ここがポイント! ○○の選び方

専用ソフト/サービスを使って青色申告を乗り切ろう!!

 「青色申告」というのは、確定申告時期となる毎年1月から3月に注目を浴びるキーワードだが、2014年1月から白色申告制度が変更になったことで、あらためて青色申告を注目する人が増えているのではないかと予測される。そこで白色申告制度はどう変更されたのか。その変更によって、なぜ、青色申告が注目されることになったのか。青色申告を行うためにはどのような対策を行えばいいのか、そして青色申告を簡単に行うためのソフト/サービスには何があるのかを紹介していく。

【確定申告シリーズ】

・源泉徴収票の見方、知っていますか? ~税金の計算方法を理解すると節税ができる~
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20150304_690747.html
・確定申告って何を申告するの? ~個人事業主の税金の計算方法を理解しよう~
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20150310_691870.html
・青色申告は白色申告よりお得なの? ~青色申告の特典と節税効果を検証しよう~
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20150311_691891.html
・個人事業主の税金を理解し節税しよう・前編 税金の計算方法を理解する
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20141218_680399.htmll
・個人事業主の税金を理解し節税しよう・後編 “節税の肝”各種控除を理解する
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20141219_680822.html
・初年度無料、話題のクラウドサービス「やよいの青色申告オンライン」を使ってみる
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20141226_681659.html

白色申告の制度変更で青色申告への関心高まる

 2015年(平成27年)は例年になく青色申告を行う人が増える年になるだろう。2014年1月から白色申告制度が変更になったからだ。

 2015年になって、2014年分の確定申告を行う場合には、新しい申告制度にのっとった申告を行うことになる。旧制度では、白色申告者のうち、事業所得、不動産所得、山林所得の合計が300万円を超える人にのみ必要とされていた、帳簿の記帳と書類の保存が、所得税の申告の必要がない人を含め、義務化されるという大きな変更となる。国税庁のウェブサイトでは、白色申告制度の制度が変わったことについて、次のように説明されている。

 個人の白色申告者のうち前々年分あるいは前年分の事業所得、不動産所得又は山林所得の合計額が300万円を超える方に必要とされていた記帳と帳簿書類の保存が、これらの所得を生ずべき業務を行うすべての方(所得税の申告の必要がない方を含みます。)について、平成26年1月から同様に必要になります。

 要約すれば、所得税申告の必要がない人を含め、所得ある人はすべて記帳、帳簿書類の保存が義務化されたことになる。

 記帳については、「一つ一つの取引ごとではなく、日々の合計金額のみをまとめて記載するなど、簡易な方法で記載してもよいことになっています」とある。本式な簿記でなくてもよいという認識のようだ。

 しかし、これまでまったく帳簿へ記帳する習慣がなかった人にとっては、これでも大きな戸惑いとなっているようだ。各市町村では初めて帳簿を付ける人に向けたセミナーを開催するといった対応が行われている。

 白色申告を行っている人は、帳簿を付けずに、銀行通帳をもとにしたメモによって売り上げを記録し、確定申告の時に所得、経費をまとめて計算する人も多い。「簡易な方法での記帳でよい」とはいうものの、帳簿付けに四苦八苦している人も多いのではないか。

白色申告よりもメリット大きい青色申告

 白色申告に比べると本格的な帳簿付けが必要となる青色申告とはどんなものなのか。やはり国税庁のウェブサイトを見ると、次のように説明されている。

 1年間に生じた所得金額を正しく計算し申告するためには、収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を記帳し、また、取引に伴い作成したり受け取ったりした書類を保存しておく必要があります。

 ところで、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取り扱いが受けられる青色申告の制度があります。

 青色申告をすることができる人は、不動産所得、事業所得、山林所得のある人です。

 青色申告の記帳は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記によることが原則ですが、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいことになっています。

