第326回:大幅な高速化を実現したバッファローのNAS「LS-XH1.0TL」
従来の3倍速、「USB接続を凌ぐ」速度66MB/秒を謳う高速NAS
バッファローから、従来製品比3倍となる66MB/秒という高い通信速度を持つNAS「LinkStation LS-XHLシリーズ」が発売された。機能的にも充実した製品だが、今回は最大の注目となるパフォーマンスを検証した。
●コンパクト、静音、その次は「速度」
LS-XHLシリーズ |
2.5インチHDDを採用し小型化にこだわった「LS-WSシリーズ」、SSDを採用し静音にこだわった「LS-WSSシリーズ」と、最近のバッファローのLAN接続型HDDは、なかなか“尖った”製品が多い。
とは言え、この「こだわり」は、よく考えてみるとNASに対してユーザーが求めるニーズがきちんと反映された結果とも言える。家庭で使うなら、使いやすくて多機能なだけでなく、小さくて静かな方が断然良いのは当然だ。
しかし、その一方で、あまりサイズや静音性、低消費電力にこだわると、パフォーマンスが犠牲になってしまうことが多かった。家庭での利用を考慮するとNASのライバルはUSB HDDとなるわけだが、これまでの製品は、速度の面でUSBに太刀打ちできなかったのも事実。ビジネスシーンでの利用を考えても、Windows ServerなどのサーバーOSによるファイル共有にパフォーマンスで劣っていた。
そこで登場したのが今回の「LS-XHLシリーズ」だ(発売は2008年12月)。「速度」にこだわった製品となっており、「USBハードディスクよりも速い」と謳う衝撃的な製品だ。
バッファローのLAN接続型HDD LS-XH1.0TL。高いパフォーマンスが特徴の製品だ | 正面 |
側面 | 背面 |
●DTCP-IPサポート予定
今回試用したのは1TBのHDDを搭載した「LS-XH1.0TL」。実売価格は29,800円前後と、1TBのNASとしては標準的な価格と言えるが、USB接続のHDDと比べるとプラス1万円といった価格の製品だ。
搭載するHDDが1台のみであり、RAIDには対応していないものの、DLNAサーバー(DLNA1.5予定)、iTunesサーバーのメディアサーバー機能を搭載し、インターネット経由で外出先などから自宅のLinkStaionにアクセス可能なWebアクセスへの対応、FTP、BitTorrentなどの各種機能に加えて、Mac OS Xの「Time Machine」にも対応する。
また、今後、公開予定のファームウェアによって「DTCP-IP」のサポートが予定されている。これにより、東芝製液晶テレビ「REGZA」の内蔵HDDやUSB HDDに録画した番組のムーブ、さらにLS-XHLに録画した番組のDTCP-IP対応DLNAクライアントでの再生(他のレグザやLinkTheater)に対応。さらに、スカパー!HDのハイビジョン録画にも対応可能となっている。
筆者宅にて試してみたところ、現状のファームウェア1.2では、REGZAからの通常の録画は可能であったものの(録画のみならDTCP-IPは無関係)、録画した映像をDTCP-IP対応のLinkTheater(LT-H90LAN)からは認識できなかった。ただし、REGZAのUSB HDDに録画した映像のムーブは可能と、まだ対応状況がよくわからない状況だ。DTCP-IPでの利用が目的の場合は、正式対応が発表されるまでしばらく待った方が良さそうだ。
LS-XHLシリーズに付属のユーティリティ。機器の検索や共有フォルダの表示、設定画面へのアクセスなどが可能 | 設定画面は最近のバッファロー製品とほぼ同じ。メディア共有機能など多彩な機能を備える |
●74MB/秒をマーク
さて、肝心の速度について検証していこう。まずは製品の仕様上の速度だが、従来製品比3倍と謳われており、その転送速度は66MB/秒となっている。USB2.0の規格上の転送速度が480Mbps(60MB/秒)なので、これを上回っていることになるわけだ。
ここまで速ければ、「手軽だが遅い」という、これまでのLAN接続HDDのネガティブなイメージも払拭できる。
