清水理史の「イニシャルB」

QNAPのNASをLINE、Instagram、Amazon Alexaと連携! 「IFTTT Agent」で通知やバックアップ、音楽再生を自動化.

 QNAPのNAS向けに「IFTTT Agent」という新しいアプリの提供が開始された。QNAPのNASを「IF This」のトリガー、もしくは「Then That」のアクションとして利用可能になるエージェントだ。同様にIFTTTに対応するFacebookやInstagram、Twitter、Android端末などなど、多彩なサービスと連携し、処理の自動化が可能になる。具体的に何ができるのか、実際に試してみた。

ストレージとしての用途拡大やデータソースとしての活用も

 NASというと、まだまだローカルのストレージというイメージが強いかもしれないが、今後はクラウドサービスやスマート家電のストレージとして用途を拡大したり、音声アシスタントのデータソースとしても活用が進むかもしれない――。

 そんな将来を感じさせるのが、QNAPのNAS向けに提供されている「IFTTT Agent」だ。

「IFTTT Agent」を利用することで、QNAPのNASを外部ウェブサービスと連携させることが可能。さまざまな可能性が広がる
「IFTTT Agent」は既存のQNAPのNASであれば、ほとんどの機種で利用できるアプリ。写真は筆者宅で利用しているTS-453A

 「IFTTT」は、さまざまなサービスを連携させることで「IF This, Then That」という特定の処理を自動的に実行できるようにするサービスだ。通常は、ウェブサービス間の連携に使われ、例えばFacebookでタグ付けした写真を別のサービスで活用するといったように、何かの行動をきっかけとして、別の処理を自動的に実行することができる。

 筆者の周りではサーバーのアラートをSlackに転送するなどの活用例が多いが、SNSやチャット、クラウドストレージ、スマートフォンなど、さまざまなサービスや機器を互いに連携させることで、実際の業務などに活用している人も少なくない。

 「IFTTT Agent」は、このようなIFTTTのきっかけ(トリガー)や処理(アクション)に、QNAPのNASを利用可能にするエージェントだ。

 これにより、NASをさまざまなウェブサービスやスマートフォン、話題の音声アシスタント搭載スピーカーなどと連携させることが可能となる。単純にNASのアラートをチャットサービスなどで管理するといった用途だけでなく、ウェブサービスのデータ保存先としてNASを活用したり、現在ローカルで保存している音楽や動画などのメディアをデータソースとして活用することなどが可能になる。

 要するに、従来のローカルに特化したNASの用途をより広い範囲へと広げることができるアプリということになる。

QNAP Channelを提供

 それでは、実際の使い方を見ていこう。大まかな流れは以下のようになる。

  1. CloudLinkの設定
  2. IFTTTアプリの追加
  3. IFTTTアカウントとの連携
  4. IFTTTアプレットの登録
  5. 実際の動作の確認

 まずは、CloudLinkの設定だ。CloudLinkは、QNAPが提供するクラウドサービスで、ローカルに設置したNASを同社のウェブサイトと接続することで、NASのリモート管理などを可能にする。IFTTTとの連携には、外部からNASにアクセスできるようにする必要があるが、その中継役としてCloudLinkを利用する。

 QNAPのNASをインターネットに接続できる環境に設置し、CloudLinkアプリからアカウントを登録して、機能を有効化しておけばいい。

 続いて、IFTTTアプリをインストールする。「AppCenter」を利用して「IFTTT」で検索したり、「推奨」の一覧などからアプリをインストールしておこう。

 ここまで準備ができたら、IFTTT Agentを使って設定を行っていく。アプリを起動するとウィザードが実行されるので、基本的にはこれに従って、IFTTTサービスのアカウントを作成してからQNAPサービスにアクセスし、「Connect」からQNAPのアカウントを指定してサービスを接続しておく。

 IFTTTのサイトは英語のみとなるが、同サービス自体、非常にシンプルなものとなっている上、やるべきことはサービスの接続とアプレットの選択くらいなので、特に迷うことなく設定できるだろう。

 サービスを接続できたら、いよいよQNAP向けに提供されているアプレットが利用可能になる。6月27日現在利用可能なアプレットは以下の表の通りだ。一部、重複するアプレットがあったため整理したところ全部で32のアプレットが提供されていた。

 日本ではまだ提供が開始されていないが、AmazonのAI音声アシスタント「Alexa」との連携なども可能となっており、音声による命令でQNAP NASのMusic Stationアプリを利用して音楽を再生したり、NASを音声でシャットダウンすることなどが可能になっている。