 これらの帳簿および書類などは、原則として7年間保存することとされていますが、書類によっては5年間でよいものもあります。

青色申告に関する国税庁のウェブサイト

 文中にある「一定水準の記帳」とは、「複式簿記の帳簿」を思い浮かべるのがわかりやすい。「簡易な記帳だけでもよい」とはいうものの、「現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳といった帳簿を備え付けて」となると、ある程度、簿記の知識を持った帳簿に記録しなければならないことになる。もし、本格的に勉強し、帳簿を付けていこうとするのであれば、複式簿記の勉強をするというのが一般的だ。

 白色申告よりも本式な記帳が必要となる青色申告だが、白色申告にはないメリットがある。主なものとして、次の4つがある。
(1)複式簿記により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書を確定申告書に添付して確定申告期限内に提出している場合、最高65万円を控除することとされる「青色申告特別控除」を受けることができる。
(2)配偶者、親族で青色申告者の事業に従事している人に支払った給与を必要経費として参入できる、「青色事業専従者給与」。
(3)事業によって生じた損失見込み額を必要経費とすることができる「貸倒引当金」。
(4)損益通算の規定を適用しても控除しきれない赤字が生じた場合、損失額を翌年以降3年にわたって所得金額から控除できる「純損失の繰越しと繰戻し」

 こうしてメリットを列記しても、まだ確定申告をした経験がない人にはなかなかピンと来ないかもいれないが、青色申告を行うことで、白色申告よりも所得額を少なく申告できるチャンスが広がることになり、支払う税金が少なくて済むのである。

 もし、白色申告で帳簿を付けることになり、そこが手間だと感じているのであれば、これを機に白色申告から青色申告への切り替えを行うことも一つの選択肢だろう。

青色申告を行う際には注意すべきポイントも

 青色申告の方がメリットは大きいといっても、「白色申告の帳簿付けでも四苦八苦しているのに、青色申告の帳簿付けなどとんでもない!!」と考える人もいるかもしれない。

 しかし、簿記の勉強することなく、青色申告が行えるきちんとした帳簿付けを行う方法がある。青色申告や白色申告のための専用ソフト/サービスを利用することだ。これらのソフト/サービスは経理のプロではなくても、きちんと現金出納帳、売掛帳、買掛帳などを備え付けた帳簿付けを行うことができるよう、機能的に工夫されている。

 個人事業主として毎年確定申告を行ってきた筆者の経験からいえば、なんの経験もなしに、簿記や会社の会計について書かれた本を読んでもなかなか理解できないが、ソフトを使って日々入力を行っていくと、おぼろげながら経理にまつわるイメージがつかめてくる。その上で経理や簿記に関する本を読むと、そこに書かれている内容、意味がはるかに理解しやすくなる。帳簿付けの経験がなく、困っている人には専用ソフトの利用をお勧めしたい。

 ただし、青色申告を行うためには、事前の届け出が必要だ。新たに青色申告を申請する場合には、その年の3月15日までに納税地の所轄税務署長あてに、「青色申告承認申請書」を提出しなければならない。開業した人は、業務開始2カ月以内に青色申告承認申請書を提出する。

 つまり、現時点で届け出を出していない場合、2015年(2014年分)に青色申告はできない。一番早くても2016年の申告からとなる。青色申告を行いたいと考えるのであれば、2015年3月15日までに届け出を出すことをお勧めしたい。届け出は決して難しいものではなく、税務署に出向いて相談すれば方法を教えてくれる。

 青色申告を行うための届け出、そしてソフト/サービスを使った申告に実際に取り組んでみると、経理や簿記の知識がない人でもなんとか対応できる。帳簿付けに必要な仕訳といった作業についても、ソフト/サービスを活用していくと、事前に勉強して学習するよりも理解しやすくなる。

 また、ソフト/サービスを利用することで、紙の帳面に記帳を行うよりも、自分の事業がどういう状態にあるのか分析しやすいこともメリットとなる。分析のための機能を持っている製品もある。

 「事業の分析なんて、売り上げが大きな会社がやることなんじゃないのか?」と思うかもしれない。しかし、数年事業を続けていくと、毎月の売り上げをグラフ化して数年分を比較するといった作業をするだけでも、意外な発見があるものだ。毎年、売り上げが少ない月があるというのであれば、その原因を改善することはできないのか。改善できない要因があるのであれば、その月には支出を抑えるなど対策を考えることができるようになる。

