山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
微博利用者が大幅減。オピニオンリーダーへの圧力などが原因 ほか~2014年1月
(2014/2/14 06:00)
本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。
微博利用者が大幅減。オピニオンリーダーへの圧力などが原因
後述のCNNICレポートで、中国のネット世論のチェックやマーケティングで利用されるマイクロブログ「微博」利用者が、半年間で約5000万人も減少し、国内外のメディアで大きく紹介された。スマートフォンでのネット利用が増加し、微博ユーザーがLINEのようなSNSアプリ「微信(Wechat)」へ移行しているのも一因だが、理由はそれだけではないようだ。
英Telegraphは31日、微博利用者減少は「大V」と呼ばれるオピニオンリーダーへの圧力が原因とする記事「China kills off discussion on Weibo after internet crackdown」を掲載。記事は、華東師範大学信息科学技術学院に2011年から2013年末までの160万の微博利用者の分析を依頼し、微博利用者のアクティブ度や利用実態をまとめた内容となっている。
Telegraph報道によると、昨年8月にアクティブユーザーの総書き込み数が半減、同時に160万の調査対象者のうちの100万人以上が利用を止めている。昨年8月、特に多くのフォロワーを持つオピニオンリーダーへの当局の圧力があり、これにより結果微博利用者が減少したと報じた。また、微博実名制をスタートさせた時に書き込み数が半減するなど、過去の何度かの当局の締め付けにより、利用者や書き込み数がしばしば減っていることを指摘している。
ネット利用者は6億1800万、携帯普及率は90%超、3GでTD-SCDMA利用者が急増
2013年のインターネット絡みのデータが複数発表された。
中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)は17日、中国における2013年末におけるインターネットの利用状況をまとめた「第33次中国互換網発展状況統計報告(第33回中国インターネット発展状況統計レポート)」を発表した。中国における2013年末時点のインターネット利用者は6億1800万人で、総人口に対するインターネット利用者率は45.8%。スマートフォンなどでのモバイルでの利用者数は5億人で、年間で8009万人、半年間で3600万人増加した。
詳しくは「中国のネットユーザーは6億1800万人~マイクロブログ「微博」利用者は減少」の記事(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20140120_631353.html)でご紹介しているので参照していただきたい。
CNNICとは別に、中国政府工業和信息化部が23日に「2013年通信運営業統計公報(http://www.miit.gov.cn/n11293472/n11293832/n11294132/n12858447/15861120.html)」を発表している。
「2013年通信運営業統計公報」によると、2013年末の時点での携帯電話契約回線数は12億2900万で普及率は90.8%。3G利用者は約4億で、2G利用者が去年はじめて対前年比で減少し、2013年は3Gシフトが加速した年となった。この3G利用者は1億7000万増加したが、中国規格の1年で1億増加したTD-SCDMAの利用者が牽引した。ブロードバンド加入者数は1億8900万弱で、78.8%が4Mbpsないし8Mbps以上(22.6%)のプランを利用している。また32%がFTTHを利用している。
CDNプロバイダーのChinaCasheが発表した「2013年中国互聯網感知数拠報告」によれば、2013年の平均ネット回線速度は3.45Mbpsで、2012年第4四半期の2.59Mbpsに比べてだいぶ改善されたという。省別では、上海が5.4Mbpsで最も速く、次いで北京が4.17Mbpsとなった。
調査会社のiResearchは、2013年末でのPCでのインターネット利用者は前年比6.8%増の5億9000万、スマートフォンなどモバイルでの同利用者は前年比19.5%増の約5億人と発表。2017年にはスマートフォンなどのモバイルでのインターネット利用者がPCでの同利用者を上回ると予想している。
2013年のオンラインショッピング市場は30兆円規模に
調査会社「iResearch」は中国オンラインショッピング市場についての調査結果を発表。2013年のオンラインショッピング市場規模は前年比42%増の1兆8500万元(約31兆4500億円)となった。このうち信用があり、様々なキャンペーンが打ち出されて人気が上昇しているサイト「天猫(Tmall)」や「京東商城(360buy)」などがあるB2Cショッピング市場は全体の35.1%にあたる6500億元(約11兆円)を占める。また、オンラインショッピングで利用される「支付宝(Alipay)」などの年利用額は、前年比46.8%増の5兆3729億元(約91兆円)と大幅に伸びた。
今後については、B2Cが主流になっていく一方で、リアルショップとの提携も行われていくだろうと予想している。
春節にネット企業は休まず。ユーザーはネットで紅包を送り合う
中国人に最も大事なイベントの春節(旧正月)が1月31日に到来。阿里巴巴系の支付宝や、騰訊(Tencent)の微信(Wechat)では、お年玉のようなチップのようなお金「紅包(ホンバオ)」を自社サービスで送り合うようキャンペーンを仕掛けた。このキャンペーンが当たり、多くのサービス利用者が参加して紅包を送り合った。
また、勢いの落ちた新浪微博では、新たにテレビの視聴率を微博で測るための「微博收視指数」を作り、大晦日(春節の前日)の夜に多くの人が試聴する中国版紅白歌合戦のような番組「春節聯歓晩会」について見ながらつぶやくと、参加企業から紅包(商品)がもらえるキャンペーンを実施した。また、春節は3連休だが、中国で最も大きな伝統商戦なのでオンラインショッピングサイトは無休で対応にあたった。
