所を示すことができる。

さまざまな用途に使える「エリア測位」

 このほか、「スケジュール測位」や「エリア測位」についても試したが、特に問題なく利用できた。スケジュール測位では開始時間および終了時間、測位間隔、曜日・日付などを指定して設定できる。

 エリア測位についてはPC上のウェブブラウザー上で地図を表示させた上でエリアを指定できる。エリアの範囲は円の大きさをドラッグで自由に調節可能で、指定したエリアに入った場合または出た場合にメールで知らせることが可能だ。測位間隔を何分おきに行うかも指定できる。測位した結果、指定エリア内だった場合はメールを発信して知らせる。メールに書いてあるURLをクリックまたはタップするとウェブブラウザーが起動して、いつもNAVIの地図上で測位結果を表示。自動車などにセットして盗難対策として使うなど、エリア測位はさまざまな用途に使えると思う。

指定したエリアに入ったことを知らせるメール
電源がOFFになったことを知らせるメール

コストパフォーマンスが高いコンパクトなGPSトラッカー

 みまもりGPSの購入にあたっては、PCソフトやスマートフォンによって利用できることに違いがあることや、他社製のスマートフォンを使用する場合は通信費がかかることなど、気を付けなければならない点がいくつかある。また、PCとの接続時に認識されないことが何回かあったことも付け加えておきたい。この症状が起きた場合、みまもりGPSの電源を再起動させてから接続すれば再び認識可能となったが、PCとの接続については今ひとつ安定感に欠ける。

 このような問題はあるものの、3G通信機能付きGPSトラッカーとしては今までになく軽量・コンパクトで、防水・防じん対応やコストパフォーマンスの高さも魅力。上記の注意点や、測位精度があまり良くない点などを納得した上で購入するのならば悪くない選択だと思う。特にソフトバンクのスマートフォンのユーザーには、SMS/MMSの通信料もかからずおすすめだ。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。