 税理士/会計士に経理処理を頼んでいる場合でも、日常の取引は自身でソフトを利用して入力作業を行い、申告作業や業務へのアドバイスを税理士/会計士に頼むというスタイルをとることも可能だ。かつては、青色申告ソフトを利用する人を敬遠する税理士/会計士も少なくなかったが、「税理士/会計士の本来の業務は、顧客の業務が改善するためのアドバイス。そのためには、ソフトを使っている企業はアドバイスがしやすい」と、むしろソフトを使っている顧客を歓迎するケースもある。

 ソフト/サービス、青色申告の実施とともに、自社の事業を見直す機会としてとらえることもできそうだ。

パッケージ、オンラインなど多様なソフトやサービス

 では青色申告を行うためのソフト/サービスにはどんな製品があるのか、主要なものをご紹介しよう。さまざまなソフト/サービスがあるので、自分の利用する環境などから好みのものを選ぶことができる。ここでは、いくつかの製品に絞ってかんたんに紹介する。

 また業務ソフトの場合、無料で使い勝手を試すことができる試用版・試用サービスを提供しているものも多いので、これらを使って、使い勝手を確かめてから導入することも可能だ。特に、パッケージ製品とクラウドサービスの間では大きく異なることもあるので、まずは無料版を試してみて、自分にあったものを見つけることをお勧めしたい。

弥生株式会社

「やよいの青色申告15」
http://www.yayoi-kk.co.jp/products/aoiro/

価格:オープンプライス(弥生オンラインストアでは1万2960円・税込)
無料体験版:あり

 青色申告ソフトとして最もシェアが高い製品(BCN調べ、GfK調べ)で、画面の表示に沿って設定していくだけで必要な設定作業を簡単に行える「クイックナビゲータ」や、導入設定ウィザード、スタートアップガイドを用意。伝票入力に加えて、取引の種類を選んで日付と金額を入れるだけの初心者向け「簡単取引入力」も備えている。

 また、YAYOI SMART CONNECT技術を生かして、銀行明細、クレジットカード、電子マネー、POSデータなどの日々の取引データを、連携する外部アプリケーションから取り込み、会計仕訳データに自動変換する「スマート取引取込」機能も追加される予定だ。このほか、業種別にカスタマイズされた会計テンプレート、クラウドストレージ(弥生ドライブ)へのデータバックアップサービス、弥生ドライブを使ったデータ共有サービスといった機能を搭載した。

 機能が充実している分、価格は、ほかのパッケージ製品と比べると多少高めになるが、一点、注意したい点がある。それは、「“あんしん”キャンペーン」として、本来は有償のサポートを最大15カ月無償(または特別価格)で提供していることだ。このサポートの一環として、次期製品「やよいの青色申告16(仮称)」も無償提供されるため、1回の製品購入で、2回の確定申告に対応できることになり、長い目で見た場合に必要なトータルコストが変わってくる。

 実は、こうしたサポートの無償提供(と次期製品の無償提供)はいくつものベンダーが行っているため、弥生だけが突出しているわけではないが、すべてのベンダーが行っているわけではないので、購入時にはチェックしてみよう。

ソリマチ株式会社

「みんなの青色申告16」
http://www.sorimachi.co.jp/products_gyou/min/
無料体験版:あり
価格:1万800円(税込)

 複式簿記がわからなくても入力できる「らくらく仕訳入力」機能を搭載しており、必要なデータはすべて自動集計してくれる。青色申告書も簡単に作成可能だ。また導入後すぐに利用できるよう、自分にぴったりの業種がある場合は、あらかじめ業種別の勘定科目を設定してある「業種別テンプレート」、一問一答形式で設問に答えればデータを作成できる「らくらくエスコート」なども用意されている。

 クラウドへのデータバックアップ(安心データバンク)にも対応。1年間の無料お試し期間が設定されている。

 サポート面では、2015年9月30日まで「安心の個人事業者&法人全力応援!キャンペーン」を行っており、1000円のキャッシュバックや最大15カ月の無償電話サポート、次期製品の無償提供などが受けられる。