大規模障害でネットが繋がらなくなる。原因はネット規制の調整か
21日の午後3時頃から5時前まで、トップレベルドメインに異常があり、.com、.org、.netドメインのサイトにアクセスできなくなり、特定のドメイン「65.49.2.178」に飛ばされるという現象が起こった。外国のサイトだけでなく、百度( www.baidu.com )のような中国国内のサイトも影響があったことから、多くの人がトラブルを体験した。ポータルサイト新浪が行った、このトラブルに関するアンケートでは、83%がサイトにアクセスできなくなったと回答している。多くの中国メディアが、トラブルの原因としてハッカーによる攻撃の可能性を挙げている。
強制的に飛ばされた先であるIPアドレス「65.49.2.178」は、中国のネットの壁を通り抜け、Facebookやtwitterなどのサイトにアクセスできる「自由門」というソフトをリリースした米国のDynamic Internet Technologyが所有している。Dynamic Internet Technologyの代表は後日、攻撃を否定する発表を行った。
香港インターネットベンダー協会主席の葉旭暉氏は、メディアの取材に対し「トップレベルドメインのDNSへの被害を与える攻撃は個人の能力を超えるものであり、個人による攻撃が可能だったとしても局所的なものに留まるはず」と分析。カリフォルニア大学バークレー校の教授である蕭強氏は「分析の結果、GreatFireWallの調整の中で、トラブルが起きたのだろう」とコメントしている。
電子マネー投信「余額宝」の運用額4兆円超~銀行も利率アップなど対抗策
天猫(Tmall)や淘宝網(Taobao)がリリースする電子マネーで決済サービスの「支付宝」の残額を運用する投資信託「余額宝」が発表されて半年、約5000万人がこのサービスを利用し、2500億元(約4兆2500億円)の運用資金を集めた。余額宝は投資先が国債や社債などで比較的リスクの少ない運用が特徴だ。2月に入り、さらに利率7%の「元宵理財」という商品が余額宝から登場し、多くの人を呼び寄せた。
余額宝の人気に押される形で、既存銀行は対余額宝策として利率を上げた。それだけでなく、中国銀行はさまざまな金融サービスをスマートフォン向け同銀行サイトから利用できるようにするプラットフォーム構築を計画し、中国工商銀行はECサイト「融e購」を立ち上げた。アリババが支付宝経由で金融業に参入したのとは逆の攻め方をしているわけだ。
こうした中で中国メディアは、各銀行は対阿里巴巴(天猫+淘宝網+余額宝)のため、天猫や淘宝網のライバルとなるECサイトと提携したり、銀行同士の繋がりを強化するといったことが近い将来起きるのではないかと言われている。
個人情報漏洩事件が相次ぐ
支付宝には各利用者が年間平均して約1万元利用したというが、余額宝により、ますます旬なサービスとなった。そんな支付宝のスタッフが20GB以上の利用者データをコピーし、個人情報販売業者に販売したとして逮捕された。そのスタッフは2010年に支付宝のソフトをダウンロードした支付宝利用者の個人情報で、3万人分のデータを500元(約8500円)で販売していた。支付宝は「漏洩した情報に核心的なデータ含まれていないので安心して欲しい」としているが、多くのユーザーは疑ってかかっている。
個人情報漏洩でいえば、中国の著名ビジネスホテル「如家」や「漢庭」の2000万件もの宿泊記録が漏洩し、問題となっている。昨年10月に漏洩が判明した事件だが、1月に入って「2000万のホテル客データ」といったファイルや、客データを閲覧・検索できるサイトが登場したことで話題になった。百度で「2000万のホテル客データ」と検索すると、「『2000万のホテル客データ』をください、サイトを教えてください」といった書き込みが多く表示される。漏洩による二次被害のおそれもあることから、中国のネットユーザーは個人情報漏洩に敏感になっている。
スマホでの検索がスマートになる
CNNICは、検索市場についてまとめた「2013年中国搜索引市場研究報告」を発表した。発表によると、2013年末の検索サービス利用者は4億9000万人で、うちスマートフォンなどのモバイルでの検索サービス利用者は3億6500万人となった。モバイルでの検索サービス利用者は、モバイルインターネット利用者の増加カーブを上回る形で増加しており、モバイルで1日1回以上検索する人の割合は全体の54.5%を占める。また、スマートフォンの検索においては、QRコードや音声入力での検索が顕著に増加している点が注目される。
検索で最もよく利用するサイトは、「百度(85.6%)」が圧倒的シェアを占める。続いて、新興の「360検索(10.1%)」が追っているが、かなり水を開けられている形だ。Googleを“知っている”人は86.8%、“過去半年で使ったことがある”人は38.8%だが、“最もよく検索で利用する”人はわずか1.6%に留まっている。モバイルで過去半年で使ったことがあるサイトは「百度(95.2%)」「グーグル(15.5%)」「360捜索(15.0%)」「捜狗(13.7%)」「SOSO(11.4%)」となった。高学歴であるほど複数の検索サイトを利用する傾向があるという。
タクシーアプリ、試行錯誤で改善の方向へ
タクシー呼び出しアプリの利用者は増えているが、運転手が最新の高価なスマートフォンを用意しなければいけなかったり、迎車料金が含まれていないとして現場で請求したところ「チップがない」と客が応じなかったりと、各都市でさまざまなトラブルが発生している。北京では、北京での迎車サービス「96106」と各呼び出しアプリ開発元が提携し公式化することを発表、これにより信頼度と知名度アップを図る。
タクシー呼び出しアプリは4種あるが、そのうちの「Didi」と「快的打車」の両タクシー配車アプリは今年1月に、アプリを利用した運転手と乗客に5元プレゼントするキャンペーンを実施。また、電子マネーで決済サービスの支付宝や微信支付での支払いにも対応するシステムがタクシーに続々と搭載され、タクシーまわりの環境は変わってきている。