ネットセキュリティ今どきのキホン
第11回
ネットトラブルからお子さんを守るために知っておきたいこと
2016年7月26日 06:00
今やタブレット端末/スマホはもちろんのこと、自動車や洗濯機、メガネに時計と身の回りのあらゆるモノがネットに繋がるIoT(Internet of Things)時代となりました。こうした環境の変化を感じながらも、ネットを利用する際のセキュリティ意識は特に変わらないという方は多いのではないでしょうか? 便利で楽しい仕組みが開発されると、新たな仕組みを悪用するサイバー攻撃が出てくるのは、残念ながらネットの歴史における事実です。とはいえ、必要以上に心配する必要はありません。この連載では、皆さんがネットを使う上で知っておきたい今どきのネットの危険と、それらを避けるためのキホンを紹介します。
自由な時間の増える夏休み。お子さんがスマホやタブレット、パソコン、ゲーム機などを使ってネットにつながる機会もいつもより増えるのではないでしょうか。便利で有意義なネットですが、使い方を間違えると犯罪やトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあります。今回はお子さんが安全にネットを利用するために、保護者が最低限知っておくべきポイントを確認しましょう。
保護者が知っておくべき今どきのネット脅威とは
SNSやブログなど、個人の情報発信が活発になっている現在、ネットを参照すれば、さまざまな知り合いや友人の情報を確認することができます。悪意ある犯罪者にとっても、個人情報の宝庫である各種ウェブサイトやSNS、さらにネットとつながり個人情報が格納されたスマホなどは格好の標的です。
ウェブサイトを攻撃して、ネット上に保管された情報を不正に収集するのはもちろんのこと、SNSのアカウントを乗っ取って、そこに登録されている知人・友人に詐欺をはたらいたり、スマホに不正アプリを感染させ、端末に登録された連絡帳を盗み出したりする攻撃はすでに定番の手口となっています。より深刻なことにお子さんを狙う犯罪においても、犯罪者がネットの交流サイトやSNSを介して自らを被害者の同世代と偽って繋がり、仲良くなったふりをして誘い出す手口が確認されています。また、こうした出会い系サイトやコミュニティサイトに起因する犯罪被害にあった児童がサイトにアクセスした際の手段の8割以上はスマホによるものでした[*1]。
「セクストーション」と呼ばれるサイバー犯罪にも注意が必要です。これは性的行為という意味の「SEX」と、恐喝という意味の「EXTORTION」を合わせた造語で、ネット上で「出会った」異性に性的な写真や動画を撮らせ、その公開を材料に脅迫を行う手口です。やり取りの途中で不正なアプリをスマホにインストールさせ、連絡先の情報を盗み取ってから、写真や動画を連絡先にある「知人に」公開すると脅迫するような悪質な手口も確認されています。
好奇心旺盛でデジタルの世界に小さなころから親しんでいるお子さんたちは、我々大人が想像する以上にあっという間にネットの世界にのめりこんでしまいます。ネット上での情報のやり取りがきっかけで犯罪に巻き込まれる可能性があることを伝え、お子さんが不用意にネット上で自身の個人情報を開示し、知らない人と接触することの無いよう気を付けてください。
お子さんのスマホ利用時に配慮したいセキュリティ対策
お子さんがネットの危険や利用時のマナーをまだ十分に理解できていない間は、保護者がその利用状況を把握し、ある程度管理をしてあげる必要があるでしょう。家族で共有しているパソコンであれば、利用時間や利用ウェブサイト、アプリの状況などを把握しやすいですが、携帯性が高いスマホなどはお子さんの利用状況が見えなくなりがちです。携帯ゲーム機やミュージックプレーヤーにもネット接続機能を持ったものがある点も理解しておきましょう。
スマホをはじめとした携帯性が高く利用状況が見えにくい機器をお子さんに使わせる際は、保護者の方が最初にきちんと対策を施すことが重要です。特に次の点について、お子さんの年齢や理解度を踏まえ、あらかじめどの程度の自由度を提供するかを定めましょう。
ネットのフィルタリング設定
アダルトサイトや出会い系サイトといった不適切なサイトにアクセスしてしまわないようあらかじめフィルタリングを有効にしておきましょう。これらのサイトは閲覧に適さないというだけでなく、不正請求や現実の犯罪被害に巻き込まれるきっかけとなる可能性もあります。
アプリのダウンロード制限
アプリの中にも不適切なものや不正なものが存在します。お子さんだけの判断でアプリを利用できないよう、管理者によるダウンロードの制限をおこないましょう。
アプリの使用制限
ゲームアプリなどのアイテムが課金制であることをきちんと理解せず、お子さんが保護者のクレジットカード情報を使って無断で有料サービスを使ってしまうトラブルも後を絶ちません。アプリの利用開始時に気軽にクレジットカード情報の設定をして、そのまま放置することなどが無いよう気を付けましょう。
管理機能の利用制限
上述のアプリの課金設定もそうですが、契約サービスの変更設定や端末の各種セキュリティ機能制限が行えるアカウント情報は保護者が管理し、不用意にパスワードをお子さんに開示しないようにしましょう。
また、これらの制限やルール決めを行っていてもお子さんが気付かぬ間に不正アプリや不正なウェブサイトにアクセスしてしまう可能性もあります。スマホにもパソコン同様にセキュリティ対策アプリをインストールし、最新の状態で利用しましょう。
実社会のルールを学んでいく過程と同じように、お子さんがネットを安全に楽しみ、ネット上でさまざまな経験を積めるよう、一方的な利用の制限ではなく、なぜ危険なのか、どうしていけないのかを保護者が正しく理解し説明できることが何よりも大切です。
[*1]……平成27年における出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について(警察庁発表)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h27/h27_community.pdf(PDF)