そこで、まずはCrystarl Diskmark 2.2を利用して、その転送速度を計測してみた。利用したのはAMD Athlon X2 4400+、RAM 4GBのWindows XP SP3搭載機で、LS-XHL、USB接続HDD(SAMSUN HD501LJ利用)、Windows Home Server(Atom230/RAM2GB/GigabitNIC)、ソニーのVGG-HS1(1TB NAS)の4製品だ。
LS-XHLの測定結果 | USB接続HDD(SAMSUN HD501LJ)の測定結果 |
Windows Home Serverの測定結果(CPUはAtom、メモリは2GB) | VGG-HS1の測定結果 |
結果を見ると、なかなか衝撃的だ。LS-XHLの結果はシーケンシャルのリードで74MB/秒と他を圧倒する速度を実現している。一般的なNASのVGF-H1は言うに及ばず、USB、WHSとどれよりも速い。唯一、WHSがシーケンシャルライトで値を上回った程度で、確かに「USBより速い」というコピーも伊達ではない。
製品自体は、3.5インチの1TB HDDを1台、ギガビットイーサネット対応と、他のLAN接続HDDとさほど変わらないのだが、内部CPUが1.2GHzと高速化されており、この恩恵が大きく現れていると考えられる。
CPUの強化は、前述したDTCP-IPの暗号化、各種サーバー機能の処理などにも大きく貢献するはずなので、単なるファイル共有だけでなく、DLNA、外部からのアクセスと、さまざまな機能を併用するヘビーユーザーには大きな魅力と言えるだろう。
ただし、確かにCrystal Diskmarkの値は高いのだが、実際に使ってみると、「圧倒的」とまでの速度は体感できない。もちろん、一般的なNASに比べればファイルの読み込みや書き込みが目に見えて速いのだが、USBほどとは感じられない。
そこで、Windowsからのドラッグアンドドロップ操作によって、ファイルの読み込み(LS-XHL→PC)と書き込み(PC→LS-XHL)にかかる時間を、先ほどと同じ環境でテストしてみた。テストしたのは、2.1GBのWMVファイル1つの場合と、約500枚で約500MBのJPEGファイルの2つのケースだ。
ファイル | 製品 | 書き込み(秒) | 読み込み(秒) |
WMV 2.1GB 1file | LS-XHL | 89.55 | 60.71 |
USB | 80.44 | 30.16 | |
WHS(Atom230) | 45.64 | 49.67 | |
SONY VGF-HS1 | 159.43 | 130.31 | |
JPEG 496MB 489file | LS-XHL | 34.7 | 16.95 |
USB | 17.73 | 11.96 | |
WHS(Atom230) | 30.58 | 17.11 | |
SONY VGF-HS1 | 113.37 | 75.11 |
こちらの結果を見ると、やはりUSBのパフォーマンスの良さが光る。特に読み込み性能に関してはUSBが圧倒的に速く、2.1GBのWMVをわずか30秒、500枚のJPEGも約12秒でPCへとコピーすることができた。
よって、実際の利用シーンで、という話になるとUSBほどは速くないことになる。しかしながら、VGG-HS1との比較では、WMVで半分以下、JPEGでは約1/4の時間しかかからず、使っていてもまったくストレスを感じない。
イメージとしてはAtomベースのWindows Home Serverと互角という印象で、コンシューマー向けのLAN接続HDDとしては、抜群に高いパフォーマンスで、間違いなく最速レベルの製品だ。
●機能、性能を考えるとお買い得
これで価格は一般的なLAN接続HDDと同レベルであり、機能的にもDLNA、Webアクセス対応と非常に多機能。それでいて、サイズもさほど大きくなく、動作音もほとんど気にならない。正直、欠点らしい欠点が見あたらない印象だ。
個人的には、DTCP-IP対応ファームが登場してから、実際に購入するかどうかを判断すべきだと考えるが、性能だけを見てもかなりお買い得なので、純粋に速いNASが欲しい、と考えているユーザーには、間違いなくおすすめできる製品だ。
関連情報
2009/1/20 10:59
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