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第378回:360度パノラマ動画を気軽に撮って気軽にアップ
ソニー「bloggie(MHS-PM5K)」


 ソニーから小型でフルHD対応のデジタルビデオカメラ「bloggie(ブロギー)」が登場した。今回試用した「MHS-PM5K」は、実売2万7000円前後と手頃な価格の製品だが、360度パノラマの動画撮影に対応。付属ソフトウェアを使ってオンラインサービスへのアップロードも手軽にできる特徴を持っている。本製品を通じて、動画の楽しみ方がどのように広がるのかをチェックしてみた。

カジュアルなカメラだけではない


ソニー「bloggie(MHS-PM5K)」。HD対応のMP4カメラ。付属のレンズで360度撮影ができる

 ポケットに入れて持ち歩いて、気になる場所でサッと撮影。それでいて、普段とはちょっと違う面白い映像を撮影できる。そんな使い方を楽しめるのが、ソニーから新たに登場した「bloggie」だ。

 ソニーいわく、「モバイルHDスナップカメラ」と呼ぶそうだが、今回試用した「MHS-PM5K」は回転式レンズを採用したスティックタイプとなっており、デジタルカメラとも、デジタルビデオカメラとも少し異なる雰囲気を持った製品だ。質感が高いので“トイ”と呼ぶことに少々抵抗はあるのだが、デザインやサイズ、価格、使い勝手などを考えると、最近多く見られるようになってきたトイカメラのようなカジュアルさを持った製品と言えそうだ。

 最大の特徴は、今までにない面白い映像を撮影できる点だ。製品には「360ビデオレンズ」という専用パーツが同梱されている。これを本体レンズにカチッとはめ込むと、ドーム型レンズを使ってカメラの周囲360度を一気に撮るパノラマ撮影が可能となっている。

 正直、価格の安さを求めるのであれば、トイカメラを買えばいいし、手軽さを求めるなら携帯電話で撮影するのがはるかに効率的だ。また、オンラインサービスとの連携も最近の製品でも対応が進んでいるし、場合によっては無線LANに対応した製品を選ぶこともできる。

 つまり、もはや機能面で他製品と差異化することが難しくなってきているデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ製品の中で、“これでしかできない”機能を搭載した数少ない製品となっているわけだ。

 単にカジュアルであるだけであれば珍しくはないが、「bloggie」の場合、これまでに見たこともない映像を、簡単な操作で、しかも手軽な価格で楽しめるのが最大の特徴だ。

レンズの回転で自動的に電源オン。使い方は簡単


本体正面

 それでは実際に製品を見ていこう。MHS-PM5Kの本体は270度回転するレンズを搭載した縦型となっており、サイズは約19×108×54mm(幅×高×奥行)、重量は約130gと、一般的なコンパクトデジタルカメラと比べて、ひと回り小さい感じだ。

 操作系は、本体側面に電源ボタンとズーム用のスライドスイッチ、静止画/映像の撮影ボタン。背面には、2.4インチの液晶ディスプレイや十字キー、再生、MENUボタンが搭載されており、構成としてはシンプルな印象だ。

 底面にあるスイッチをスライドさせると、側面カバーの部分からUSB端子が飛び出す仕組みとなっている。このUSB端子を使ってPCと接続し、データを転送したり、本体を充電させることができる。

 記録メディアはメモリースティックDuoとSD/SDHCカードの両対応で、本体には4GBのメモリースティックDuoが同梱。また、本体自体にも約26MBの内蔵メモリーを搭載している。


側面 背面

電源、ズーム、撮影ボタンが配置されている 底面のスイッチをスライドさせるとUSB端子があらわれる

 早基本的な使い方はとても簡単だ。レンズを回転させると自動的に電源がオンになるので、液晶で撮影対象を確認しながら静止画または映像の撮影ボタンを押すだけで良い。

 側面のズームボタンを使えば、4倍のデジタルズームも利用できる。ただし、映像撮影モードが1080/30pに設定されている場合、デジタルズーム機能は利用できない。

 基本的には機能よりも手軽さが重視されている製品で、レンズを回転させてから4〜5秒もあれば撮影を開始できるようになっている。「ここぞ」というチャンスですぐに撮影を開始できるのは、常に持ち歩く記録用カメラとして非常に重宝する部分だ。


反対側の側面を開けるとバッテリーとメモリーカードスロット(SD/SDHC/メモリースティックDuo)が見える レンズを回転させるとサッと起動してすぐに撮影を開始できる

360ビデオレンズで撮影する


付属の「360ビデオレンズ」

 続いて、最大の特徴とも言える「360ビデオレンズ」での撮影だが、こちらもとても手軽だ。付属の「360ビデオレンズ」の底面レンズカバーを取り外し、本体のレンズを真上に向けた状態で上からかぶせるようにしてカチッと固定する。

 すると自動的に「360ビデオ撮影モード」へ撮影モードが切り替わり、液晶ディスプレイにドーナツ状のプレビュー映像が表示される。この状態で、通常と同様に静止画や動画を撮影すれば360度のパノラマ撮影ができるわけだ。


このようにレンズにかぶせるようにして装着する レンズを装着すると自動的に「360ビデオ撮影モード」になる。プレビューがドーナツ型になる

 プレビューを見ても、何が撮影できているのか、どこまでとれているかがさっぱりわからないので、撮影時にコレを撮ろうと思っても、どこにレンズを向けて良いのか迷うかもしれない。しかし、実際は周辺360度がすべて撮影できているので、高さにさえ注意すれば、あとは適当に持っているだけで撮影できている。