株式会社BSLシステム研究所

「青色申告らくだ2015」
http://www.bsl-jp.com/products/ark15/
無料体験版:あり
価格:9720円(税込)

 帳簿を記帳するだけで簡単に申告に必要な書類を作成可能。各社の提供するクラウドストレージにデータを置くクラウドストレージ連携機能を備えており、事務所・外出先・自宅など、どのPCからでも同じデータで作業を行える。

 サポート面では、「サポートサービスを受けても製品を使いこなせない場合は、ソフトの購入代金相当でソフトを買い取らせていただきます。」(同社サイト)という挫折買取サービスが特徴だろう。

freee株式会社

「クラウド会計ソフト freee」
http://www.freee.co.jp/?last_lp=features
価格:個人事業主向けは月額980円(税込)、年額9800円(税込)
無料体験プラン:あり(無料プラン)

 複式簿記などの専門知識は不要で、画面に従って操作するだけで、青色申告に必要な書類を作成できる。クラウドならではの対応環境の広さがあり、iPhone、Android、Mac OS X、Windowsなど、プラットフォームを選ばず、いつでもどこで帳簿がつけられるのが特徴。iPhoneやAndroid向けにはアプリが用意されている。

 また、1600以上の口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、記帳を自動化する機能も搭載。サービスリリース後1年8カ月で、15万を越える事業所での利用実績を持つ。サポートはメールとチャットで行う。

株式会社マネーフォワード

「MFクラウド確定申告」
https://biz.moneyforward.com/tax_return
価格:月額800円(税込)、年額8800円(税込)
無料体験プラン:あり(無料会員)

 1589の銀行を含め、1689社(2014年12月9日時点)の取引明細、明細データを自動取得できる。その中には、Amazonや楽天、電子マネー、iPadレジ、クラウドソーシングサービスなども含まれており、データを自動取得できるため、手入力の手間を削減可能。自動取得した取引明細の内容から、勘定科目を自動的に提案する機能を備えるほか、一度登録した内容を自動学習し、次回からは勘定科目を選択する必要がなくなる「仕訳自動学習機能」も搭載している。

 また、クラウドサービスならではのマルチプラットフォーム対応も行われており、Windows、Mac OS Xの両環境で利用できる。なおモバイルについては、領収書・レシートを撮影することで、入出金を登録できるスマートフォン向けアプリも提供されているが、通常の仕訳・帳票機能は今後の対応になる。サポートはメールが基本で、導入時には電話サポートも受けられる。

弥生株式会社

「やよいの青色申告 オンライン」
http://www.yayoi-kk.co.jp/products/aoiro_ol/

価格:年額8640円(税込)から 初年度無料キャンペーンも実施中※
無料体験プラン:あり(無料体験プラン)

 パッケージの「やよいの青色申告15」で培ったノウハウを生かしたクラウドサービス。まだ始まったばかりのサービスだが、パッケージで知見をためてきた弥生らしく、使い勝手には気を配った印象。確定申告に必要な手順が一目でわかり、画面の案内に沿って入力していくだけで、書類を作成し、所得控除や社会保険料も自動計算してくれる。

 外部のサービスから銀行明細、クレジットカードなど、日常の取引データを取り込み、会計仕訳データに自動変換するスマート取引取込機能も搭載した。現在は、MoneyLook、misoca、Zaim、Airレジといったサービスに対応する。

 なお、クラウドサービスとなったことでMac OS X(10.6/10.7/10.8/10.9)に対応しているのは、パッケージ版との大きな違いといえる。今後はスマートフォンからの取引入力などにも対応していく予定だ。

 セルフプランベーシックプラン
年間価格(税込)8640円※1万2960円※
サポート電話/メールなど
その他業務相談サービス(仕訳相談/確定申告相談/消費税改正業務相談/経理業務相談)
  • ※2015年3月16日申し込み分までは、セルフプランが初年度無料、ベーシックプランが初年度6480円(税込)になるキャンペーンを実施中

三浦 優子