アプレット連携先
家に着いたら、Music Stationで音楽を鳴らす位置情報
家を出たら、Music Stationの音楽を停止する位置情報
Alexaに話しかけて、プレイリストの前の曲を再生するAlexa
Alexaに話しかけて、プレイリストの次の曲を再生するAlexa
Alexaに話しかけて、再生を停止するAlexa
Alexaに話しかけて、プレイリストの曲を再生するAlexa
Alexaに話しかけて、NASを再起動するAlexa
Alexaに話しかけて、NASをシャットダウンするAlexa
家やオフィスに着いたら、監視カメラの映像録画を停止する位置情報
家やオフィスから出たら、監視カメラの映像録画を開始する位置情報
家のWi-Fiにスマートフォンがつながったら、音楽を再生するスマートフォン
Facebookに新しい写真を投稿したら、QNAPにバックアップするFacebook
Facebookの情報を更新したら、テキストファイルとしてQNAPに保存するFacebook
QNAPのファイルをDropbox、Google Drive、OneDriveにバックアップするDropbox/Google Drive/OneDrive
QNAPのファイルを自動的にGoogle Driveに保存するGoogle Drive
Flickrのフォトストリームの写真を自動的にQNAPに保存するFlickr
Instagramに投稿済みの写真をQNAPのフォルダーにバックアップするInstagram
QNAPの特定のフォルダーにファイルが追加されたら、LINE/Skype/Gmailで通知するLINE/Skype/Gmail
システムエラーが発生したら、LINE/Gmailで通知するLINE/Gmail
新しいシステム警告が発生したら、LINEで通知するLINE
特定のフォルダーに新しいファイルが追加されたら、Skypeで通知するSkype
システムエラーが発生したら、LINEで通知するLINE
Flickrの公開写真のうち、好みのものをQNAPに保存するFlickr
Instagramに投稿済みの動画をQNAPのフォルダーにバックアップするInstagram
自分のすべてのツイートをテキストファイルとしてQNAPに保存するTwitter
DropboxのファイルをQNAPにバックアップするDropbox
Android端末に届いた新しいSMSをテキストファイルとしてQNAPに保存するAndroid
フォルダーにファイルが追加されたり、変更されたりしたら、メールで通知するMail
システムエラーが発生したら、Google Driveのspreadsheetに新しい行として追加するGoogle Drive
Instagramの写真をFacebookで共有したら、QNAPに保存するInstagram/Facebook
Facebookで写真にタグ付けしたら、QNAPに保存するFacebook
Facebookのプロファイル写真をQNAPと同期するFacebook

 試しに、基本中の基本となるアラートの通知を利用してみた。「Get notified on Line if a new system event occurs on your QNAP device」を選択し、機能を有効にすると、LINEとの接続画面が表示されるので、アカウントを入力して連携を許可する。次にアラートの通知先となるデバイスやアカウント(もしくはグループ)を選択すれば、設定は完了だ。

 この状態で、例えばQNAPのNASにアプリをインストールするなど、設定変更やエラーなどのイベントが発生すれば、LINEへメッセージが投稿されるようになる。

 同様に、NAS側のイベントをほかのサービスと連携させることも可能だ。例えば、「New files added to your specified QNAP device folder, get notified on Line」を選択し、監視するフォルダーや通知先のLINEアカウントを設定すれば、特定のフォルダーに新しいデータが保存されたタイミングでLINEの通知を受け取ることが可能になる。

 特定のプロジェクト用のフォルダーなどに設定しておけば、最新情報を常に取得したり、メンバーの進捗を管理したい場合などに重宝するだろう。

カスタムも可能だがトリガーもアクションもまだ少ない

 もちろん、アプレットを自分で作成することも可能だ。ほかのウェブサービスと組み合わせて、「if [this] then [that]」の形式で動作を指定すれば、さまざまな処理を自動化することができる。

 IFTTTでは、Twitterやメール、YouTubeなど、さまざまなサービスが利用できるため、組み合わせ次第でいろいろなことができるだろう。

 ただし、QNAPのサービスとして提供される機能は、現状、2つのトリガーと6つのアクションのみと、さほど多くない。基本的には、アラート、ファイルアクセス、音楽、電源など基本機能の中のごく一部のみとなっており、あまり高度な処理には利用できない。

 欲を言えば、特定のキーワードが含まれるファイルを検出してSlackに投稿したり、クラウドストレージにアーカイブするなど、ファイルの中身をベースにした処理ができるようになると面白いのではないだろうか。QsearchやQfilingなどの機能も含めたIFTTT連携ができると、かなり面白そうだ。ぜひ今後の発展を期待したいところだ。

イベントカスタム時の動作
新しいファイルがフォルダーに追加されたらトリガー
新しいシステムイベントが発生したらトリガー
指定されたURLからファイルをダウンロードするアクション
ファイルにテキストを追加するアクション
QNAPのNASのプロファイル写真を設定するアクション
Music Station経由で音楽再生をコントロールするアクション
QNAで音楽を再生するアクション
Surveillance Station経由で監視カメラをコントロールするアクション
NASの電源をコントロールするアクション

IoTやAIを競争力に

 以上、QNAPのNAS向けに提供された「IFTTT Agent」を試してみたが、今後のNASの進化の方向性が伺える非常に面白いアプローチだ。同社は、NASとIoTとの連携にも取り組んでおり、NASの新たな用途を開拓しようとする意欲が非常に高い。

 他社製のNASは、従来のPCサーバーやクラウドサービスの置き換えを念頭に置いているが、もっと広い領域との連携の中に活路を見出している印象だ。

 もちろん、そのためには今回のIFTTT Agentアプリの充実などがカギで、できることがもっと多くなり、さまざまなサービスとの連携の幅が広がることが大切と言える。これが順調に進めば、次世代のNASとして、確固たる地位を確立することにもなり得るだろう。

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清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。