 印象としては、カメラというより、ボイスレコーダーに近い印象で、本製品を握った手を撮りたいものの方向に“なんとなく”向けていれば撮れている感じだ。このあたりは、小さなファインダーから被写体をピンポイントでとらえる一眼タイプのカメラと対極にあるような感じだ。

PMBで視聴・変換

 撮影した動画は、PCにインストールした「PMB」というソフトウェアで管理できる。ソフトウェアをインストール後、本製品をPCに接続。そして、電源を入れると撮影したデータが自動的に取り込まれる仕組みだ。

 なお、電源オフの状態でPCに接続すると内蔵メモリーのみがPCのドライブとして認識される。SDカードやメモリースティックDuoをドライブとして認識させるには、本体の電源を入れる必要があるので注意が必要だ。

 早速、360ビデオレンズで撮影した動画を見てみたが、そのままではドーナツ状の動画のままなので、よくわからない。そこで、PMBを使って動画を変換する。「360ビデオコンバートツール」を起動して変換を実行すると、複数の写真をつなぎ合わせて作成するパノラマ写真のように、ドーナツ状の動画をまっすぐに伸ばして、横長の映像に変換することができる。


撮影した写真、動画の取り込みや管理には「PMB」を利用する 360ビデオレンズで撮影した動画。そのままではドーナツ状でよくわからない

 この際、映像形式がMP4からWMV(高画質の場合1280×720/5Mbps)に変更される。レンズの関係で映像の中心に向かってゆがんだ印象の映像になるが、これでようやく何がうつっているのかがはっきりと認識できるようになる。


360ビデオレンズで撮影した元動画
360ビデオコンバートツールで変換した動画

時間を超えて周囲を見回す面白さ

 これだけでも、とてつもなく広い範囲が撮影できているので、なかなか面白い映像となるのだが、変換した映像を「360ビデオプレーヤー」で再生するとさらに面白い。

 「360ビデオプレーヤー」は、変換した横長の映像の一部分を画面上に大きく表示し、下のアングル選択画面で見る方向を変更できるという機能だ。つまり、カメラを中心にして、どの方向の映像を見るのかを自由に選ぶことができるようになっている。

 今回、電車が通過する様子を撮影したが、遠くからやってくる電車が目の前を通過するという映像を撮影したい場合、通常は電車の動きに合わせてカメラを振り、電車をとらえ続けるという撮影をする。

 しかし、本製品であれば撮影するときは何も考えなくて良い。カメラを構えて撮影を続けておけば、やってきた電車が目の前を通過し、自分のうしろを通り過ぎる様子をすべて自動的にとらえることができる。

 そして、「360ビデオプレーヤー」を使って、カメラの視点を先から目の前、通り過ぎたうしろと変更すれば、同様に通り過ぎる電車の様子を撮影できることになる。つまり、撮影後にカメラのアングルを自由に変えられるというわけだ。


360ビデオプレーヤーでの再生の様子。カメラ位置を自由に変更できる

 また、実際に使って見るとわかるのだが、一種の“時間を超える”感覚も味わえる。例えば、筆者はとある発表会に本製品を持ち込んで、その様子を「360ビデオレンズ」で撮影してみたのだが、この映像をあとから変換して確認してみると、会場の様子がすべてとらえられていた。

 このため、質疑応答で自分よりも後方の人が発言しているとき、会場にいた自分は振り返ることはなかったのだが、「360ビデオプレーヤー」を使って後方を振り返って質問者を確認することができた。

 要するに、「360ビデオレンズ」を使って何気なく映像を撮っておけば、その当時、自分が意識していなかった場面も撮影できており、それを自由に後から確認できるというわけだ。これは静止画も同じで、意識せずに「360ビデオレンズ」でところかまわず撮影しておけば、あとから合成したときにこんなものも写っていたのかと感心することがある。

 意図的に別のところを撮影するのに使うという懸念もあるのだが、こういった意外性を楽しめるのも本製品の魅力だろう。


静止画もパノラマ撮影が手軽にできる
元のドーナツ状の写真。動画と同様に変換すると横長になる

課題は変換とプレーヤー


PMBからYoutubeなどに手軽にアップロードできる

 撮影した映像は、Youtubeなどに手軽にアップロードすることもできる。「bloggie」というブランド名のとおり、ブログに使ったり、Twitterなどに通知するようにしておけば活用の幅も広がるだろう。

 ただし、残念ながら前述した360ビデオプレーヤーはPC上でしか利用できないため、公開できる映像は、ドーナツ状の生の映像か、変換して横にのばした映像のみとなる。このため、前述したような、あとからアングルを変えるような楽しみ方は、誰にでも手軽にできるわけではない。

 このあたりは、メーカーになんらかの対応をぜひお願いしたいところだ。あまりにも広い範囲が撮られすぎているので、安易に映像を公開するのも難しい話ではあるのだが、GPSも使って連動させれば、動画版Googleマップのような展開もできそうだ。

 個人的には、会議やインタビューなどの記録に使うのがとても便利そうなので、ビジネスシーンでの実用性もかなり高いと考えているのだが、360度撮影時の画質が今ひとつという点と、いかんせん動画を変換しないことには、まともに見られないというのが残念だ。

 現状のままでも、かなり面白いので1台持っておいて損はないと言えるが、もう少しハイスペックな機種も追加して欲しいところだ。例えば、リアルタムで変換しながら記録できるようにするモデルや、それこそWeb上のサービスで自動的に変換してくれるモデルなど、もう1歩という欲が出てきてしまうのも事実だ。


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2010/2/9 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