ニュース
420GHz超の帯域で初の100Gbps級無線通信を実証。徳島大と岐阜大の研究グループが発表
2026年5月20日 07:00
徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所/フォトニクス健康フロンティア研究院の時実悠講師・岸川博紀准教授・久世直也教授・安井武史教授、徳島大学大学院創成科学研究科の菊原拓海大学院生、徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所の永妻忠夫客員教授らと、岐阜大学工学部の久武信太郎教授の研究グループは、マイクロ光コム駆動型テラヘルツ通信システムを開発し、560GHz帯において単一チャネル112Gbpsの無線伝送を実証した。
移動通信は、無線キャリア周波数を高周波化することにより、高速・大容量化を進めている。2030年代の実用化を目指す「6G」では、300GHz以上のテラヘルツ波(無線通信においては周波数100GHz~1THzをテラヘルツ波と呼び、そのうち100GHz~300GHzはサブテラヘルツ波とも呼ぶ)の利用が期待されているが、350GHzを超える領域では、従来の電子技術による信号生成の限界や位相雑音の増大により、安定かつ高速な無線通信の実現が困難とされていた。
同研究グループは、こうした課題を解決するために、電気的手法よりも高品質な超高周波光電気周波数信号の生成が可能で、半導体プロセスにより一括大量生産可能な「光ファイバー接続マイクロ光コム」(光周波数光源の一種)を用いたテラヘルツ波生成と、多値変調技術を組み合わせたマイクロ光コム駆動型テラヘルツ通信システムを開発した。
同システムでは、安定かつ小型なテラヘルツ信号源を実現するため、光ファイバー接続型の微小光共振器を用いたマイクロ光コムデバイスを開発し、採用した。このデバイスでは、窒化シリコン製の微小光共振器に対し、光ファイバーを光学接着剤により直接接合する構造を採用することで、従来必要とされていた光学顕微鏡観測や多軸ステージによる精密な光学調整を不要とし、装置の大幅な小型化を実現している。
こうした直接接合する構造を採用したことで、励起光カップリング効率(光ファイバーからの出力をどれだけ漏らさずに送り込めるかの効率)の時間安定性も大幅に向上させた。これにより、より強いエネルギーを持つ高出力励起光の利用が可能になり、長時間にわたる安定動作と、テラヘルツ帯における高安定・低雑音な信号生成の基盤技術を確立した。
通信実験では、この光ファイバー接続マイクロ光コムを用いたテラヘルツ無線通信システムを構築し、実際の伝送テストを行った。
まず、マイクロ光コムの光注入同期により、雑音が少なく安定した2波長光キャリア(異なる波長を持つ2つの光)を生成し、光領域で多値変調(QPSKおよび16QAM)を付与した。その後、フォトミキシングにより560GHzの多値変調テラヘルツ波を生成し、変調信号を無線搬送した。受信側では、超高周波信号の検出に適したサブハーモニックミキサーを用いたヘテロダイン検出により信号を復調した。
その結果、QPSK変調において84Gbps、16QAM変調において112Gbpsの無線伝送を達成した。この成果は、420GHz以上の未踏周波数帯において、100Gbps級の無線通信を初めて示したものだという。
同研究グループによると、マイクロ光コムのさらなる低位相雑音化により信号品質を向上させることで、より高次の変調方式を適用した一層の高速・大容量通信の実現が期待されるという。
また、実用的な通信距離の拡張においては、大気吸収の影響が小さい周波数帯の選択に加え、テラヘルツ波の高出力化や高利得アンテナの導入を組み合わせることで、テラヘルツ無線通信の実用化が加速し、次世代通信インフラへの応用が期待されるとしている。


